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» 2016年05月20日 05時00分 公開

ウォルト・ディズニー・カンパニーもたどる“デジタルビジネスへの3つのステップ”IoT、FinTech時代、既存資産を生かしながらどうデジタルビジネスを実現するか?(2/2 ページ)

[斎藤公二/構成:編集部/@IT]
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デジタルビジネス基盤に向けた「3つのステップ」

 成熟度モデルでは、「各フェーズで取り組むべきこと」と「手段」を整理している。具体的には、Efficiencyフェーズでは「自動化」、Agilityフェーズでは「オーケストレーション」、Innovationフェーズでは「ITデリバリの変革」に取り組むべき、としている。

 では「自動化」「オーケストレーション」「ITデリバリの変革」はどのように実現するのか。HPEはその手段となる製品群を“変革に向けた3ステップ”に沿ってラインアップしているが、その各種機能は各ステップにおいて「具体的にはどのような取り組みが必要なのか、何をすべきなのか」を考える、1つのヒントになるものだ。

ステップ1――自動化

  • Data center Automation(データセンターの自動化)
  • ITSM Automation(ITサービス管理の自動化)
  • Operations Bridgeによる運用管理(ビッグデータを利用した運用管理)

 データセンターの自動化は、マルチベンダー環境でのプロビジョニングやパッチ適用など、さまざまな定型作業を自動化し、最終的には手作業を最小限に抑えたソフトウェアデファインドなデータセンターを実現していくための製品群だ。

 「Windows、Linux、HP-UXなど、異なるチームが異なるシステムを、それぞれ個別に運用を担当している例が多く、これがコスト増大の要因になっています。Efficiencyフェーズでは、定型作業の自動化はもちろん、システム環境が複数あっても、チームを1つに統合して、同じツールで一元的にデータセンターを管理できる環境整備が必要です」

 ITサービス管理の自動化は、ITILのベストプラクティスを活用し、サービスデスク管理やITサービス管理を簡素化するもの。「例えばパスワードリセットなどのよくある作業をセルフサービス化するだけでも、チケット数を大きく削減できます。前述のように、頻繁に発生する定型作業についてはオペレータを介在させることなく、ユーザーが自身で課題を解決できるようにすることで、業務効率は大幅に向上するのです」

 3つ目の「Operations Bridge」は、システムの運用状況をモニタリングし、可視化・分析する製品群。各種イベントの相関分析による障害原因個所の特定支援や、障害の予兆分析などが行える。さらにランブックオートメーション機能を持つ「HP Operations Orchestration」と組み合わせることで、一定の稼働状況に応じて「あらかじめ設定した任意の対応プロセス」を自動実行することも可能だ。つまり、動的に変化する仮想化、クラウド環境を、そのときどきの状況変化に応じて、人手によるミスを抑止しながら、確実・効率的に安定運用することが重要というわけだ。

参考リンク:「HP Operations Bridge Version 10」開発責任者に聞く、運用管理の新要件(@IT)

ステップ2――オーケストレーション

 次のステップである「オーケストレーション」は、「クラウドオーケストレーション」を支援する製品群で構成している。マルチハイパーバイザー、マルチベンダー環境に対応することで、自社の目的・状況に応じた最適なインフラの組み合わせ/使い分けの実現を支援している点がポイントだ。

 具体的には、パブリッククラウドも含めた複数のクラウドサービスを一元的に管理できる「Cloud Service Automation」をはじめ、OpenStackを活用したIaaS環境を構築できる「HPE Helion」、CloudFoundryを活用したPaaS環境を構築できる「HP Helion Development Platform」を用意。

 さらに、そうしたクラウド上での、アプリケーションの迅速な開発・デリバリを支援するサービス・製品として、DevOpsの実現を支援する「DevOpsソリューション」、継続的デリバリを実現する「CODAR」などもラインアップする。

 「イノベーティブな方向に向かうためには、アプリケーション開発、デリバリの在り方やプロセスも含めて変える必要があります。古いスタイル、人に依存したプロセスを減らし、いわゆるDevOpsの方向に変えていくことが求められるのです」

ALT 企業はビジネス目的もシステム環境も各社各様。変革に向けた3つのステップを実現するために、各種ソリューションの中から自社に最適なものをピックアップし、“Right Mix”を実現する

ステップ3――ITデリバリの変革

 そして最後のステップである「ITデリバリの変革」については、「トランスフォーメーション」と呼ばれる製品群を中心としている。ここでは、「IT部門をサービスブローカーへと変革すること」「既存アプリケーションのユーザーエクスペリエンスをモダナイズすること」を目指す。

 その具体的手段として、セルフサービスポータル機能を持つ「Propel」、あらゆるネットワーク環境に置かれるモバイルアプリケーションのレスポンスやユーザビリティをユーザー視点で監視することで、安定運用とユーザー満足度向上を狙うモバイル監視製品「AppPluse Mobile」、既存の物理環境、仮想環境、クラウド環境にわたるアプリケーショントランザクションの状態を監視し、問題の迅速な切り分けと解決をサポートするアプリケーション診断製品「Diagnostics software」などを用意している。

