NTTドコモ、キッザニアに携帯電話ショップ接客ロボットのプログラミング体験施設をオープン「分岐やGotoは難しかったけど楽しい」

NTTドコモは2017年7月7日、東京・豊洲のキッザニア東京に「ロボット研究開発センター」パビリオンをオープンした。関西のキッザニア甲子園では2017年7月10日にオープンする。

» 2017年07月07日 20時15分 公開
[丸山隆平@IT]

 NTTドコモは2017年7月7日、東京・豊洲のキッザニア東京に「ロボット研究開発センター」パビリオンをオープンした。関西のキッザニア甲子園では2017年7月10日にオープンする。

 「キッザニア」は、現実世界と比べて約3分の2サイズの街並みと、実在する企業がスポンサーとなった約60のパビリオンを持つ施設。子どもがその中で約100種類の職業を体験したり、消費者としてサービスを受けたりする社会体験を学べる。

 NTTドコモは、これまでキッザニアで携帯電話ショップの貸し出しサービスのお仕事体験パビリオンを提供していたが、ロボットプログラミング体験施設として、リニューアルオープンする。

動画 「ロボット研究開発センター」パビリオンの様子。プログラミングされたロボットがQRコードを読み込んだり、会話の受け答えをしたりしている様子(※クリックすると動画が再生されます。音声もあるので、注意してください)

 NTTドコモは2017年4月に発表した中期戦略2020「beyond宣言」の中で「ワークスタイル革新」や「安心快適サポート」に「人工知能(AI)」を活用していくことを掲げている。

NTTドコモ プロモーション部 第一コミュニケーション担当課長 小野浩司氏

 「NTTドコモのAI技術による『体感革新』を、未来を担う子どもたちへの学びの機会として提供するものです。さまざまなコミュニケーションの場におけるITの活用を考えることで、子どもたちに研究開発への興味関心を促すことを目指します」(NTTドコモ プロモーション部 第一コミュニケーション担当課長 小野浩司氏)

 なお、今回のリニューアルの背景には、2020年度、小学校でプログラミング教育が必修となることや、男子中学生を対象としたソニー生命保険によるアンケート調査「将来なりたい職業」で、プログラマーが第1位になったことなどもあるという。

子どもが接客ロボットをプログラミング

 ロボットプログラミング体験システムは、電算システムが受託開発したもの。ヴイストンのコミュニケーションロボット「Sota」とNTTドコモの「しゃべってコンシェルジュ」で培った自然言語処理技術を発展させた対話型AI技術「自然対話エンジン」、音声認識技術、タブレットで動くブロックプログラミングアプリで構成されている。

システム構成(電算システムのニュースリース(PDF)から引用)

 キッザニアの「ロボット研究開発センター」には「受付」と「窓口」に2台のロボットとタブレット端末が設置されている。

Sotaとタブレット端末、プログラミングの仕方をまとめた紙「開発指示書」が机に置かれている

 「ロボットプログラマー」として、6人の子どもが「受付ロボット」チームと「窓口ロボット」チームに3人ずつに分かれ、携帯電話ショップでの接客業務を想定して、ロボットの動作や発言内容をプログラミングする。

 最初に、白衣のユニフォームを着て、ロボットの動きや発言をどのようにするかの業務フローを検討する。

キッザニアのスタッフが、これから何をやるかを説明するところ
プログラミングを行う前に、「ロボット研究開発センター」内にあるホワイトボードで業務フローを検討する(左が「受付」、右が「窓口」の業務フロー)。ロボットへの命令1つ1つを表現した「ブロック」はマグネットになっており、貼り替えたり、穴埋めしたりすることも可能。左の「Start」から右の「Goal」に処理が順番に進むイメージ。一番上が全体の大まかな流れ(「あいさつ」→「自己紹介」→……→「最終確認」ブロック)が1列で表現されている。その下には、「あいさつ」「自己紹介」……「最終確認」ブロック内それぞれの細かい命令ブロックの流れが表現されている

 次に、タブレットの専用アプリを使って、業務フローに合ったプログラミングを行う。

子どもが実際に専用プログラミングアプリを使っている様子

 最後に、ロボットを動作させるプレゼンテーションを行う。体験した子どもは、成果物として作成したプログラミング結果と、ロボットと記念撮影した写真入りのプログラミングシートを持ち帰ることができる。

