APIエコノミー実現に欠かせない10のポイントGartner Insights Pickup(24)

APIを単なる技術的ツールとしてではなく、自社のビジネスモデルやデジタル戦略の基盤として活用するため、CIOやCDOは、10のキーポイントを考慮する必要がある。

» 2017年07月07日 05時00分 公開
[Christy Pettey, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 APIは人、ビジネス、モノを結び、デジタル社会やデジタルビジネスを支えている。新しいデジタル製品やビジネスモデルを実現し、新しいビジネスチャンネルを生み出している。

 「われわれが構築しているデジタル社会では、仮想世界と物理世界が融合しており、全ての人と全てのモノがつながっている。われわれの生活には既にAPIエコノミーが浸透している。CIOはAPIを単なる技術的ツールとしてではなく、自社のビジネスモデル、デジタル戦略、エコシステムの構築基盤として活用しなければならない」。Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるパオロ・マリンバーノ氏はそう語る。

 CIOやCDO(最高デジタル責任者)は、10のキーポイントを念頭に置く必要がある。

1. (デジタル)戦略がAPIプログラムを左右する

 大手デジタル企業は主に、デジタル展開におけるビジネス上の優先順位に沿ってAPIを作成し、APIの利用の在り方を方向付けられるように、APIポートフォリオを管理している。

2. APIを利用するアプリケーションに合わせてAPIエクスペリエンスを構築する

 APIはエンドユーザーによってではなく、アプリケーションによって利用される。だが、APIのユーザーエクスペリエンスは、エンドユーザーアプリケーションの場合と同じくらい重要だ。APIを利用するアプリケーションのさまざまな要件に、APIを適合させることが重要だ。

3. ハッカソンを活用する。ただし、限界も理解する

 ハッカソンは、APIプログラムを活性化させる方法として優れている。だが、ハッカソンをその場限りのイベントとして扱ってしまうと、長期的なデジタルトランスフォーメーションの効果はほとんどない。適切に実施すれば、ハッカソンは話題を呼び、文化を変えてイノベーションを触発し、新たなパートナーやエコシステムを後押しし、人材を引きつけ、また引き留める。だが、そのためには準備が肝心だ。

4. 作っても、使ってもらえない恐れもある

 いかに優れたAPIを作成しても、それを必要とする開発者に届かなければ出番がない。CIOとCDOが従うべきシンプルなルールは、利用が見込めるAPIだけを作成することだ。さもないとAPIが利用されず、リソースの浪費になってしまう恐れがある。

5. API呼び出しに対する課金は、収益化の方法のごく一部にすぎない

 現在のAPIエコノミーにおいては、APIによって生み出される価値の大部分は、API呼び出しに直接課金することで得られているわけではない。大部分の価値は、APIや、APIを利用するアプリケーション構造によって作られる、ビジネス機会によって実現される。

6. APIはバイモーダルを可能にし、バイモーダルはAPIを必要とする

 バイモーダルは、別々でありながら一貫性のある2つのワークスタイルを管理するプラクティスだ。ワークスタイルの1つは、予測可能性が高い状況に主に関わっており(モード1)、もう1つは、探求を行う必要がある(モード2)。APIを利用した売上高の拡大や新規顧客の獲得、パートナーと消費者のための価値創造を実現するために、企業はバイモーダルでなければならない。

7. APIはデータとアプリケーションの入り口:セキュリティが重要

 APIはデジタルビジネスを支えているため、デジタルリスクを管理するにはAPIのセキュリティを確保することが不可欠だ。APIセキュリティ戦略は、開発者からオペレーションスタッフ、セキュリティおよびコンプライアンスチームまで、全てのステークホルダーが関与して策定する必要がある。

8. 独自のAPI管理を行わない

 独自のAPI管理プラットフォームを構築しても差別化にはつながらない。差別化をもたらすのは、あなたの会社が開発者エコシステムに公開するAPIと、あなたの会社のビジネス上のメリットとなるようなアプリケーション構造を、開発者に実現させようという動機からだ。確立されている既存のAPI管理プラットフォームを使えば、時間の節約や複雑さの軽減が可能になり、それによってビジネス目標を支援するAPIプログラムの実施のために、空いたリソースを振り分けられる。

9. モダンなアプリケーションアーキテクチャはAPIに依存する

 開発者が新しいアプリケーションやクラウドサービス、IoTデバイスについて最初にする質問は、「そのAPIはどのようなものか」だ。APIは、今やアプリケーションアーキテクチャの中心となっている。疎結合統合を可能にするとともに、モバイルアプリケーションや多くのIoTデバイスのためのデータコンジット(データの導管)となるからだ。

10. APIを利用する方がAPIをエクスポーズするよりも一般的

 平均的な企業では、提供するAPIよりも利用するAPIの方が多くなる。ほとんどの企業でAPIはさまざまな部門で利用され、多くの場合、経営幹部やCIOはその利用状況が直接は分からない。外部APIの利用状況を把握する第一歩は、全社で利用しているAPIを網羅したカタログを作成することだ。

出典:10 Steps to the API Economy(Smarter with Gartner)

筆者  Christy Pettey

Director, Public Relations


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