シスコシステムズのアソシエイトレベル認定「CCNA Routing and Switching」の日本語版が、2016年7月上旬より改訂版(v3.0)に移行する。本稿では、改訂の概要や受験者向けの留意事項を紹介しよう。なお、旧バージョンの試験およびトレーニングも、終了までの期間は選択可能となっている。
シスコシステムズ(以下、シスコ)は、エントリー、アソシエイトレベル認定「CCNA Routing and Switching」の改訂版(v3.0日本語版)の施行を、2016年7月上旬に開始する(一部は既に開始済み、詳しくは下記参照)。同社は改訂に関するアナウンスを5月17日に行っており、英語版では既に新バージョンがリリースされている。なお、改訂に伴う関連トレーニングの実施に関しても、7月下旬以降、同社の認定ラーニングパートナーより発表予定とのこと。
CCNA Routing and Switching試験は「ICND1」「ICND2」「CCNA」から構成され、ICND1、ICND2日本語版については、6月から新バージョンの施行が始まっている。残るCCNAの改訂版が、7月上旬にリリースされる。
なお、旧バージョン(v2.0)のICND1、ICND2、CCNAは、それぞれ8月20日、9月24日、8月20日に終了予定だが、それまでの期間は、旧/新版から受験するバージョンを選択することが可能だ(下図参照)。
改訂版試験では、クラウドやIoTを中心とするIT環境のトレンドを踏まえて、「プログラマブルネットワーク(SDN)」「サイト間VPN」などの技術に関する設問が追加される。また「IPv6」などについては、これまでよりもさらに深い知識を求める内容に変更される。
一方、「Cisco Express Forwarding(CEF)」など、従来試験範囲に含まれていた幾つかの技術は、出題範囲から除外される。今回の改訂で追加/削除されたトピックの詳細については、「CCNA Routing and Switching 認定トレーニングおよび試験内容の変更点」を参照のこと。
本改訂について、シスコ トレーニング ビジネス デベロップメント ビジネスデベロップメント マネージャーの岡邦子氏は次のように語る。
「現在、クラウドやIoTの普及とともに、ショッピングや医療、モビリティなど、生活の中にITが溶けこみ始めています。これをテクノロジー面に落とし込むと、プログラマブルネットワーク(SDN)やネットワーク管理の自動化・可視化技術の浸透により、インフラ関連技術が従来の縦割り構造から“非サイロ化”に移行しつつあるといえます。その結果、従来のネットワークエンジニア以外のエンジニアにも、ネットワークに関する知識・スキルが求められるようになっています。実際に、シスコの提供するネットワーク関連の資格でも、ネットワークに限らずあらゆる領域に携わる受験者の数が年々増加しています。今回の改訂もこうした動向に応じたもので、従来のネットワークエンジニアだけでなく、幅広い領域の人々を対象に、ネットワーク領域の最新技術・動向に関する網羅的な知識やスキルを問います」(岡氏)
また、シスコ Tail-f セールス ソフトウェア ソリューションズ アーキテクトの高橋寛嗣氏は、改訂内容のポイントを以下のように説明する。
「多数のデバイスが有線/無線で接続されるIoTネットワークにおけるセキュリティは本改訂における重要トピックの1つです。その例としてICND1では、ファイアウォールやアクセスポイント、ワイヤレスコントローラが出題範囲に追加されています。エントリーレベルでは技術的な詳細までは問われませんが、少なくともこれらの技術の概要について理解しておく必要があります。また、IPv6も既に普及しつつある技術として、従来のアドレスの形式うんぬんというレベルではなく、『ステートレスアドレス自動設定』『エニーキャスト』といった、より踏み込んだ内容が問われます。
ICND2では、クラウド普及などを前提として、1つにはブランチ間ネットワークのような、さらに上位レイヤーのネットワークに焦点が当てられます。例えば、これまではあまり問われなかったBGP(eBGP)に関する問題が追加されます。また『QoS(Quality of Service)』も重要テーマです。ますます巨大化、複雑化していくネットワークにおいてQoSを実現するためには、プログラマブルネットワーク(SDN)やNFVといった技術をどのように活用できるのか。また、そのためにはどのようなリソースが必要で、それらをどう設計、管理していけばよいのかといった点について、ベーシックな理解が求められます」(高橋氏)
改訂版のCCNA Routing and Switchingでは、従来の「クローズドな、マニュアル管理されるネットワーク」ではなく、「オープンでプログラマブルな、ポリシーベースで自動化されたネットワーク」に関する知識・スキルが必要となる。
こうして新しい要素を列挙していくと、「改訂により難易度が大幅に増加するのではないか」と懸念する受験者も少なくないかもしれない。これについて岡氏は、「確かに難易度は多少上がるが、エントリーレベルの試験は、あくまで最新のテクノロジーや、テクノロジー同士の関連性などについて、概要レベルの理解を問うもの」と述べ、これまで通り着実に学習を行えば問題ないとしている。
また、受験者の学習をサポートするため、シスコではセルフスタディー教材の充実も進めているという。ラーニングパートナー向けの教材も、従来のものだけでなく、ネットワークトポロジーなどについてよりインタラクティブに学べるデジタル教材を提供しているとのことだ。
「ネットワークの構成や管理における自動化が進み、これまでのような手間が減った一方で、エンジニアには『サービスやビジネスを支援する』というより高度な役割が期待されるようになっています。CCNA Routing and Switchingも、引き続き、エンジニアを支援する認定資格として改善を続けていきます」(岡氏)
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