プレゼンテーション時の様子。片方のチームが実際にロボットとやりとりし、別のチームはプログラム通りに動いているかタブレットを見ながら確認している

 所要時間は約35分。プログラミングを通じて、チームワークやものづくりの達成感などを体験できることも狙っているという。

自然対話エンジンを持つロボットでできること

 NTTドコモが提供する自然対話エンジンは、【1】「意図解釈機能」、【2】「シナリオ対話機能」、【3】外部コンテンツ連携インタフェース(例えば天気予報などを取り込む)――の3機能を提供している。【3】以外は、キッザニアの「ロボット研究開発センター」で活用が可能。

 【1】は、例えば「白」と「ホワイト」という人の言い回しの“ゆらぎ”を同一の概念として扱えるようになっている機能だ。また、受付ロボットと窓口ロボットの間で「シナリオ連携」が行われ、会話の内容をロボット間で引き継ぐこともできる。

受付ロボットと窓口ロボット間の「シナリオ連携」

 【2】は、会話形式で受け答えをするbot生成機能だ。ユーザーの回答によってシナリオが「分岐」し、複雑な対話もできるようにプログラミングする。このパビリオンのキモになっている機能といえるだろう。

「分岐」があるプログラミングアプリの画面(「タイプ選択」の業務フロー)

 プログラミングアプリでは、分岐は「Communication」カテゴリ(画面左下の紫)にある「Listen」ブロックを下方向に積むことで表現されている。分岐した後の「Say」ブロックで、ユーザーからの回答に応じた言葉を右下で選択することで、コミュニケーションが成立するようにする。

ロボットが番号で選ばせるように質問し、それに回答する動画からの一幕

 「Goal」手前にある空白には、「Motion」カテゴリ(画面左下の黄緑)から、「Bow(おじぎ)」「Wave hands(てをふる)」「Raise hands(てをあげる)」のいずれかを埋めることでフローが完成するようになっている。

 条件分岐後に処理が変わった後は、「Control」カテゴリ(画面左下の青)にある「Goto」ブロックと「Label」ブロックを駆使することで、「Goal」に向かうようになっている。キッザニアのスタッフに聞いたところ、「Label」ブロックに「ラベル1」と名前を付け、「Goto」ブロックで「ラベル1」を指定することで、処理が分岐しても「ラベル1」に戻るようになっているという。また、「あいさつ」のフローで実際にそうなっているが、「Goto」ブロックで「Start」を指定することで、処理の「繰り返し」もできるそうだ。プログラミング言語BASICやC、PHPなどにある「goto文」と同じようなものだろう。

 この辺りは、子どもが理解するには難しいのではと思い、実際に尋ねてみたところ、小学校低学年ぐらいの女子から次のような回答を得た。「最初は分からなかったけど、だんだん分かってきた。ブロックの組み合わせもいろいろ変えてみたい。(処理を)変えたらすぐに(ロボットが)反応してくれるからプログラミングは楽しい」

AI技術による『体感革新』を提供

 「AIがプログラミングまでやってしまうから、将来的には不要になる」などと言われる中、「AI」を持つロボットを子どもがプログラミングして操作する体験施設の意義とは何なのだろうか。

NTTドコモ 第一法人営業部 法人サービス第四・第二担当課長 岩嵜隆司氏(※嵜は異体字)

 パビリオンのロボットにNTTドコモとして提供している「AI」技術は【1】「意図解釈機能」と【2】「シナリオ対話機能」だ。【1】には機械学習が使われているが、「体験時間が35分と限られているので、機械学習までさせるのは難しい」とNTTドコモ 第一法人営業部 法人サービス第四・第二担当課長の岩嵜隆司氏(※嵜は異体字)は言う。

 「プログラミングというと、プログラミング言語の文字をたくさん書くことをイメージされるかと思いますが、文部科学省から出ているプログラミング教育の方針は“プログラミングの考え方”をどう教えていくかというものです。そういう意味で、まずはロボットとプログラミングを通じて対話するところから興味を持ってもらい(【2】「シナリオ対話機能」)、もっとロボットのことを知りたい、もっと学びたいという気持ちにつなげていければと思います。自分がプログラミングしたものが目の前で動くというのは喜びにつながるので、そういう体験をしてもらいたい」

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