プライベートクラウドで共通プラットフォーム化を推進。収益・ブランドを加速する日産自動車のIS/IT戦略「VITESSE」の内幕ITでビジネスを変革。デジタル時代のテクノロジリーダーたち(3)(1/4 ページ)

中期経営計画「日産パワー88」とIT戦略の中期計画「VITESSE(ビテッセ)」に平行して取り組み、収益・ブランドを堅調に伸ばし続けている日産自動車。これを支える同社グローバルIT本部の取り組みを、グローバルIT本部 ITインフラサービス部 部長の木附敏氏に詳しく伺った。

» 2015年06月22日 05時00分 公開
[文:斎藤公二/インタビュー・構成:内野宏信/@IT]

 グローバル市場占有率8%、営業利益率8%の達成を目標に、2011年から六カ年の中期経営計画「日産パワー88」を進める日産自動車。インド、中国、ロシア、中東といった新興市場での自動車メーカー間での激しい戦い、伸び悩む欧州経済など、数々の課題がある中で、アライアンスパートナーであるルノー、またダイムラーAGとの協業を軸に、堅調に業績を伸ばし、2015年3月期決算は、グローバル販売台数531万8000台、連結売上高11兆3752億円(営業利益率5.2%)と、目標達成に向けて好調な走りを見せている。

 この日産パワー88と歩調を合わせるように進めているのが、フランス語で"スピード"を意味するIS(情報システム)/IT戦略「VITESSE(ビテッセ)」だ。グループの従業員11万人を1200名超のスタッフでサポートしているグローバルIT本部は、これをどのように“加速”させようとしているのか、グローバルIT本部 ITインフラサービス部 部長 (兼) エンタープライズアーキテクチャー部 部長 木附敏氏にお話を伺った。

システムでいかにビジネスにイノベーションを起こさせるか

編集部 中期経営計画と連動したIT施策を推進していらっしゃいますが、まずは現在の状況を教えていただけますか。

ALT 日産自動車 グローバルIT本部 ITインフラサービス部 部長 (兼) エンタープライズアーキテクチャー部 部長 木附敏氏

木附氏 2011年から中期経営計画「日産パワー88」をスタートさせ、それと平行してIS/IT戦略の中期計画「VITESSE(ビテッセ)」を進めています。VITESSEとは、「Value Innovation」「Technology Simplification」「Service Excellence」の頭文字をとったものです。

 VITESSE以前には「BEST(Business Alignment、Enterprise Architecure、Selective Sourcing、Technology Simplification)プログラム」に取り組んできました。BESTがシステムの効率化やビジネスアラインメント(ビジネスとITの整合)に主眼を置いていたのに対し、VITESSEは「システムでいかにビジネスにイノベーションを起こさせるか」を大きな目標としています。Value Innovationという言葉には、「ビジネス戦略を直接システムが支える」という意味が込められています。

編集部 BESTで守りを固め、VITESSEで攻めのITに転じたわけですね。具体的にはどのように施策を実行しているのですか。

木附氏 日産パワー88の六つの柱にマッピングする形で進めています。六つの柱というのは、「ブランドパワーの強化」「セールスパワーの向上」「クオリティの向上」「ゼロ・エミッションリーダーシップ」「事業の拡大」「コストリーダーシップ」です。

 私が担当しているVITESSEの「Technology Simplification」の場合は、グローバルレベルでアプリケーションとITの共通化を進める「Application Convergence」と「IT Consollidation」という二つの施策を実施しています。これらは日産パワー88の六つの柱のうち、主に「コストリーダーシップ」に貢献する施策という位置付けです。

 一方、VITESSEの「Value Innovation」には、PLM(Product Lifecycle Management)統合、収益/製造原価分析、新工場/事業拡大対応の迅速化、デザインやマーケティング強化といった七つの施策があり、「Service Excellence」ではインドの「ルノー・日産テクノロジー&ビジネスセンター インディア」の活用と、グローバルシステムライフサイクルマネジメントという二つの施策を実施しています。つまり、全ての施策を日産パワー88で定めているビジネスの六本の柱にきちんとマッピングして、各施策をクロスさせながら、ITの力でビジネスの活動をサポートするという体制で取り組みを進めています。

 こうした戦略は、戦略策定に取り組む専門チームと、ビジネスドメインごとに存在するアプリケーション開発部の責任者や、われわれグローバルIT本部の責任者が加わって作っています。日本だけではなく米国、欧州などの同部門も参加しています。中期経営計画は六カ年計画ですが、タイミングを見ながら随時戦略の見直しも行っています。

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