ウォルト・ディズニー・カンパニーもたどる“デジタルビジネスへの3つのステップ”IoT、FinTech時代、既存資産を生かしながらどうデジタルビジネスを実現するか?(1/2 ページ)

サービスインのスピードと、変化対応力が大きなカギとなるデジタルビジネス。ではデジタルビジネスを支える「変化に強いシステム」に変革したり、「収益の源泉となるシステム」を作ったりするためには、既存システムをどうモダナイズしていけばよいのだろうか。そうしたシステム変革に多数の支援実績を持つ米HPE バイスプレジデント 二ーマ・ホマユン(Nima Homayoun)氏に話を聞いた。

» 2016年05月20日 05時00分 公開
[斎藤公二/構成:編集部/@IT]

「成熟度モデル」で変革への道筋をつける

 IoTやFinTechトレンドの本格化に象徴されるように、デジタルビジネスに向けた企業の取り組みが加速している。既存製品をクラウドサービス化して新しい収益源にする、APIを通じて他社サービスと連携することでこれまでにないサービスを生み出し、新たな顧客を囲い込む、といった実例も目立ち始めている。サービスの内容・品質はもちろん、サービスインまでのスピードも差別化の前提条件となっている。

 ただ、こうしたビジネス展開の重要性は認識しながら、それを支えるITシステムについては、何をどう進めればデジタルビジネスを支える基盤となり得るのか、悩む企業は多い。新しい取り組みのため先を見通しにくいという事情もあるが、何より具体的な方法論や、進展を測る指標となるモデルがないことも大きな要因だろう。特に企業規模が大きく既存ビジネスが堅調であるほど、これまでに投資したIT資産の保護が重視される。新規領域に取り組むためには、既存システムをうまく生かしつつ、慎重に進める必要があるのだ。

 そうしたデジタルビジネスの取り組みに対し、成熟度モデルを用いてスムーズな移行を支援しているのが米Hewlett Packard Enterprise(以下、HPE)だ。同社は、製造、金融、小売り・流通など、一般的な企業におけるデジタルビジネスの取り組みを支援してきた知見を基に、成熟度モデルを構成。現状の把握から、各ステップで取り組むべき事柄、必要な手段まで、各社の目的・状況を基に明確化し、デジタルビジネス基盤への着実な移行を支援している。

ALT 米HPE Software クラウドおよびオートメーションビジネスのプロダクトマーケティング バイスプレジデント 二ーマ・ホマユン(Nima Homayoun)氏

 米HPE バイスプレジデントの二ーマ・ホマユン(Nima Homayoun)氏は次のように話す。

 「企業におけるITシステムの在り方には、“既存業務の効率化・省力化”を目的とした伝統的なIT活用である『Traditional IT』と、デジタルビジネスに向けてビジネスの変革を支える『Digital Enterprise』の2つがあります。ガートナーでは前者をモード1、後者をモード2と表現していますね。市場変化、競争が激しい現在、Traditional ITだけがあればいいと考えている企業はほとんどないと言っていいでしょう。あらゆる業種の企業がDigital Enterpriseを実現したいと願っています。では、どう移行すればよいのか。われわれは、そのための道筋をつけ、ステップバイステップで取り組みを進められるように、3つのフェーズによる成熟度モデルを用意しています」

 3つのフェーズとは、「効率化(Efficiency)」→「俊敏性の獲得(Agility)」→「革新(Inovation)」というもの。より具体的には、まず既存システムを効率化し、状況変化に機敏に対応できるようにする。その上でイノベーティブな取り組みを加速させていく。「逆に言えば、伝統的な企業がいきなり革新をなし遂げようとしてもできない」ということだ。

最適な手段を組み合わせる「Right Mix」アプローチ

 この3つのフェーズに沿って、Digital Enterpriseへとステップアップしていく上で1つのポイントとなるのが、Traditional ITとDigital Enterprise、それぞれの課題を明確化し、解決のアプローチを整理することだという。

 例えばTraditional ITでは、「既存ワークロードの運用管理が高コストになりがち」「新しいアプリケーションやインフラの展開が遅い」「アプリケーションの性能や信頼性が固定的」といった課題が挙げられる。

 一方、Digital Enterpriseにおいては、新しい取り組みならではの障害が立ちはだかる。例えば、FinTechにおけるAPIを通じたサービス連携もそうだが、「さまざまな取引先をシステムに巻き込む際に、コンプライアンスとセキュリティをどう確保するか」「ビジネスサイドが新しいITを使いこなせないケースにどう対応するか」「顧客からのネガティブな反応によるブランドや売上への打撃にどう対応するか」といった課題が挙げられる。

 「こうした各種課題を解決する手段として、HPEでは『ハイブリッドインフラへの変革』『デジタル・エンタープライズの保護』『データ指向経営の推進』『ワークプレイスの生産性向上』という4つの枠組みで、さまざまな製品群を用意しています。ただ、ここで重要となるのが、単に手段を提供するのではなく、各社が目的に応じてDigital Enterpriseへとステップアップしていく上で、これらの手段の中から必要なものだけを選び、最適なバランスで組み合わせる“Right Mixアプローチ”を採るべきことです。当然ながら、何が正しい組み合わせになるかは企業ごとに異なります。企業ごとに最もふさわしいRight Mixを探す必要があるのです」

 もちろん、“その時点での最適な組み合わせ”を構築しただけでは、Digital Enterpriseへステップアップすることはできない。そこでDigital Enterpriseに向けて、常に“Right Mix”な状態でシステムインフラを着実に発展させていくために「成熟度モデル」が必要になるというわけだ。

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