あの“津崎さん”も保有する難関資格「データベーススペシャリスト」。本企画では、データベーススペシャリスト試験 午前/午後試験対策のための「基礎知識」を抜粋してお届けします。今回は、「SQLにおけるカーソルの基礎」を解説します。
書籍の中から有用な技術情報をピックアップして紹介する本シリーズ。今回は、秀和システム発行の書籍ポケットスタディ データベーススペシャリスト [第2版](2015年12月22日発行)』からの抜粋です。
ご注意:本稿は、著者及び出版社の許可を得て、そのまま転載したものです。このため用字用語の統一ルールなどは@ITのそれとは一致しません。あらかじめご了承ください。
※編集部注:前回記事「SQLで「ロール作成と付与」を行う」はこちら
出題頻度 午前II:●●- 午後I:●-- 午後II:●--
●--:過去14年間での過去問出題数が1〜9回
●●-:過去14年間での過去問出題数が10〜19回
●●●:過去14年間での過去問出題数が20回以上
●カーソルを利用した処理の流れ、DECLARE、OPEN、FETCH、WHERE CURRENT OF 〜、CLOSE
これまで説明したSQL文では、データを更新する際にUPDATE文を利用し、その中でWHERE句に条件を設定し、この条件に該当するデータを一括更新するというものでした。
カーソルを利用した処理では、まずカーソル(最初に取り出すSELECT文)を定義し、取り出した表についてループ処理で1行ずつ条件を判定し、条件に応じてデータを更新することができます。
カーソルを利用した処理の全体像は以下の通りです。午前問題では「DECLARE カーソル名 CURSOR FOR」や「WHERE CURRENT OFカーソル名」の穴埋めをさせる問題が非常によく出題されます。
<1>カーソルの宣言 | DECLARE カーソル名 CURSOR FOR (SELECT 文) |
---|---|
<2>カーソルを開く | OPEN カーソル名 |
<3>データの取得 | FETCH NEXT FROM カーソル名 INTO 変数リスト |
<4>ループ処理の実行 | WHILE 条件式 BEGIN 〜処理内容〜 WHERE CURRENT OF カーソル名 END |
<5>カーソルを閉じる | CLOSE カーソル名 |
<1>カーソルの宣言
最初に、処理対象のデータ抽出するSELECT文を指定します。ここではカーソル“csr”を定義すると同時にSELECT文を割り当てています。
DECLARE csr CURSOR FOR SELECT 物品名, 在庫数, 基準在庫数, 緊急発注数 FROM 在庫
<2>カーソルを開く
次にカーソルを開きます。割り当てたSELECT文が実行されます。
OPEN csr
<3>データの取得
SELECT文が実行した結果の表からデータを1行取得し、変数リスト(ここでは物品名、在庫数、基準在庫数、緊急発注数という4つの変数)にデータを代入します。変数リストに代入することで、条件分岐の判定などに利用できるようになります。
FETCH NEXT FROM csr INTO :物品名, :在庫数, :基準在庫数, :緊急発注数
データベース分野では、データを1行ずつ取得することを「FETCHする」といいます。「FETCH NEXT FROM カーソル名 INTO 変数リスト」は、英語の意味通り「次の行のデータを取得する」という意味ですが、最初の1回目に限り「1行目のデータを取得する」という意味になります。
<4>ループ処理の実行
ここで出てくるFETCH_STATUSはグローバル変数(明示的に定義しなくても自動的に定義されている変数)であり、最後に実行したFETCH文の結果(行を取り出せた:0、失敗した:1、取り出すデータがなかった:2)が格納されます。よって、ループ条件の「:FETCH_STATUS = 0」は「データが取り出せた場合」という意味になります(これは決まり文句です)。
UPDATE文には、「WHERE CURRENT OF カーソル名」という条件がありますが、これは「FETCHした行について(実行する)」という意味になります。
最後に、次の行のデータをFETCHし、ループ内の処理が終わります。
WHILE :FETCH_STATUS = 0 BEGIN UPDATE 納品物一覧 SET :緊急発注数=:基準在庫数-:在庫数 WHERE CURRENT OF csr FETCH NEXT FROM csr INTO :物品名, :在庫数, :基準在庫数, :緊急発注数 END
<5>カーソルを閉じる
ループ処理が終了した後、カーソルを閉じて処理は終了します。
CLOSE csr
前述した「<1>カーソルの宣言」を行うSELECT文の最後に「FOR UPDATE OF テーブル名」を付与すると、カーソルが指定するSELECT文を実行した状態で、該当のテーブルが他のSQL文によって更新されないようにロックをかけることができます。
例えば、SELECT文の実行結果いかんによって、UPDATEするかどうか条件分岐したい場合があったとします。並行して同時に複数の処理を実行させることを想定したとき、SELECT文の実行結果により条件判定した直後、UPDATE処理を行う前に、別の処理によりデータが変わってしまうと、本来UPDATEしないはずの処理でUPDATEしてしまう可能性があります。これを防ぐにはロックをかけ、トランザクションの独立性を保つ必要があります。
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