アクセンチュアが技術トレンドに関する年次調査レポートを発表。今後3年間で「“人”による“人のため”のテクノロジー」の出現を予測し、今後のビジネスに不可欠とされる5つのテクノロジートレンドを定義した。
米アクセンチュアは2017年1月27日、世界的なテクノロジートレンドに関する年次調査レポート「Accenture Technology Vision 2017」を発表。今後3年間で“人”のニーズを予測して、各個人のニーズに合わせた体験を提供するために必要となる、「“人”による“人”のためのテクノロジー」が出現し、発展すると予測した。
アクセンチュアは今回のレポート作成に当たり、31カ国、16の業界に渡る企業、組織の上級役職者、IT担当役員5400人以上を対象に調査を実施。その結果、回答者の約86%が「個々のテクノロジーが急速に進化する中で、複数のテクノロジーが相乗効果を発揮することによって画期的なイノベーションが生み出されている」と回答したという。
具体的には、今後のビジネスの躍進に不可欠な5つの新たなテクノロジートレンドとして、「新しいユーザーインタフェースとしてのAI(Artificial Intelligence:人工知能)」「“人”のためのデザイン」「無限の可能性を持つエコシステム」「人材のマーケットプレース」「未踏の領域への発展」を挙げた。
AIは、「企業にとってのデジタルスポークスマンになりつつある」と予測される。高度な検索や分析などを担うバックエンドのツールとしてだけではなく、自動運転や機械学習に基づくリアルタイム翻訳など、AIは、人とインタラクティブなコミュニケーションを取るインタフェースとしての可能性が広がっている。このことからAIは、企業のデジタルブランドの顔としての役割を担い、経営レベルの投資や戦略が求められるコアコンピテンシーになるとされる。
“人”のためのデザインとは、「テクノロジーが人に合わせて適応すること」を意味する。機械が各個人の行動に応じて、まるで人間のように思考する仕組みにより、デジタル体験の新境地が切り開かれるとしている。
今後のエコシステムについては、「複数のサービスを一元的に提供するプラットフォーム企業の出現により、従来の企業間競争のルールが完全に崩壊する。今後求められるのは、リッチで強固なエコシステムだ」と同社は説明する。今回の調査では、「デジタルエコシステムによって、組織の価値の創出方法が変革されつつある」と答えた企業は約27%に上った。
人材のマーケットプレースについても同様に、「フリーランスワーカーの活用を今後1年間で拡大させる予定がある」と回答した企業が85%に上った。従来型の組織的ヒエラルキー構造から脱却し、企業はオープンな人材マーケットを活用する方向へ舵を切り始めているという。
最後に、ITエコシステムが鍵を握る今後のデジタル時代で成長していくために、企業はこれまでの既得権益に縛られない、未踏の領域を探る必要がある。つまり、これまでとは違う新たな産業のためのルールや、業界標準の確立などを考えていくべきだと提言した。今回の調査で、「まだ誰も明確に定義していない、“デジタルをテコにした新たな産業”に参入しようとしている」と回答した企業の割合は実に74%に上っている。
「AI、IoT、ビッグデータ、アナリティクスなど、“人”を中心に考えてデザインされたテクノロジーは、企業に利益をもたらす。先進的な企業は、既にこうしたテクノロジーによって、製品やサービスを単に提供する事業だけではなく、企業のパートナーへと進化しつつある。今後3年間で、従業員や顧客を含めた“人”との関係性をより深化させることに注力する動きは一層加速するだろう」(アクセンチュア)
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