 「これらによって、分かりやすく直感的なインタフェースを持つITサービスを、ユーザーが必要なときにすぐに提供でき、なおかつ常に快適な状態でサービスを利用できる環境を整えるのです。こうした収益・ブランドの源泉となるITサービスを、スピーディかつ安定的に提供できる仕組みを持つことで、IT部門はコストセンターではなく、価値を創出する“サービスブローカー”としての社内認知を得ることが狙えるわけです」

モード2への変革は、先進的な米国企業もスモールスタートで始めている

 とはいえ、ホマユン氏によると、現時点では、IT部門のサービスブローカー化まで実現するInovationフェーズにまで達している企業はごく一部であり、達していたとしても、まだ企業内の一部に限られているケースが多いという。

 例えば、HPEが支援しているInovationフェーズにある1社として、米Walt Disney Companyが挙げられる。Disney Worldでは「MagicBand」と呼ばれるGPS付きのリストバンドに、入場チケット、ホテルのルームキー、カード決済サービス、事前予約したアトラクションをすぐ利用できる「ファストパス」など、Disney Worldをより快適・便利に楽しむための機能を搭載。来場者に配布することで、ユーザー体験と満足度を大きく向上させている。ただ一方で、同社の課金システムの担当部門は、まだ「自動化」フェーズに取り組み始めた段階だという。

 「MagicBandの取り組みは、課金システムのチームとは別の小さなチームが始めたもの。課金システムの変革も重要ですが、まずはビジネスに最も近いところ、売上に直結する領域から、スモールスタートで変革へのステップアップを始めたわけです。MagicBandのチームと課金システムのチームは連携していくことになると思いますが、そのアプローチはまだこれから探るところといえるでしょう。米国企業のデジタルビジネスというと、非常に先進的なイメージを持つかもしれませんが、同じ会社内でも、各部門の担当領域に応じて、異なるペース、異なるアプローチで、少しずつ慎重に、変革に向けて取り組んでいるのです。まずは現状を把握し、取り組みやすい領域からスタートすることが大切です」

ALT 「どのような道筋をたどればゴールにたどり着けるのか、現実的な観点で現状とゴールを見据え、小さなプロジェクトから一歩ずつ歩を進める。HPEとしては、各社のTo Beに至るロードマップを顧客企業と共に検討し、共に作っていく」

 企業の中にはあらゆる部門が存在し、その担当業務も異なる。こうした中で、スピードや柔軟性が重要な領域の業務については、モード2へと移行する必要があるわけだが、着実に変革していくためには、このように“収益・ブランド向上に最も近い領域”からスモールスタートで取り組むことが肝要ということだろう。ただ、そうした取り組みを社内に広げ、変革へのステップを着実に踏んでいくためには、それを支えるシステムは既存資産も含めて常に“Right Mix”である必要がある。HPEは成熟度モデルとそれに沿った製品ラインアップの中から、各社の現状に最適な構成をピックアップし、ステップアップを支援するというわけだ。

 また、ホマユン氏は「Right Mixを実現するために、HPEとしてはオープン性を重視し、顧客に多くの選択肢を提供していく」とも強調する。

 「企業のシステム環境は各社各様ですが、選択肢を多くすることで、企業はどのような状態からでも変革に向けて出発できるようになると考えます。どの企業もデジタルビジネスが今後の差別化のカギになっていくことを深く認識していると思います。ただ、ビジョンを語るだけでは実現にはたどりつけません。自社の場合、どのような道筋をたどればゴールにたどり着けるのか、現実的な観点で現状とゴールを見据え、小さなプロジェクトから一歩ずつモード2へと歩を進めることが大切です。HPEとしては、各社のTo Beに至るロードマップを顧客企業と共に検討し、共に作っていきたいと考えています」

 多くの企業でデジタルビジネスの重要性への認識が深まる一方で、「うちにはそれほどのスピードや柔軟性は必要ない」といった考えを持つ企業も日本では少なくない。しかし、ほとんどのビジネスをITが支え、重要な顧客接点にもなっている今、システムのパフォーマンスはそのままビジネスのパフォーマンスに直結する状況になっている。

 開発・運用効率の悪さ、コストやリソースの不足、開発・運用プロセスの属人化などに悩む企業は多いが、激しい市場競争の中で、スピードや変化対応力が差別化のカギになっていくことは間違いない。まずは本当に「うちのビジネスにはスピードや柔軟性は必要ない」のか、モード1/モード2を1つの基準に、あらためて自社ビジネスを俯瞰してみてはいかがだろう。その必要性を再認識できれば、システム開発・運用についてはまず何から着手すべきなのか、変革に向けた第一歩を踏み出しやすくなるのではないだろうか。

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