SAPがPaaSのスタンダードを目指して「SAP HANA Cloud Platform」の普及展開に注力している。先頃、日本でも同サービスの事業強化を打ち出した。果たして、同社の野望は実現するか。
近年、さまざまな技術トレンドが注目され、ニュースとして盛んに取り上げられています。それらは社会、企業に対してどのようなインパクトを及ぼすのでしょう。ベンダーを中心としたプレーヤーたちは何を狙いとしているのでしょう。
それらのニュースから一歩踏み込んで、キーワードの“真相”と“裏側”を聞き出す本連載。今回は「SAP HANA Cloud Platformの野望」を取り上げます。
「クラウドサービスは着実に広がってきているが、さまざまなアプリケーションを開発するためのPaaS(Platform as a Service)型サービスが本格的に普及するのは、まさにこれからだ。現時点でPaaSのスタンダードは存在しない。“SAP HANA Cloud Platform”は、ERPをはじめとした業務アプリケーションを知り尽くしたSAPが満を持して投入したPaaSだ。近い将来、必ずPaaSのスタンダードになると確信している」
表題の疑問にこう答えてくれたのは、SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏である。今回は、独SAPがクラウドサービスの中核に位置付け、先頃、日本でも事業強化に乗り出した「SAP HANA Cloud Platform」(以下、HCP)に焦点を当て、PaaSのスタンダードを目指すSAPの戦略を探ってみたい。
今回、筆者が本コラムでHCPを取り上げたいと思ったのは、SAPジャパンが2016年6月8日にHCPの日本での事業強化を打ち出したのがきっかけだ。その内容は、HCPを提供するデータセンターを国内の2カ所(東京と大阪)に新設するというもの。東京データセンターは2016年11月、大阪データセンターは2017年第1四半期(1〜3月)に開設する予定だ。2カ所に設置することで、ディザスタリカバリー(DR:災害時復旧)体制もとれるようにするという。
この発表会見に臨んだSAPジャパン社長の福田譲氏は、「新設する国内2拠点は、SAPがグローバルで展開しているHCPセンターの6、7カ所目となる。日本での事業展開を強化する意欲の表れだ」と強調。「これにより、官公庁や金融機関をはじめ、国外データセンターの利用を制限する(機密データが国外へ出ないようにする)などの厳しいセキュリティポリシーをお持ちの組織でも、HCPを利用していただけるようになる」と説明した(図1)。
SAPがいよいよPaaSに本腰を入れ始めた――。筆者はそんな印象を強く持った。
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