インシデント発生時のコストを最小限に抑えるデータ運用術特集:IoT時代のセキュリティログ活用(3)(2/4 ページ)

» 2016年05月23日 05時00分 公開

コストカットには、データの「所在」と「アクセス権」を明確化すること

 オンラインストレージ上のデータについては、データの内容によって適切にフォルダを分けて構成することと、それぞれのフォルダに対するアクセス権限やデータの操作に関する権限(更新・削除の可否など)を適切に設定することが望まれます。

 これらには、大きく2つの意義があります。1つは、存在するデータの種別とその保管場所を明確に定義しておくことで、フォレンジック実施時のデータの取得対象範囲を限定できること。そしてもう1つが、そのフォルダにアクセスできる(できた)関係者を限定することで、フォレンジック実施時のデータ取得対象となる個人デバイスを限定できることです。

フォレンジックに掛かるコストの例(改善前)

 図1を例にとって説明しましょう。今、インシデントが発生してしまったある企業で、フォレンジックによる調査を実施することになったとします。このとき、それぞれの機器、フォルダには次のような容量のデータが保存されていました。

  • サーバ上のフォルダ:各フォルダ直下に100GB
  • 個人利用のPC:各端末に50GB
  • 個人利用の携帯電話:各端末に1GB
図1 フォレンジック実施時の環境イメージ(改善前) 図1 フォレンジック実施時の環境イメージ(改善前)

 作業実施の人件費を除く、証拠保全の単価とデータベース化の単価は以下のように仮置きします。

  • 証拠保全単価:PC10万円/台、携帯電話10万円/台、サーバ10万円/全体
  • データベース化単価:5万円/GB

 さて、ここで対象となるデータは図1で示されるサーバのどこかに保管されている可能性が高いものの、この企業では、どこに何のデータが保存されているのか明確に把握できていません。さらに、対象データに対する権限が適切に設定されているかも不明瞭で、誰でも自由にコピー・移動できる可能性がある環境でした。従って、図1上に存在する全てのデータがフォレンジックの対象となります。この場合、以下の費用が発生します。

  • 証拠保全:PC10万円×5台+携帯電話10万円×4台+サーバ10万円=100万円
  • データベース化:(100GB×12フォルダ+50GB×5PC+1GB×4携帯)GB×5万円=7270万円
  • 合計:7370万円

 このように、ファイルの運用管理に関するルールやアクセス権限が適切に定められていない、もしくはそのルールが形骸化していたためにファイルの閲覧・コピーが誰でも自由に行えてしまう環境などでは、フォレンジックのコストが大きく膨らんでしまうことになります。

 では、同じフォルダ構成、同じアクセス権限で、各フォルダに格納されているデータの中身を明確に区分けするルールが存在し、そのルールが実践されていた場合はどうでしょうか?

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