エンタープライズ環境でPostgreSQLはどれくらいのパフォーマンスを出せる? 来春発表される成果報告を前に、検証の中間報告をレポートする。
今月はPostgreSQL関連のイベントを中心に紹介します。
12月7日には、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムセミナーの活動成果中間発表会が開催されました。
今回は活動成果の中間発表会ですから、検証などの途中経過および事例が発表されました。性能ワーキンググループからは主査を務めるSRA OSS, Inc.日本支社の石井達夫氏から報告がありました。
検証したのは主にマルチコアでのスケールアップ、負荷分散クラスタでのスケールアウトです。検証はpgbenchで行っています。
スケールアップの性能検証では80コアまでのテストで、リニアな性能向上が認められます。スケールアウトの検証では更新系と参照系で結果が分かれています。
更新系は分散化によるオーバーヘッドが出てしまい、性能向上にはつながらなかったものの、参照系ではノード数に応じて性能向上が認められます。
その他、設計運用ワーキンググループではデータ・スキーマの連携や移行手順、SQLなどの互換性検証など、商用データベースからの移行を想定した実践的なノウハウをテーマとしており、最終的な検証の成果物は2013年4月ごろ公開予定とのことです。
その少し前、11月30日にはPgDay 2012 Japanが開催されました。毎年恒例のPostgreSQLイベントは春に開催しますが、これからは秋開催に移行するようです。基調講演のためにPostgreSQLのコアチームメンバーでもあるMagnus Hagander氏がスウェーデンから来日しました。
ご承知の通り、PostgreSQLはオープンソースのデータベースです。企業が所有しているわけではないので純粋にコミュニティで開発が進められています。基本的には個人単位で参加し、互いに協力することで運営されています。また企業としての関わりもあり、一種のエコシステムが形成されています。
Hagander氏はコミュニティがどう機能しているかを解説しました。
開発コミュニティの主要な役割としてコアチーム、コミッタ、デベロッパが挙げられます。コアチームは技術的な意思決定をするメンバーで、PostgreSQLの場合、全世界で6人のみが担っています。リリーススケジュールや開発ポリシーなどは彼らが最終決定します。コアチームは他のコミッタなどのチームの人選も行う権限があります。
コミッターは「コードの門番」。全てのコードはコミッタの承認を経る必要があります。そのためコミッターとはコードをPostgreSQLのソースコードに含めるための「git push」コマンドを実行する権限を持つ人物でもあります。およそ世界で15〜20人ほどで、Database Watch 2012年3月号で紹介したRobert Haas氏もその1人です。
それからデベロッパ。コードの提供者です。PostgreSQLを実際に「作っている」メンバーとも言えます。人数は把握されていませんが、少なくとも200人がアクティブだというお話です。実際にデベロッパはコードを書くだけではなく、文書作成、検証、ベンチマーク、新機能設計なども含まれます。オープンソースのプロジェクトはどこも、こうした役割の多くが参加者の自主性で成り立っています。
ほかにもコミュニティを支える人たちがいます。PostgreSQLのWebサイトの運営、支援、広報、イベント運営など。メーリングリストコミュニティ内に質問を投げかけて誰かが答えるなどの互助活動もコミュニティを支える重要な役割の1つです。
ほかにも貢献する方法はあります。日本であれば翻訳も大事です。現在PostgreSQLの文書は13言語に翻訳されていますが、フルに翻訳されているのは日本語とフランス語だけ。日本語版ドキュメントは本家リリースとほぼ同時に出ますから、日本の翻訳チームはパワフルだといえるでしょう。
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