LTEの「バンド」って何?Windows Insider用語解説

最近量販店などでも販売されているSIMロックフリー(SIMフリー)のスマホを購入する際、プロセッサーやメモリだけでなく、そのスマホの仕様書を見て、サポートする「バンド」を確認しておいた方がよい。このバンドとは何かを解説する。

» 2015年11月16日 05時00分 公開
[小林章彦デジタルアドバンテージ]
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 スマートフォン(以下、スマホ)の通信費用を抑えられるということで、「格安SIMカード」に注目が集まっている。格安SIMカードとは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)が携帯電話会社(キャリア)の通信回線を借りて、データ通信速度や容量などを工夫することで安価にサービスを提供するものだ。

 そして格安SIMカードの普及とともに、どこのキャリアでも利用可能なSIMロックフリー(SIMフリー)のスマホもさまざまなメーカーから販売されている。例えば、キーボード付きのスマホ「BlackBerry Classic」や、Windows Phone搭載の「MADOSMA」など、キャリアでは販売されていない魅力的な端末もSIMフリーで販売されている。

 また総務省が「SIMロック解除に関するガイドライン」を改正したことで、キャリアから購入したスマホであっても、機種によっては180日以上の利用でSIMロックの解除が可能になっている。

 このようなSIMフリーやSIMロックが解除されたスマホであれば、キャリアに関わらず利用できるようになるわけだが、スマホと携帯電話会社の組み合わせによっては、電波がつながらない、地方などでつながりにくいといったことも起きる。これは、キャリアが利用している電波の周波数帯とスマホがサポートしている周波数帯が合わないことに起因する。

 携帯電話が利用する電波の周波数は、標準化団体の「3GPP」が技術仕様「ETSI TS 136 101」で規定しており、各国の事情に合わせて、規定された周波数帯(バンド)の中から各キャリアに割り当てを行っている。そのため、キャリアによって利用できるバンドが異なっているのだ。

 LTEのバンドは、ETSI TS 136 101によって割り当てられた周波数によって「バンド1」「バンド2」「バンド3」……と数字が付けられており、「バンド1」から「バンド44」まで規定されている。このバンドは、周波数の順に番号が付けられているわけではないので注意してほしい(バンド1から周波数が低い順に付けられているわけではない)。ETSI TS 136 101で規定されたバンドは以下の通りである。

バンド 周波数帯 上り(MHz) 下り(MHz) 帯域幅(MHz) FDD/TDD
1 2100 1920〜1980 2110〜2170 60×2 FDD
2 1900 1850〜1910 1930〜1990 60×2 FDD
3 1800 1710〜1785 1805〜1880 75×2 FDD
4 1700/2100 1710〜1755 2110〜2155 45×2 FDD
5 850 824〜849 869〜894 25×2 FDD
6 800 830〜840 875〜885 10×2 FDD
7 2600 2500〜2570 2620〜2690 70×2 FDD
8 900 880〜915 925〜960 35×2 FDD
9 1700 1749.9〜1784.9 1844.9〜1879.9 35×2 FDD
10 1700/2100 1710〜1770 2110〜2170 60×2 FDD
11 1500 1427.9〜1447.9 1475.9〜1495.9 20×2 FDD
12 700 699〜716 729〜746 17×2 FDD
13 700 777〜787 746〜756 10×2 FDD
14 700 788〜798 758〜768 10×2 FDD
15 予約
16 予約
17 700 704〜716 734〜746 12×2 FDD
18 800 815〜830 860〜875 15×2 FDD
19 800 830〜845 875〜890 15×2 FDD
20 800 832〜862 791〜821 30×2 FDD
21 1500 1447.9〜1462.9 1495.9〜1510.9 15×2 FDD
22 3500 3410〜3490 3510〜3590 80×2 FDD
23 2000 2000〜2020 2180〜2200 20×2 FDD
24 1600 1626.5〜1660.5 1525〜1559 34×2 FDD
25 1900 1850〜1915 1930〜1995 65×2 FDD
26 850 814〜849 859〜894 35×2 FDD
27 850 807〜824 852〜869 17×2 FDD
28 700 703〜748 758〜803 45×2 FDD
29 700 N/A 717〜728 N/A FDD
30 2300 2305〜2315 2350〜2360 10×2 FDD
31 450 452.5〜457.5 462.5〜467.5 5×2 FDD
32 1400 N/A 1452〜1496 N/A FDD
33 1900〜1920 20 TDD
34 2010〜2025 15 TDD
35 1850〜1910 60 TDD
36 1930〜1990 60 TDD
37 1910〜1930 20 TDD
38 2570〜2620 50 TDD
39 1880〜1920 40 TDD
40 2300〜2400 100 TDD
41 2496〜2690 194 TDD
42 3400〜3600 200 TDD
43 3600〜3800 200 TDD
44 703〜803 100 TDD
ETSI TS 136 101で規定されたバンド
バンド1(2100MHz帯)は「IMTコアバンド」と呼ばれており、世界中のほとんどのLTEでサポートされている。LTEの通信方式には、「FDD(周波数分割多重)」と「TDD(時分割多重)」の2種類がある。FDDは上りと下りの通信を異なる周波数に割り当てるのに対し、TDDは同じ周波数で上りと下りを時間を切り替えて通信する方式である。FDDはバンド1からバンド32に、TDDはバンド33からバンド44に割り当てられている。日本国内において、LTEの通信はFDDが主流であるが、Wireless City Planningが提供する「AXGP」や、KDDIグループのUQコミュニケーションズが提供する「WiMAX 2+」がTDDを採用している。

