ブロケードが、1ポート32Gbpsの通信に対応した第6世代のファイバチャネルスイッチを、他社に先駆けて発表した(日本では3月9日に発表)。ファイバチャネルは、オールフラッシュストレージの接続でも、主流になっているという。@ITでは、ブロケード日本法人のシニアシステムエンジニア、辻哲也氏に、新製品の文脈を聞いた。
ブロケードが、1ポート32Gbpsの通信に対応した第6世代のファイバチャネルスイッチを、他社に先駆けて発表した(米国では3月2日、日本では3月9日に発表)。ファイバチャネルは、オールフラッシュストレージの接続でも、その70〜80%で用いられているという。@ITでは、ブロケード日本法人のシニアシステムエンジニア、辻哲也氏に、新製品の文脈を聞いた。
32Gbpsファイバチャネルの規格は、2014年にANSI標準として確立した。同時に4本の32Gbpsを束ねることによる128Gbps通信も規定された。業界団体のFibre Channel Industry Associationは、これらに対応した製品を「第6世代」と呼び、2016年に提供開始されるというロードマップを示していた。
ブロケードが今回発表した製品は、この「第6世代ファイバチャネル」に対応した同社スイッチの最初の製品。EmulexとQLogicは同社と歩調を合わせ、ほぼ同時に第6世代のサーバ用アダプタ(HBA:ホストバスアダプタ)を発表した。
新製品「Brocade G620 Switch」は1UサイズのファイバチャネルSANスイッチ。具体的にはSFP+ポート×48、「Q-Flex」(QSFP)ポート×4の構成。各Q-Flexポートは128Gbps接続ができる一方、32Gbps×4ポートとしても使える。このため、同スイッチは、最大で64ポートの32Gbpsファイバチャネル接続が可能。Brocade G620と同クラスの第5世代機種「Brocade G6510 Switch」は16Gbps×48ポートのみだったので、ポート密度は大きく向上したことになる。
新スイッチは、発表と同時に販売が開始されており、2016年第2四半期にはOEMパートナーを通じて販売されるという。
ファイバチャネルは、市場全体としての伸びは鈍いものの、急成長するフラッシュストレージの接続では、かなり使われているようだ。米TechTargetの記事では、EMC、ヴァイオリンメモリ、ピュアストレージが、自社フラッシュストレージ製品の約80%はファイバチャネル接続で使われていると答えている。これらのベンダーは概ね、大規模導入ではファイバチャネル、小規模導入ではiSCSIが使われているとしている。
辻氏は、この背景として、フラッシュストレージでは、ファイバチャネルの優位性がさらに生きると話す。つまり、以前からストレージに安定した高速性を求めるユーザーは、ストレージアクセス用ネットワークを、アプリケーショントラフィック用ネットワークと分けて構築・運用してきた。フラッシュストレージを使うユーザーは、安定した高速性をさらに求める。ストレージ専用ネットワークをイーサネットにするのかファイバチャネルにするのかという選択肢になったとき、最近では製品の低価格化が進んで高価ではなくなり、運用も楽なファイバチャネルネットワークが選ばれやすくなるという。
フラッシュストレージでは、NVMeを利用する製品が登場しつつあるが、辻氏はNVMeへの対応もファイバチャネルなら容易だと説明する。上位レイヤのプロトコルをNVMeに入れ替えればいい。
新しいストレージネットワーキングプロトコルが導入されると、必ず話題になるのはエンド・ツー・エンドでそれを利用できる環境がいつ整うのかということだ。
今回は前述の通り、ブロケードの新スイッチと同時に、EmulexおよびQLogicからホストバスアダプタ(HBA)が発表された。これで、スイッチとサーバに関しては、第6世代を活用できる環境が一通り整う。だが、ストレージ側のファイバチャネル接続が新世代に対応するには、通常1年以上かかると辻氏はいう。
だが、ストレージ側のインタフェースは例えば8Gbpsのままでも、サーバとスイッチを新世代に移行するだけで性能が大きく向上するというテスト結果があるという。下のグラフはEmulexが実施したTPC-Hベンチマークテストで、ストレージ側の接続は8Gbpsに固定し、サーバ側のインタフェース速度を8/16/32Gbpsで計測したところ、クエリへの応答時間が75%短縮したという。これはサーバ側のパフォーマンスボトルネックが低減したためと、辻氏は説明する。
辻氏は、「第6世代の価値は速度だけではない」と話す。エンド・ツー・エンドで性能や障害を検知する機能も改善しているという。
Brocade G620は、ASICでの対応に基づき、IO Insightという新機能を搭載している。これはSCSI I/Oレベルでスループット(IOPS)およびレイテンシの詳細を計測、提示するもの。「ケーブルの不良やごみによって発生するエラーで遅延が起こることもある。通信が不安定なポートは止め、他の接続に切り替えるなど、対応の自動化につなげることができる」。性能や可用性にかかわる問題を、できるだけ事前に検知するとともに、対応の自動化を支援するような管理機能は、今後もファイバチャネル製品の重要な価値であり続ける、という。
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