ガートナージャパンが、「日本企業のデジタルビジネスへの取り組み」に関する調査結果を発表。全社的に取り組む企業が約3割まで増えた一方で、「うまく成果を出せない」企業が多い状況も明らかになった。
ガートナージャパンは2016年11月18日、日本企業のデジタルビジネスへの取り組みに関する調査結果を発表した。「デジタルビシネスへの取り組み」を既に全社的に実施していると答えた企業の割合は、2015年調査時の20.1%から約29.3%と、ここ1年で増加した。同社は、「デジタルビジネスは、本格的に取り組むべき経営テーマであるという理解が広がりつつある。当然、日本企業においても拡大傾向にある」と、今回の調査結果を総括した。
ガートナーでは、デジタルビジネスを「デジタルの世界と物理的な世界の境界を曖昧にすることによって、新しいビジネスデザインを創造すること」と定義。このデジタルビジネスへの取り組み状況は、全社割合の約29.3%と共に、「部署単位ならば既に取り組んでいる」とした割合が今回の調査では約69.7%に高まった。
しかし、「それによって、成果が上がっている」と回答した割合は約24.8%にとどまり、約半数は「(まだ)成果が上がっていない」と回答したことも分かった。
ガートナーはこの現状について、「少なからずデジタルビジネスに取り組む企業が約7割に達した一方で、デジタルビジネスを“戦略”として策定済みの企業は5割未満であり、約2割の企業は戦略のないまま、(思い付きの)戦術的、あるいは機会追求的な考え方でこれに取り組んでいるようだ。また、デジタルビジネス戦略を策定している企業の中でも、IT戦略と連携させている企業はそのうちの3割未満にとどまった。つまりデジタルビジネス戦略が、IT部門の方針や中期計画とは別枠で考えられている状況が浮き彫りになった」と分析する。
なお、デジタルビジネス戦略を検討/実行する際に“促進”される要因には、「経営層のリーダーシップ」と回答した割合が最も多く、約76.4%に上った。次いで、「『攻め』の企業文化」「テクノロジー標準の整備(IoTなど)」「社員の保有するスキル/ノウハウ」が続いた。
一方、デジタルビジネス戦略を検討/実行において“阻害”される要因については、「スキル/ノウハウの不足」(約57%)、「危機意識の欠如」(約55.8%)、「『守り』の企業文化」(約53.3%)を挙げた企業が多く、いずれも半数以上に上った。
この点についてガートナーのリサーチ部門でリサーチディレクターを務める本好宏次氏は、「デジタルビジネスを既に実践している企業にとって、『スキル/ノウハウの不足』は今まさに直面している課題として、また、これから実践する企業にとってはそれが阻害要因として懸念している様子が伺える。この課題を解決するには、外部からの人材登用に加え、内部の人材育成を進め、場合によっては、これまでに付き合いがなかったような新興パートナー企業の力も借りる必要がある。また、異業種にまで視野を広げ、貪欲に先行事例から学ぶという姿勢が一層重要になるだろう」と述べている。
同調査は、2016年8月にインターネットを通じてアンケート形式で実施。有効回答数は165。回答者の多くはIT系の業務に携わるマネジャー層で、ユーザー企業がベンダー企業よりも若干多かった。
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