 上記で規定されているバンドが全ての国で同じように使えるわけではない。上記のうちからいくつかのバンドが各国の電波事情などに応じてキャリアに割り当てられ、利用されることになる。

 スマホを選ぶ場合、性能(プロセッサーやメモリ容量など)を比べるのも重要だが、どのバンドをサポートしているのかも調べておきたい。日本国内のバンドの利用状況は以下の通りなので、スマホがサポートしているバンドとこの表のバンドを見比べて、自分が利用しているキャリアにそのスマホが対応しているのかを確認しておこう。また海外で現地のSIMカードを使って通信したいなら、その国のキャリアが利用しているバンドにスマホが対応しているかも確認しておく必要があるだろう。

バンド 周波数帯 上り周波数 下り周波数 割り当てキャリア 帯域幅 通信種別
1 2100MHz帯 1920〜1940MHz 2110〜2130MHz KDDI(au) 20MHz×2 FDD
1940〜1960MHz 2130〜2150MHz NTTドコモ 20MHz×2
1960〜1980MHz 2150〜2170MHz ソフトバンク 20MHz×2
3(バンド9を含む) 1700MHz帯 1744.9〜1759.9MHz 1844.9〜1854.9MHz Y! mobile 15MHz×2 FDD
1759.9〜1784.9MHz 1854.9〜1879.9MHz
1764.9〜1784.9MHz 1859.9〜1879.9MHz NTTドコモ 20MHz×2 FDD
8 900MHz帯 900〜905MHz 945〜950MHz ソフトバンク 15MHz×2 FDD
905〜915MHz 950〜960MHz
11 1500MHz帯 1427.9〜1447.9MHz 1475.9〜1485.9MHz ソフトバンク 10MHz×2 FDD
1437.9〜1447.9MHz 1485.9〜1495.9MHz KDDI(au) 10MHz×2
19 800MHz帯 830〜845MHz 875〜890MHz NTTドコモ 15MHz×2 FDD
21 1500MHz帯 1447.9〜1462.9MHz 1495.9〜1510.9MHz NTTドコモ 15MHz×2 FDD
26 800MHz帯 815〜825MHz 860〜870MHz KDDI(au) 15MHz×2 FDD
825〜830MHz 870〜875MHz
28 700MHz帯 718〜728MHz 773〜783MHz KDDI(au) 10MHz×2 FDD
728〜738MHz 783〜793MHz NTTドコモ 10MHz×2 FDD
738〜748MHz 793〜803MHz Y! mobile 10MHz×2 FDD
41(バンド38を含む) 2500MHz帯 2545〜2575MHz Wireless City Planning 30MHz TDD
2595〜2645MHz UQ Communications 50MHz TDD
日本国内のキャリアがサポートしているLTEのバンド

 例えば、Windows Phoneの「MADOSMA」は、「スペック」欄の「通信」項目の情報によると、バンド1/3/19(バンド6を含む)をサポートしていることになっている。上表の通り、このLTEバンドはNTTドコモの回線(MVNOを含む)に合致したものである。

MADOSMAのスペック MADOSMAのスペック
マウスコンピューターがホームページで公開しているMADOSMAのスペックを見ると、「通信 4G/LTE」欄に対応しているLTEバンドが記載されている。
  (1)このスペック表を見ると、MADOSMAはバンド1/3/19(バンド6を含む)をサポートしていることになっている。

 一方、auの回線でMADOSMAを利用しようとすると、バンド3/19はauがサポートしておらず、場所によっては通信できない可能性がある。実際には、MADOSMAはauのバンド1をサポートしておらず、au系のSIMカードを挿しても通信できない(auのバンド1は、PHSに割り当てられた周波数と近接しているため、「PHSを保護するための技適」の取得などが必要となっている。そのため、auのバンド1をサポートしていないスマホも多いようだ)。このようにホームページに掲載されている仕様書では、一見サポートされているようなバンドであっても、実際には利用できないということもあるので注意したい。

スマホとキャリアのバンドの関係 スマホとキャリアのバンドの関係
バンド1/3/19をサポートするスマホでは、NTTドコモがサポートするバンドには対応できるが、auやソフトバンクとはバンド1だけでしか通信できない。さらに、同じバンド1でもNTTドコモとは通信可能でauとは通信できない、といったスマホもあるので要注意だ。

 またiPhone 6S/6S Plusのように、世界中でほぼ同じ仕様(サポートするバンドや通信規格によって何種類かあるが)で販売しているような機種では、数多くのバンドをサポートしている。日本国内向けのiPhone 6S モデルA1688 CDMA/6S Plus モデルA1687 CDMAでは、LTEバンド1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/25/26/27/28/29/38/39/40/41と、日本国内のみならず海外のキャリアであっても対応できるほど、多数のバンドに対応している。

 このようにスマホによってサポートしているバンドは異なっているので、特にSIMフリーのスマホを購入する場合は、利用するキャリアのバンドと合致するかどうかを事前に確認しておく必要がある。

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