2016年11月に開催された「Connect();」で登場した2つのVisual Studio。これらを簡単に紹介するとともに、その意味合いを探ってみよう。
2016年11月16〜18日(米国時間)、すっかり好例となったマイクロソフトのイベント「Connect(); // 2016」が開催された。2014年にはオープンソースへの方向転換を発表し、2015年にはさらにその方向性を強めていった。本稿では、2016年の「Connect();」イベントで明らかになったマイクロソフトの立ち位置と将来について考察してみよう。
今回の「Connect(); // 2016」(以下、「Connect()」とする)でも非常に多くのアナウンスがあった。中でも筆者の印象に残ったのは以下のものだ。
これら以外にも、Azure上でいわゆる「サーバレスコンピューティング」を実現する「Azure Functions」(ステートレスな単機能の関数のように振る舞うプログラムをマネージドインフラ上でオンデマンドに実行するタイプの新たなサービス)や、VSでのDockerサポート(VS Tools for Docker)、SQL Server on Linux、Azure上でBotを統合的に開発できるAzure Bot Serviceなど、多くの発表があった。
VSに関しては、今回のConnect()では以下のものについてアナウンスがあった。
これまでのVS、VS Code、VS Team Servicesの3つに加えて、今回新たに発表されたVS for Mac、VS Mobile Centerの2つが加わって、VSファミリーは5つの製品ラインで構成されるようになる。
上の画像を見ると分かる通り、「VSファミリー+Azure」がこれからのマイクロソフトの主要な開発プラットフォームとなる(VS for Linuxが登場することがあれば、全方位でVSが猛威を振るうことになるだろう)。
VS 2017は、本フォーラムの読者の皆さんが日常的に使っているであろうVSの最新バージョンだ(現在はRC=リリース候補段階)。インストーラーからIDE(統合開発環境)まで、至るところで機能が強化されている。
VS for Macは、開催前に情報が漏れてしまったことから盛り上がりが薄れた感もあるが、今回のConnect()における目玉的な存在だ(った)。既にVS CodeがMac上でも動作していたとはいえ、これはあくまでもコードエディタであって、マイクロソフトが統合開発環境としての「Visual Studio」をMacに導入することには大きなインパクトがある。
VS Mobile Centerは、モバイルアプリ開発に必要な作業をワンストップで行える「管制センター」だ。Swift/Objective-C、Java、Xamarinなどで作られたiOS/Androidアプリのライフサイクル管理を行い、モバイルアプリの継続的な開発を強く支援するためのものだ。
本稿では、このうちのVS 2017とVS for Macについて簡単に見ていこう。
VS 2017(現在はRC段階)は「オリジナルVS」の最新バージョンだ。その特徴は「高速化」にある。まず、インストーラーが刷新され、開発者が必要とするものだけを高速にインストールできるようになった。
新インストーラーでは、開発者が行う作業が「ワークロード」に分類され、自分が必要とするワークロードだけを選択的にインストールできるようになる。ワークロードを何も指定しない最小構成ではインストールサイズは1GBを下回るほど、ディスクスペースに対するインパクトは減少している(もちろん、フルインストールをすれば、それなりの容量が必要になる)。
以下はVS 2017の起動画面だ。起動画面の中央下部には[プロジェクト テンプレートの検索]ボックスがあり、ここにキーワードを入力すると、マッチするプロジェクトテンプレートが表示される。メニューバーの[ファイル]−[新規作成]−[プロジェクト]を選択する際に、マウスカーソルが上か下にずれて項目が消えてイライラする人も多かったはずだが、今度からはこの検索ボックス(とその下の[その他のプロジェクトテンプレート])を利用すればマウス操作でイラつく頻度が減るはずだ。
VS 2017ではソリューションの読み込み時間も高速化されている。ソリューション/プロジェクトの読み込みが完了する前からファイルの編集を可能にしている。これによって、開発者の体感速度は向上するはずだ。
操作環境としての高速性が追求された他にも、IDEレベルでのリファクタリング機能の強化や、例外情報に簡単にアクセスできる新しい例外ヘルパー、デバッグ機能の強化など、その機能強化点は数え上げられないほどたくさんある。概要についてはVisual Studio 2017 RCのリリースノートなどを参照してほしい。本フォーラムでも、別途、特集記事をお届けする予定だ。
次ページではVS for Macと今回のConnect()イベントの意味合いについて簡単に見ていこう。
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