ServerspecとInfratasterは競合製品ではなく、お互いに補完関係にある共生製品である。Serverspecで個別サーバ内部からのホワイトテストを完了した後に、InfratasterでWebサーバやDBサーバなどの機能を外部から確認することで、ブラックボックステストを行うのが理想的な形である。
インストール例にもある通り、テストスクリプトを格納するフォルダさえ分けておけば、同一のサーバ内にインストールすることが可能である。今回は構築完了後のサーバ内部の設定確認がメインであったため、Infratasterの出番が少なかったが、通常行われるリリース後のテストでは、アプリケーションの稼働確認も行われるため、有効なシーンは多いはずである。
特にServerspecは、テスト結果が正常時のログもテキストで出力も行われる。何がチェックされているかも判断できるため、証跡として十分に利用できる。手作業で実施する場合のテストケースとエビデンスのサンプルはこちら。
テスト自動化ツールの導入と、エビデンスのスクリーンショットの廃止には、以下の効果があると考えられる。
従来のコマンド1個1個を手打ちして行う方法と比較すると、テスト実施時間は比較にならないほど短縮される。今回のテストケースの量であれば、どんなに慣れた作業者であっても1時間程度はかかるはずである。それがテスト自動化ツールでは数秒で完了できる。しかもテスト実施のオペレーションミスや作業漏れも発生しないため、手戻りによるロスも発生しない。
テスト自体は初期構築以外にもメンテナンス時にも使用できるため、サーバの台数が多い場合や、保守作業が多い場合の効果も考えると、最初にテストスクリプトを作るコストに十分見合う効果は得られるはずである。
手動でのテスト実行とスクリーンショットを貼る形のテストエビデンスの作成は、残念ながらあまり生産的な行為とは考えられない。日本のIT業界の悪しき伝統として評価している向きもあるようである。
テスト自動化と自動化ツールの出力をエビデンスとして活用することは、前述の通り、コスト面の効果も大きいが、非生産的作業から解放される技術者の精神衛生の面からも良いと考えられる。サーバテスト自動化ツールの初期学習を含めた導入コストはあまり高くない点でも、積極的に導入して業務改善につなげることをお勧めしたい。
森元 敏雄(もりもと としお)
R&D部門である戦略技術センター所属。
金融系の大規模システム開発やプライベートクラウド開発環境の構築・運用の経験を生かし、OSS製品を中心とした技術調査・検証を担当。
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