デルとEMCの日本法人は2017年2月1日、共同でプレスおよびアナリストに対し、両社の統合について説明した。豊富な製品群と大規模な組織以外に、2社が統合で得るものとは何なのだろうか。
デルとEMCの日本法人は2017年2月1日、共同でプレスおよびアナリストに対し、両社の統合について説明した。
デルとEMCは、本社レベルでは統合が2016年9月に完了した。日本では、機能面での統合は完了したが、法人としては当面別個のままで、いつ統合されるかは未定。デル 代表取締役社長の平手智行氏によると、米国以外は全て日本と同様だという。
具体的には、売り上げおよび利益の管理、インセンティブや人事制度の統一を図った。会計年度はDell Technologiesに合わせ、2月開始に変更とした。管理部門、マーケティング部門などの機能は統合。パートナー事業部など、両社における重複があった他の機能についても、2月1日までに全て1つのチームとなったという。一方、両社の販売パートナー制度については統合を発表済み。
平手氏は、その上で「法人としてはそれぞれに管掌領域があり、(当面は)両社で担当を分け合う」と説明し、下のスライドを示した。このスライドを見る限り、顧客が何をどちらに頼むのかがはっきりしないケースを想定できなくもない。
そこで両社に確認したところ、両社とも実質的には全ての製品・サービスを販売できるという。また、法人顧客について、デルの担当に「大手法人」と記されている一方、EMCジャパンの担当に「業種別大手法人」「グローバル企業」とあり、重複しているように見える点に関しては、従来の取引関係を継続してもらえばいいとしている。
法人としての統合は別として、デルとEMCの日本法人は、世界的には従業員10万人、年間売上740億ドルのIT業界最大手企業の一部になった。では、豊富な製品群と大規模な組織以外に、2社が統合で得るものとは何か。
EMCジャパン代表取締役社長の大塚俊彦氏に、「組織が肥大化して機動的な動きができなくなってくると考える顧客もいるのではないか」と聞くと、同氏はこれを否定し、これまでのEMCと比べて組織は確実にフラット化したと話した。従来は製品ライン単位での事業部があったが、これがなくなり、インフラ製品群は単一の事業本部に属することになった。また、Virtustreamなどについては、ある程度独立して判断ができるようになっている。
機能統合された両社の今後の戦略について、大塚氏は、「エンドツーエンドの製品ラインアップ完成とカバーする市場の大幅な拡大」「コンサルティング強化」「システムインテグレーターとのパートナーシップ強化」「サービスプロバイダーとの戦略的な協業」「先進企業との共同ソリューション開発」を挙げた。
コンサルティングは大きく分けて、「ハイブリッドクラウドを含むITインフラ関連」「新しいアプリケーション開発などのデジタルトランスフォーメーション」の2本柱で推進するという。
また、ソリューションとしての製品・サービス提供は当然強化していくという。では、例えば平手氏がデル代表取締役社長就任時に注力分野の1つと話していたIoTについてはどうか。Pivotal、ヴイエムウェア(AirWatchなど)を含めても、IoTのプロセスを構築するための全ての要素を製品として持っているとはいえない。これについて聞くと、平手氏は、システムインテグレーターとの関係が特に重要で、協力してソリューションを構築していきたいと答えた。
では、製品面では今後どのような動きが考えられるのか。デルに所属し、機能統合されたインフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部の本部長を務める松本光吉氏は、「大まかにいえば、デルのハードウェアにEMCのソフトウェアを載せる動きが進む」と話す。すでにハイパーコンバージドインフラ(HCI)の「Dell EMC VxRail」では、デルのPowerEdgeが採用されている。EMCがサーバを使って提供している他の製品についても、同様にデルのサーバの利用が進むことになる。
さらに、ストレージの世界における顕在的および潜在的なSoftware Defined Storage化が進むにつれ、カスタムハードウェアでなくデルのサーバを使うケースがさらに増えてくるだろうという。
デルとEMCのストレージ製品群に、現在のところ統合や再編の動きはないが、今や全ストレージ製品が単一の事業本部に属し、開発予算も統合されている。この点からすれば、確実に、製品の新陳代謝を進めやすくなっている。
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