マイクロソフトはクラウド時代に対応する管理ソリューション「Microsoft Operations Management Suite(OMS)」の提供を開始しました。Microsoft OMSは、ハイブリッドクラウド環境の管理に必要とされる新たな管理シナリオを提供します。
「Microsoft Operations Management Suite」(以下、Microsoft OMS)は、多様化、複雑化したITインフラをシンプルに管理するためのクラウドベースの新しいIT管理ソリューションです(画面1)。
Microsoft OMSの最大の特徴は、Windows、Hyper-V、Microsoft Azure、Linux、VMware、AWS、OpenStackなど、標準であらゆるITインフラを管理できることです。既存の多くの管理ツールは特定のITインフラにしか対応していないため、ITインフラごとに管理ツールを使用する必要がありました。Microsoft OMSでは、単一のコンソールであらゆるITインフラを管理できるようになります(画面2)。
Microsoft OMSの実態はMicrosoft Azureのクラウドサービスで、「Operational Insights」「Azure Automation」「Azure backup」「Azure Site Recovery」の4つのサービスで構成されています。そのため、専用サーバを用意する必要もなく、保守も不要です。また、数分で設定が完了するなど、素早くIT管理を開始できます。
マイクロソフトはIT管理ソリューションとして「System Center」を提供していますが、System CenterとMicrosoft OMSはお互いの機能を補完し合う関係になります。例えば、System Center Operations Managerで収集した監視データをMicrosoft OMSで分析したり、System Center Data Protection ManagerでバックアップしたデータをさらにMicrosoft OMSに2次バックアップしたりするなど、System Centerが導入済みであれば、Microsoft OMSを追加することで、ITインフラの管理環境を拡張することができます。
Microsoft OMSに含まれるMicrosoft Azureの各サービスはSystem Centerがなくても使用できますし、System CenterユーザーにはMicrosoft OMSを安価に利用できるライセンスも用意されています。
今回は、4つの管理シナリオを例にMicrosoft OMSの機能を紹介していきます。
ITインフラの管理で欠かすことができない作業の一つが、「ログ分析」です。ログ分析では、OSやワークロードのログを収集し、意味のあるデータとして分析して、問題点を見つけ出します。Microsoft OMSでは「Operational Insights」がログ分析を担当します。
PC/サーバのログを収集するためには、WindowsまたはLinux用のOperational Insightsエージェントをインストールする必要があります。ただし、System Center Operations Manager(SCOM)を導入済みであれば、SCOM経由でOperational Insightsへ情報を送信できるので、エージェントのインストールは必要ありません。
収集したログを分析して、意味のあるデータにするには「ソリューションパック」を使用します。ソリューションパックは、ログの収集ルールや分析、視覚化の方法などをパッケージ化したものです。
2016年1月時点で表1のソリューションパックが無償提供されており、Operational Insightsポータルのコンソールからワンクリックで追加できます(画面3)。
ソリューションパック | 内容 |
---|---|
Log Search | 監視対象からログとイベントを収集し、分析する |
Containers | Dockerコンテナのログとパフォーマンスを監視する(近日リリース) |
Azure Networking Analytics | Azureネットワークの問題を追跡する |
Alert Management | SCOMのアラートを監視する(要SCOM) |
Automation | Azure Automationを監視する |
Change Tracking | 監視対象の設定変更を追跡する |
Configuration Assessment | 監視対象の設定の問題を追跡する(要SCOM) |
Site Recovery | Azure Site Recoveryを監視する |
System Update Assessment | 不足している更新プログラムを追跡する |
AD Assessment | Active Directory環境のリスクとヘルスを評価する |
Malware Assessment | マルウェア対策の状態とスキャン結果を表示する |
Backup | Azure Backupを監視する |
Capacity Planning | 現在と将来のリソースの使用率を計算する(要SCOM) |
Security and Audit | セキュリティ関連のデータを追跡する |
SQL Assessment | SQL Server環境のリスクとヘルスを評価する |
Wire Data | ネットワークのデータを追跡する(近日リリース) |
AD Replication Status | Active Directoryの複製の問題を追跡する |
App Dependency Monitor | アプリケーションの依存関係を検出し、マップ化する(近日リリース) |
表1 マイクロソフトが無償で提供するソリューションパックの一覧(一部、予定も含む) |
ソリューションパックの一つ「Change Tracking」を追加すれば、PC/サーバの設定変更を追跡できるようになります(画面4)。また、「AD Assessment」や「SQL Assessment」などのアセスメント系ソリューションパックを追加すれば、Active DirectoryやSQL Serverの問題点を検出し、その解決方法が提示されるようになります(画面5)。
分析されたログには、SilverlightベースのWebコンソールやiOS/Android/Windows Phone用のモバイルアプリからアクセスできます(画面6)。また、コンソールには独自にクエリを作成して、ログを選択表示するフィルタリング機能や、ワークスペースに関心のあるデータだけを表示するカスタマイズ機能なども用意されています(画面7)。
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