APIマネジメントの世界で急速に成長する、Kongという存在共同創業者でCEOのMarietti氏に聞いた(1/2 ページ)

買収の続くAPIマネジメントの世界において、オープンソースかつ独立企業として注目を集めつつあるのがMashapeだ。2015年にオープンソース化した「Kong」は、200万以上ダウンロードされたという。CEOのAugusto Marietti氏に、同社の戦略を聞いた。

» 2017年04月27日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

 APIマネジメントの世界における新たなプレイヤーとして注目を集めつつあるのがMashapeだ。当初はAPIマーケットプレイスを運用していたが、その運用に使ってきた技術を「Kong」と名付け、2015年にオープンソース化。以来、200万以上のダウンロードがあったという。APIマネジメントの主要ベンダーが次々に買収された後では、オープンソースかつ独立企業というだけでも目立つ存在となっている。

 2017年3月には、Nicira創業者で米ヴイエムウェアのネットワーク&セキュリティビジネス部門ゼネラルマネージャを務め、2016年にAndreessen HorowitzのジェネラルパートナーとなったMartin Casado(マーティン・カサド)氏がリードし、複数のベンチャーキャピタルから1800万ドルのシリーズBファンディングを獲得している。

 まだ20代半ばの共同創業者兼CEO、Augusto Marietti(アウグスト・マリエッティ)氏に、Mashapeのビジョンと戦略について聞いた。なお、「Mashape」は間もなく社名を「Kong」に変える。

オープンソースのビジネスモデルは実証されつつある

――Martin Casado(マーティン・カサド)氏が担当してAndreessen Horowitzなどから出資を受けたそうですね。Casado氏はAndreessen Horowitzのジェネラルパートナーとなる直前、これからのITスタートアップ企業がオープンソースをベースとしていくことの重要性を語りながらも、オープンソースでビジネスを築いていくのは簡単ではないと話していました。彼はなぜあなたの会社に出資したいと思ったのでしょう?

Marietti氏 Kongはオープンソースをベースとしながら、エンタープライズ顧客を増やしており、実績は数字が示しています。Martinとの関連でいうと、(Casado氏の創業した)NiciraとKongの間には、多くの共通点があります。どちらも接続とセキュリティの確保を行い、航空管制官のようにやり取りをコントロールします。Niciraはネットワークレベルで、KongはAPIレベルでこれを行っています。

 市場に関しては、第1世代のAPIマネジメントはパブリックなAPIを管理するために生まれました。今起ころうとしているのは、企業内におけるアプリケーションのマイクロサービス化です。従来型のモノリシックな(一体型の)アプリケーションが複数のコンポーネントに分割され、APIで相互にやり取りする世界が広がりつつあります。これは、パブリックAPIよりも価値の高く、市場としても大きな部分です。この市場において、Kongはメジャーなプレイヤーになっています。

 オープンソースは、確かにマネタイズの難しさがあります。ですが、2017年にはオープンソース企業の3〜5社が米国で株式を公開します。2014年にはHortonworksがありましたが、今年はMuleSoftの次にClouderaが上場予定で、Elasticsearch、Datastax、MongoDBなども上場を考えています。過去20年近く、レッドハットの後にオープンソースの上場例はありませんでしたが、ビジネスモデルが確立し始めていて、大きな企業を築ける可能性が高まってきました。

――Casado氏の例を挙げてもう1つ聞きますが、最終的にNicira、つまりVMware NSXが成功した理由の1つは、SDN(Software Defined Networking)の技術そのものを八方美人的に打ち出すのではなく、ヴイエムウェアの安定した企業顧客に焦点を定め、その課題を解決するような製品として訴求できたことにあると思います。同様に、Kongについても、どこか明確なユーザーベースを持つ企業と特別に連携していこうという考えはないのですか?

Mashape CEOのAugusto Marietti氏

Marietti氏 私たちが対象としているのは、スタートアップ企業ではなく、Global 5000の企業です。大規模なAPIプロジェクトやトランスフォーメーションに関わろうとしています。

 ビジョンとして掲げているのは、レガシーシステムのためのESB(Enterprise Service Bus)やオブジェクトブローカーの役割を、マイクロサービス時代に果たすような製品の提供です。私たちは、クラウド時代のTIBCOやBEAシステムズのような企業になろうとしています。

 従って、できるだけ多くの企業内APIトラフィックをプロキシすることに注力しています。企業アプリケーションのHTTPレイヤーをコントロールできれば、バリューチェーンの交差点になり、この上に付加価値を提供していくことができます。とにかく大企業に、オープンソース版をできるだけ多く活用してもらうことが、私たちにとって重要です。

 現在のところ、Kongのオープンソース版は、2年弱の間に日本で10万、全世界では200万のダウンロードを達成しました。そして月間15万のインスタンスが実際に稼働しています。ダウンロード数は毎月20%伸びています。この、オープンソース版の伸びが今は大切です。企業に対して積極的に売り込むことで、早く売り上げを手にすることはできます。しかし、オープンソース版の採用が減速すれば、2年後にはビジネスが立ちいかなくなるでしょう。「どこでも使われている」という状況にさえなれば、そこからマネタイズできるのです。

――コンテナベースの開発プラットフォームとの関連では、どのようにKongを位置付けていますか?

Marietti氏 まずITの世界では、VMware vSphereのような製品が土台の役割を果たしています。コンテナオーケストレーションのMesosphereとKubernetesは、それぞれ企業と開発者に価値を提供しています。Kongはアプリケーションレイヤーなので、コンテナの世界よりもかなり高いところに位置しています。コンテナの世界ではさまざまな混乱が生じていますが、あまり影響はありません。私たちは、最終的な価値を発揮するためには、土台のレイヤーか、非常に高いレイヤーにいるべきだと考えています。

――しかし、(APIマネジメント開発企業の)3scaleを買収したレッドハットは、コンテナオーケストレーションからミドルウェア、APIマネジメントを統合的に提供できるメリットを打ち出しています。

Marietti氏 OpenShiftのユーザーなら、3scaleをアドオンとして採用することもあるでしょう。しかし、APIマネジメントの市場機会は膨大ですので、レッドハットの存在が障害になるとは思っていません。私たちにとって問題となり得るのは、技術変化によって、APIマネジメントが意味を失うことです。その兆候は、今のところありません。

 現在はコンテナ分野で活発な投資が行われていますが、サーバレスコンピューティングという新しい波が生まれています。サーバレスの世界では、ユーザーはコンテナ管理に関わる面倒をスキップできます。コンテナオーケストレーション製品間の違いは意味をなさなくなるかもしれません。ですから、サーバレスはコンテナにとって脅威となります。

 APIマネジメントにとってはいい動きだといえます。サーバレスはAPI群ともいえます。Kongはこれらを管理し、セキュリティを高められます。

 市場を見渡すと、主要なAPIマネジメントベンダー7、8社は全て買収されました。上場企業に買収されると、イノベーションは鈍化するのが常です。四半期ごとに成果も求められます。私たちのような独立した存在が、誰も効果的な形で対応しようとしていないマイクロサービスの世界に切り込んでいこうとしています。パブリックAPIにフォーカスした従来型のAPIマネジメントは、Kongのような新しい技術と、Amazon Web Servicesなどのようなクラウドサービスとの間で、厳しい状況に陥る可能性があります。

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