The Linux FoundationのAGLが、車載向けLinuxシステムの最新版「AGL UCB 4.0」を公開した。音声認識API、セキュアな無線通信を使ったソフトウェア更新に対応した。
The Linux Foundationのコネクテッドカー向け共同開発プロジェクト、Automotive Grade Linux(AGL)は2017年8月2日、AGL車載情報システム開発プラットフォームの最新版「Unified Code Base(UCB) 4.0」を公開した。
AGLは、Linuxシステムをベースにしたコネクテッドカー向けオープンプラットフォームを自動車メーカー、サプライヤー、IT企業などの業界の垣根を越えて共同開発するオープンソースプロジェクト。AGLを採用した最初の市販車として、2017年7月にトヨタ自動車の世界戦略車「カムリ」が発売された。
AGLのUCB 4.0では、インフォテインメントシステム(車両情報表示機能とエンターテインメント機能を統合した車載情報システム)のスマートデバイスリンクや音声認識API(Application Programming Interface)の機能を拡充した他、セキュアな無線通信手段を用いたソフトウェア更新機能を実装した。また、アプリケーションフレームワークにおいても、BluetoothやALSA(Advanced Linux Sound Architecture)に沿ったオーディオ、チューナー、CAN(Controller Area Network)通信向けの機能などを改善している。これには、SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)の改良や、組み込みLinux向けのビルドツール「Yocto」をバージョン2.2に更新したことなども含まれる。
さらにAGLは、車載情報表示システムに加えて、モバイル通信機能、統合型デジタル車載メーターシステム(インストルメントクラスタ)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の分野にも開発領域を広げている。これらに向けて、新たに「EG-VIRT(Virtualization Expert Group:仮想化エキスパートグループ)」と呼ばれる分科会を結成し、市場投入時間の短縮、コスト削減、セキュリティ向上などにつながるAGL仮想化アーキテクチャの開発を進めていくという。
UCBはAGLのメンバー企業数十社が協力して開発している。今回、新たに7社がAGLに加入し、参加メンバーが100社を超えたことも明らかにした。The Linux FoundationはUCBを、「次世代車両向け車載情報表示システム開発基盤のデファクトスタンダードにする」と目標を掲げ、今後、製品の70〜80%をUCBで提供することを目指している。機能追加やユーザーインタフェースの変更などの残り20〜30%は自動車メーカーやサプライヤーが追加開発することで、各社の製品ニーズを満たせる体制を整えるという。
The Linux FoundationでAutomotive Grade Linux担当エグゼクティブディレクターを務めるダン・コーシー氏は、「AGLは自動車業界で急成長している。AGLをベースにしたトヨタのインフォテインメントシステムは、AGLプラットフォームを業界のデファクトスタンダードに1歩近づけた。自動車業界は、オープンソースのメリットや、AGLが製品開発に与える影響を理解し始めている。AGLへの関心が急速に高まっていることにも驚いている。メンバーが100社を超えたことは大きな節目だ。新しいメンバーとともに、今後もAGLプラットフォームを強化し、取り組みの対象を車両のあらゆるソフトウェアに広げていきたい」と述べている。
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