現在そして未来のマイクロソフトを示す2つのキーワード特集: Build 2016(1/4 ページ)

Build 2016で示された2つのキーワードを通して、マイクロソフトはどんな会社になったのか、何を成し遂げようとしているのかを見てみよう。

» 2016年04月11日 05時00分 公開
[かわさきしんじInsider.NET編集部]
特集: Build 2016
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連載目次

 2016年3月30日から4月1日にかけて、Build 2016が開催された。Windows 10 Anniversary Updateが夏にリリースされることなど、そこでは多数の発表が行われた。本稿では、それらの中から開発者に関係ありそうな事柄をまとめていこう。

2つのキーワード

 Build 2016の基調講演ではさまざまな発表が行われたが、その中でよく出てきたキーワードが2つある。

  • Windows is home for developers
  • Conversations as a Platform

 前者は正確には「Windows is home for 〜」といった表現だったが、要するに「Windowsは開発者が居心地よいと感じるところ」といった意味合いの使われ方をしていた。後者は、これからのマイクロソフトが進む方向性を表すものだ。

 そこで、この2つのキーワードに沿って、以下ではBuild 2016で発表されたものの中で、開発者が気になるであろうものをまとめていく。

Windows is home for developers

 「Windows is home for developers」はその表現の通り、ターゲットとするプラットフォームやデバイスが何であっても「Windowsなら何でもできるようにしますよ」というマイクロソフトの主張だ。

Windows is home for developers Windows is home for developers
画像は断りがない限り1日目2日目の基調講演のストリーミング配信より。

 現在では、iPhoneをはじめとする非Windowsなスマートデバイスの台頭、Webアプリの隆盛などもあり、マイクロソフト以外の技術でアプリを開発する環境/スタイルは勢いを増している。このような状況で「そういうものもWindowsやVisual Studioで開発できるようにするので、ぜひとも開発してください!」と開発者の引き留めに走っているともいえる。

 そのために必要なのが、以下の2点だ。

  • Visual Studio(以下、VS)でのクロスプラットフォーム開発の広範なサポート
  • Windows以外の環境になじんでいる開発者のワークフローのサポート

 前者については、既にVS Tools for Apache CordovaでWeb標準技術を使用したクロスプラットフォームアプリ開発をサポートしている。が、今回のカンファレンスでは、VSにXamarinの開発サポートが無償で組み込まれると発表された。後者の対策としてはbashがWindows 10でネイティブにサポートされた。bashはLinuxやOS Xで標準的に使われているシェルのこと。Linux用のbashバイナリがそのままWindows 10で動作するという話だ。

 もう1つ、.NET開発者にとっては興味深いであろう発表もあった。デスクトップアプリコンバータがそうだ。これはWin32アプリや.NETアプリをUWP化するためのツールだ。WindowsフォームアプリをUWP化することにどれほどの意味があるかを測りかねてはいるものの、興味はあるよ、という人もいるはずだ。

 というわけで、以下では、これらについて少し詳しく見てみよう。

Xamarin

 XamarinはC#を開発言語として、iOS、Android、UWPアプリなどを開発するためのものだ。ロジックのみを共有してUIはプラットフォームごとに記述することも(Xamarin)、ロジックに加えてUIについても可能な部分については共有することもできる(Xamarin.Forms)。これがVSに無償で組み込まれるようになった。

Xamarin Xamarin

 Xamarinに興味のあった方は以前から多いはずであり、VS Community 2013のリリース後に、Xamarin Starterと呼ばれていたエディションに相当する機能を利用できるようにもなっていた。だが、これではXamarinを活用するには十分ではなく、実際のアプリ開発にXamarinを使用するにはそれなりのコストを払う必要があった。

 それが今回の発表で、VS Community/Professional/Enterpriseの各エディションでは無償でXamarinを使えるようになった。コスト面でXamarinの採用を見送っていた層にとっては、これは大きなニュースといえる。

 注意点としては、iOSアプリのビルドには(依然として)Mac OS X+Xcode環境が必要になることが挙げられる。ただし、MacinCloudのようなサービスもあるので、検討してもよいだろう。その一方で、Windows上で稼働するiOSデバイスのエミュレータが将来的には提供されるようだ。

iPhoneエミュレータでデバッグをしているところ iPhoneエミュレータでデバッグをしているところ

 これに関連して、iOS/Android/Mac用のXamarin SDK(アプリ開発に必要となるライブラリとコマンドラインツール。これらを総称して「Xamarin Runtime」と呼ぶようだ)がオープンソース化されることも発表された。

 ただし、XamarinをVSで使用するにはまだまだ難しいところもあるようだ。「Xamarinを使ってみたい!」と思った方は、最初にエクセルソフトの田淵氏のブログ記事「Windows で Xamarin 開発をしたい方はインストールする前に読んでほしい」をご覧になるのがよいだろう(田淵氏のブログには他にも有用な情報が多数掲載されている)。

 また、Xamarinについては兄弟サイトであるBuild Insiderの「インサイドXamarin」「Xamarin逆引きTips」なども参照されたい。

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