Windows 10は、PCおよびモバイルデバイス(スマートフォン)で共通のOSであり、PC向けには以下の4つのエディションが用意されています。
Homeエディションはコンシューマー向けであり、企業での使用は想定されておらず、ビジネス向け機能、Active Directoryドメイン参加、ポリシー管理機能などを備えていません。
企業では、ProまたはEnterpriseのいずれかのエディションを選択することになります。なお、Windows 10 Educationは、Windows 10 Enterpriseがベースとなっています。Windows 10 Education バージョン1607からは「Cortana」のサポートが削除された点が異なります。また、バージョン1607からは、Windows 10 ProベースのWindows 10 Pro Educationが追加されています(Windows 10 Education/Pro Education バージョン1703からはCortanaが復活しています)。本連載は企業向けを想定していますので、今後、Educationエディションについては、特に指摘するべき点がない限り触れません。
Windows 10 ProとEnterprise、どちらを選択するかの判断材料の1つは「機能差」です。以下のマイクロソフト公式の比較表で確認できるように、「DirectAccess」「AppLocker」「資格情報ガード(Credential Guard)」「デバイスガード(Device Guard)」といった高度なセキュリティ機能、スタート画面のレイアウトやストアの制御といった「管理されたユーザーエクスペリエンス」、デスクトップアプリとユーザー環境の仮想化技術「Application Virtualization(App-V)」と「User Environment Virtualization(UE-V)」、デスクトップ環境をUSBデバイスで持ち運べる「Windows To Go」、これらの機能を利用できるのはWindows 10 Enterpriseです。
機能の比較表では分かりにくいのが、「ポリシー管理」機能です。例えば、AppLocker、スタート画面のレイアウト、Windowsストアやストアアプリの使用禁止などは全てポリシーで管理するのですが、“Enterpriseエディション限定機能”ということを知らないと、ポリシーが適用されない理由で悩むことになるでしょう。
Windows 8.1ではProエディションでもポリシー制御できたことが、Windows 10からはEnterpriseエディション限定に変更されたものもあります。その1つが、ストアの制御を行うポリシーの1つ「ストアアプリケーションをオフにする」ポリシーです。
「ストアアプリケーションをオフにする」ポリシーは、企業において、従業員がWindowsストアから好き勝手に個人向けアプリ(UWPアプリ、ストアアプリ、モダンアプリとも呼ばれます)をインストールするのをブロックするのに有効です。このポリシーはWindows 8.1 Proでは利用できましたが、Windows 10 バージョン1511以降、Enterpriseエディション限定のポリシーになりました(Windows 10初期リリースにはポリシー自体が存在しません)。
ストアからのアプリの購入には、以前はMicrosoftアカウントが必須でしたが、Windows 10では無料アプリに関してはローカルアカウントでも取得できるようになっています(筆者が確認した限り、バージョン1607以降)。そのため、企業内でストアの利用制限ができるかどうかは、重要なポイントになるでしょう(画面2、画面3)。
この他、小売りストアの非表示、全てのストアアプリの禁止といったポリシーも、Enterpriseエディション限定のものです。Enterpriseエディションであれば、AppLockerを使用して、アプリの使用を個別に許可または禁止することも可能です。
Windows 10 Proは企業向けPCにプリインストールされた状態で導入することもできます。Windows 7 ProfessionalやWindows 8.1 ProのプリインストールPCから無料でアップグレードすることもできました(無料アップグレード特典は終了しました)。
プリインストールされた、または無料アップグレードされたWindows 10 Proを導入すれば、以後、OSライセンスに費用をかけることなく、そのハードウェアが対応する限り、常に最新のWindows 10にアップグレードし続けることができます。OSライセンス費用を省くことができるというのは、確かにWindows 10 Proを選択する利点の1つです。Windows 10 Enterpriseエディション限定の機能を利用したいのであれば、Windows 10 Enterpriseのライセンスを購入する必要があります。
Windows 10 Enterpriseのライセンスは“非永続的なサブスクリプションライセンス”であり、「Windows 10 Enterprise E3」または「Windows 10 Enterprise E5」として、ボリュームライセンスチャネルを通じて購入できます。
Windows 10 Enterprise E3は、以前は「Windowsデスクトップオペレーティングシステム用ソフトウェアアシュアランス(SA)」や「Windows Enterprise with SA」として提供されていたものの新しい名称です。Windows 10 Enterprise E5は、Windows 10 Enterprise E3の全機能に「Windows Defender Advanced Threat Protection(ATP)」という攻撃検知の新しいオンラインサービスを追加したものになります。
SA(Windows 10 Enterprise E3/E5)には、Windows 10 Enterpriseの使用権の他に、Windows To Goで起動したワークスペースの使用権、仮想デスクトップ環境へのアクセスを可能にする「Windows Virtual Desktop Access(Windows VDA)」の権利、Windows 10 Enterpriseの代わりにWindows 10 Enterprise LTSBの永続的ライセンスを使用する権利、「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」の使用権など、さまざまな特典が用意されています。2017年8月1日からは、Microsoft Azureや認定クラウドのパブリッククラウド環境でWindows 10を実行する権利も付与されます。
MDOPは、WindowsのSA契約者に無料提供(以前は有料でした)されるデスクトップ最適化のためのソフトウェア群です。App-VやUE-VはMDOPに含まれるソフトウェアです。ただし、Windows 10 バージョン1607以降は、App-VとUE-VはWindows 10 EnterpriseおよびEducationの標準機能となり、これらのエディションに組み込まれた形で提供、更新されるようになりました。
もし、現在、Windows 7、Windows 8.1、またはWindows 10 バージョン1511以前のProエディションでApp-VやUE-Vを使用している場合、今後も引き続き利用するためには、Windows 10 Enterpriseに移行する必要があります。Windows 10 Pro バージョン1607以降に、App-VやUE-Vをインストールして使用する方法は提供されません。
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