では、裁判例を見てみよう。せっかく役割分担表を作って両者の作業分担を明確にしたのに、「やってくれる約束だ」「いや。それはそちらの責任だ」と角を突き合わせる形になってしまった例だ。
あるユーザー企業(以降、ユーザー)が基幹情報システムの刷新を計画し、パッケージソフトによる開発をベンダーに依頼した。開発は順次進み、ユーザーはベンダーに対して「納入受領書」「検収通知書」を交付した。
ところがこの「システムテスト」が難航して、本稼働は1年延期となった。ユーザーはいったん検収はしたものの、「システムテストと本番リハーサルが終わらないうちは、ベンダーの支援作業も完了したとはいえない」と考え、ベンダーへの支払いを停止した。
しかしベンダーは、「システムテストや本番リハーサルはユーザーの作業であり、自分たちの仕事は完成した」として費用の支払いを求め、両者はこの点を巡って裁判で争うこととなった。
もう少し詳しく内容を見てみると、問題になったのは主にシステムテストだった。役割分担表には、この工程の「主担当」をユーザー、「支援」をベンダーが行うことになっていた。この「支援」の意味合いが問題になったのだ。
ベンダーにとってシステムテストでの自分たちの役割は、合わせて3日間の「問い合わせ対応」のみであり、役割分担表の備考欄にもそう記していた。
しかしユーザーは、支援とは「テストの完了まで自分たちに付き合ってくれること」であると考えていた。テストを支援するというからには、それが終わるまでベンダーの作業は完了せず、プロジェクトが頓挫してしまったからにはベンダーに費用は払えないという理屈だ。
裁判所の判断は、どうだったのだろうか。
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