キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation)Tech Basics/Keyword

スマートフォンのLTE通信技術の1つである「キャリアアグリゲーション」について解説する。複数の周波数帯を束ねることで、通信の高速化を実現するというもの。すでに多くのスマートフォンで採用されている。

» 2016年06月08日 05時00分 公開
[小林章彦デジタルアドバンテージ]
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 最新のスマートフォンの仕様を見て、データ通信速度が速くなっていることに気付かないだろうか。当初、受信速度37.5Mbps(一部では受信速度75Mbps)で始まった各携帯キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク)のLTEサービスだが、最新機種(2016年夏モデル)では約10倍の最大受信370Mbpsを実現している。この速度向上を支える技術の1つが「キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation:CA)」である。Carrierとは(データを送信するための)「搬送波」、Aggregationとは「集約、集成」という意味。

 キャリアアグリゲーションは、LTEの拡張規格「LTE-Advanced」を構成する技術の1つであり、現行のLTEにも先行して採用されるようになったものだ。複数の周波数帯(バンド)を同時に利用することで、通信速度を高速化する技術である(LTEのバンドについては、「用語解説:LTEの『バンド』って何?」を参照のこと)。

 LTEの周波数帯は、5MHz単位で割り当てが行われており、5MHz幅で受信最大37.5Mbps(理論値)での通信が行える。10MHz幅ならば75Mbps、15MHz幅ならば112.5Mbps、20MHz幅なら150Mbpsの通信が行えることになる。通常は、連続した周波数帯を合わせて通信を行う必要がある。

 しかし周波数は有限であり、連続した幅広い周波数帯を確保(割り当て)できないこともある。そこでキャリアアグリゲーションでは、連続していない複数の周波数でも、それらをまとめることで広い周波数帯を確保し、より高速な通信を可能にする。

キャリアアグリゲーションの概念図 キャリアアグリゲーションの概念図

 高速道路にたとえると分かりやすいだろうか。1車線(5MHz)の道路なら37.5Mbps、4車線(20MHz)なら150Mbpsといった具合だ。さらに別の路線(東名自動車道に対して、新東名自動車道や中央道)を同時に使うことで、通信速度を向上させるのが「キャリアアグリゲーション」というわけだ。キャリアアグリゲーションで組み合わされる周波数は、携帯電話関連の規格を策定している「3GPP」で規定されている。

 例えば、2GHz帯の75Mbpsと800MHz帯の75Mbpsの2つのバンドを合わせて使うことで、150Mbpsを実現するといった具合だ。最大受信速度の370Mbpsは、3つの周波数帯を利用する3波CAである。規格上は最大5つ(20MHz幅×5=100MHz幅)の周波数帯を束ねることで、750Mbpsの受信速度が実現可能になる。ちなみにLTE-Advancedでは、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output:複数のアンテナを使って通信帯域を向上させる技術)を拡張することで、1Gbpsを超える受信速度を実現する予定だ。

 キャリアアグリゲーションを利用するには、基地局と端末(スマートフォンなど)の両方が対応する必要がある。そのため、古い機種では最新の3波CAは利用できないし、基地局がキャリアアグリゲーションに対応していなければ、最新機種でも受信370Mbpsといった高速な通信は行えない。

キャリアアグリゲーションの高速化以外のメリット

 前述の通り、キャリアアグリゲーションでは複数の周波数を束ねて利用することで、通信の高速化が実現できる。さらに異なる周波数帯を同時利用することで、1つの周波数帯の電波環境が悪化して通信速度が低下した場合でも、それ以外の周波数帯で通信を継続することで、通信が安定するという。また、多くのユーザーが複数の周波数帯を使用することにより、周波数帯の利用効率が良くなる、というメリットもあるとされている。

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