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» 2017年06月07日 05時00分 公開

今の仕事が自動化されたとき、われわれはどう生き残るのか?――IBM Watson Summit Tokyo レポートほとんどの仕事は、じきに自動化される(2/2 ページ)

[斎藤公二/@IT]
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ディスラプターは仕事を奪うのか

 野口氏は、ブロックチェーンやAIに代表される自動処理の技術は、「人の仕事を奪うという意味でのディスラプターになる可能性がある」ことを指摘する。その上で、野口氏は次のように強調した。

 「重要なことは、われわれの仕事が全てなくなるのではなく、ブロックチェーンやAI、スマートコントラクト(取引の自動化)によって、価値が上がる仕事が必ず存在するということです。では、そういった仕事はいったい何か。それを探していくことがわれわれの課題です」

 これに対し、楢崎氏も「保険業のほとんどの作業はルーチンワークです。保険の査定や更新、サービスの提供、更新のためのマーケティングなど、基本的には同じことの繰り返しです。フロントエンドがそうですから、それをつかさどる内部のプロセスもルーチンワークだとも言えます。つまり、われわれ自身も失業の危機に瀕している。うかうかしていられない状況です」と述べ、現状にとどまることなく、企業としての価値を探索し、確実に担保するための取り組みを主体的に進めることの重要性を訴えた。

 一方、野口氏はブロックチェーンの課題として「規制ができないこと」を挙げた。ブロックチェーンは多数のコンピュータによる分散処理であり、管理者がいない。そのため、当局が「規制が必要」と考えた場合でも、規制できなくなるリスクがあるという。

 「このことは、従来の社会の法的な仕組みと、ブロックチェーンの仕組みがうまく適合していないことを明確に示しています。技術的な課題ももちろんありますが、それだけではなく、法的な規制をどうするか、今後考えていく必要があります」(野口氏)

 野口氏は、ブロックチェーンが企業経営に与える影響にも触れた。組織が大規模化していくと、ルーチンワークが増えていき、人間が組織全体のことを把握できなくなる。実際、企業経営が社会問題化したケースなどを見ていると、人の手に負えないことをコントロールしようとして経営が行き詰った例が散見されるという。

 「そうしたルーチンワークをブロックチェーンやスマートコントラクトなどで置き換えていく。そうすると、大きな組織ではコンピュータの方がうまく経営できるという場合すら発生するでしょう。その中で、人間にしかできない仕事を探していくことが重要なのです」(野口氏)

ディスラプターの条件とは

 ディスカッションのテーマともなっているディスラプターの条件については、シリコンバレーで11年間ビジネスを行っていた楢崎氏は「技術ありきで考えないこと」と主張した。

 「学んだことの1つに、『治療法が病気を探してはいけない』というものがあります。ソリューションを提供して問題を見つけるのではなく、問題を見つけて、それに対するソリューションを提供することが大事ということです。まずは問題を探す。何に困っていて、何が足りないのか、それに対してどんな解決策があるのか――そうした流れで取り組んでいくことが重要です」(楢崎氏)

 スタンフォード大学客員教授として1年間、シリコンバレーのカルチャーに触れた野口氏もこれに同意した上で、「変化にうまく対応することが大事です」と指摘。「シリコンバレーのカルチャーは、20世紀の産業社会の変化をうまく乗り越えることで発展したもの。変革を成功させて、その後の社会をリードしていった。日本の課題はそうした変化への対応を行う変革が実現できるかどうかです」と述べた。

 イノベーションというとテクノロジーの側面にばかり目が行きがちだが、UberやAirbnbの成功にはテクノロジー面でのイノベーションは見られない。スマートフォンや位置情報といった既存の技術をうまく組み合わせただけだ。野口氏はこの点について、「Uberの重要性は、タクシーや運転手といったマーケットの情報をクリアにしたこと。また、免許を含めた社会的な制度に影響を与えたことです。逆に言えば、新しいテクノロジーを活用すれば、もっとイノベーティブになるということです」とコメント。

 楢崎氏も、「イノベーションを技術革新と捉えるのではなく、技術以外のことにも目を向けることが大切だと思います。いい意味での『もうけたい、成功したい』といった欲を持ち、フェイルファースト、フェイルメニーで取り組んでいくことを心掛けています」と話した。

ALT 日本企業のイノベーション促進をあらゆる形で支援している日本IBM

 最後に久世氏は、日本IBMもオープンイノベーションの取り組みを実践するなど、自らイノベーションを推進しながら、ブロックチェーンアプリケーションなどの設計・開発を支援するサービス「IBM Garage」を提供するなど、イノベーターの支援にも注力していることを力説。「日本企業が日本企業ならではの良さや強みを生かし、世界をリードするイノベーターになっていければいい」と聴衆にエールを贈った。

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