NEC、NTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立製作所の5社は、広域ネットワーク上の資源を動的に確保するSDNの基盤技術を確立した。
NEC、NTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立製作所の5社は2016年3月10日、アプリケーションが必要とする品質や利用状況に応じて、広域ネットワーク上の資源を動的に確保するSDN(Software Defined Networking)の基盤技術を世界で初めて確立したと発表した。今回開発した基盤技術は、総務省の「ネットワーク仮想化技術の研究開発」の委託研究として2013年6月から5社が共同で推進してきた、広域ネットワークインフラの総合的なSDN化を目指す研究開発プロジェクト「Open Innovation over Network Platform」の成果。
この技術を応用すると、複数の通信事業者やサービスプラットフォーム事業者にまたがったり、異なるネットワーク階層(マルチレイヤー)や複数のドメイン(マルチドメイン)を組み合わせたりして構成した広域なネットワークでも、仮想ネットワークをオンデマンドで構築したり、ユーザーの利用状況の変化に対して動的にネットワーク資源を変更したりできる。
5社が開発した技術は、大きく分けて(1)共通制御フレームワーク技術、(2)マルチレイヤー・マルチドメイン統合制御技術、(3)仮想化対応SDNノード技術の3つ。
1つ目の「共通制御フレームワーク技術」は、マルチレイヤー、マルチドメインで構成された仮想ネットワークの制御構造をデータベース化。仮想ネットワークに対する処理内容を、物理ネットワーク機器の処理に自動変換して実行するというもの。
2つ目の「マルチレイヤー・マルチドメイン統合制御技術」では、共通制御フレームワーク技術で構築した制御構造データベースを用いて、レイヤーごとやドメインごとの対応関係の情報を格納するリソースプールを構築する。これにより、複数のレイヤーやドメインにまたがるネットワーク資源を動的に制御する。
具体的には、マルチレイヤーネットワークのリソース管理技術や、多重障害発生時の障害波及予測/復旧技術、SDNのOAM(Operations、Administration、Maintenance)機能といった、仮想ネットワーク全体の品質確認技術などで構成される。
従来はレイヤーやドメインごとに個別に制御する必要があったが、この技術により、広域ネットワーク全体を一元的に制御できるという。物理ネットワーク資源を持たないサービスプラットフォーム事業者でも、ソフトウェア制御によって、通信内容に応じたリアルタイム通信経路制御や、ネットワークの負荷分散、障害発生時の迂回に向けた回線冗長化といった付加価値の高い独自機能を提供できるようになるとしている。
3つ目の「仮想化対応SDNノード」は、「拠点内ネットワーク」と「拠点間ネットワーク」で構成される通信事業者ネットワークが対象で、「トンネル自動設定処理」と「パケットアウェア光パス処理」の2つの技術で構成される。
トンネル自動設定処理は、拠点間ネットワークと拠点内ネットワークの接続部分、あるいは拠点内ネットワークに向けて、トンネルプロトコルをSDNソフトウェアスイッチ上で自動設定する技術。オープンソースのSDNソフトウェアスイッチ「Lagopus」を拡張して実装している。
もう1つのパケットアウェア光パス処理は、拠点間ネットワークに向けた技術。パケットトランスポートのリソース状況に基づいて、下位レイヤーでさまざまな帯域を持つ光コアネットワークの光パスを複数提供する。
これらの技術を利用すると、従来はネットワークごとに必要だった制御ノードを、光コアネットワークとパケットトランスポート、IPネットワークとトンネルプロトコルの各1台で実現できる。トンネルプロトコルの自動設定や、光パスの集中自動制御も可能となり、運用コスト削減にもつながるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.