2017年5月9日(日本では10日)、2015年7月末にリリースされた「Windows 10の初期リリース(ビルド10240)」のサポートが終了しました。同一ビルドがベースのWindows 10 Enterprise 2015 LTSBのサポートは継続され、2025年10月14日(日本では15日)まで提供されます。サポート終了から3カ月以上が経過したWindows 10初期リリースの”いま”を追ってみました。
「サービスとしてのWindows(Windows as a Service:WaaS)」として提供されるWindows 10のサービシングモデルは、シンプルとは言い難く、正しく理解するのが困難です。Microsoftによるサポートポリシーの何度かの変更が、話をさらに複雑にしています。Windows 10を既定の状態で運用していれば、毎月1回以上「品質更新プログラム」が提供され、半年に1度は「機能更新プログラム」としてWindows 10の新バージョン(新しいビルド)にアップグレードされます。
Windows 10 Homeエディションの場合は「Current Branch(CB)」と呼ばれるサービシングモデル一択になります。ユーザーに別のオプション選択の機会はありません。
Windows 10 Pro、Enterprise、Education(バージョン1607以降はPro Educationも)は、CBのおおむね4カ月後に新バージョンの配布が開始される「Current Branch for Business(CBB)」に切り替えることが可能です。また、「Windows Update for Business」と呼ばれるポリシー設定を用いて、品質更新プログラムや機能更新プログラムの延期や一時停止を調整することもできます。
Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)以降は、CBBだけでなく、CBでもWindows Update for Businessによる延期や一時停止が可能になりました。Windows Update for Businessで延期できる最大期間は、以下のようにWindows 10のバージョンによって異なります。
機能更新 最大8カ月(月単位)/品質更新 最大1カ月(週単位)
機能更新 最大180日/品質更新 最大30日(各日単位)
機能更新 最大365日/品質更新 最大30日(各日単位)
どうでしょうか。「正しく理解するのが困難」でしょう。さらに、2017年7月のWindows 10 Creators Updateの企業向けリリースからは、サービスモデルの名称が「Semi-Annual Channel」に変更されました。従来のCBは「Semi-Annual Channel(Targeted)」、CBBは「Semi-Annual Channel」として提供されます。
Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)はSemi-Annual Channel(Targeted)としての初のリリースとなり、このタイミングでOffice 365 ProPlusとサービスモデルの名称とリリースサイクルがそろえられることになっています(現在のOffice 365 ProPlusのCurrent Channel、First Release for Deferred Channel、Deferred Channelは、それぞれMonthly Channel、Semi-Annual Channel(Targeted)、Semi-Annual Channelになります)。
ただし、Semi-Annual ChannelとしてリリースされたWindows 10 Creators Updateと、Windows 10 Fall Creators Updateに向けたInsider Previewの最新ビルド(ビルド16251)のWindows Update for Businessのポリシー設定では、CB/CBBの名称のままでした。
このように、Windows 10のWindows Updateは新しい機能更新リリース(新しいバージョン、新しいビルド)が出るたびに、機能もサポートポリシーも変更されてきました。
Windows 10初期リリースは当初、CB向けリリースのおおむね4カ月後に始まるCBB向けリリース時にサポートが終了し、60日間の猶予期間後に品質更新プログラムが提供されなくなるとされていました。しかし、結局、Windows 10初期リリースのサポートは、CB、CBBともに2017年5月9日まで提供されました。なお、Windows 10初期リリース(ビルド10240)は、後続のWindows 10のバージョン表記に合わせて「バージョン1507」とも呼ばれます。
以下のMicrosoftのドキュメントに示された最新のサポートポリシーでは、各機能更新プログラムはリリース時から18カ月間サポートおよび更新されます。つまり、Windows 10の各バージョン(ビルド)は、(CB向けに)リリースされてから18カ月はサポートされ、品質更新プログラム(セキュリティ更新およびバグ修正)が提供されるということです。Windows 10初期リリースには、それを超える約21カ月のサポートが提供されたことになりました。
以下のURLからダウンロードできる「Show or hide updates」ツールの「Hide updates」を利用して機能更新プログラムをブロックすることで、既にCBやCBB向けにリリース済みの後継バージョンをインストールせずに、Windows 10初期リリースのまま維持することができました(画面1)。なお、「Show or hide updates」ツールは毎月実行しないと、非表示にしていた機能更新プログラムが再度検出され、インストールされてしまうことがあるようです。
Windows 10初期リリースのサポートが終了した1カ月後の2017年6月に、同じ方法で機能更新プログラムをブロックしたところ、Windows 10初期リリース向けに新たに公開された累積更新プログラム「KB4022727」とAdobe Flash Playerの更新「KB4022730」が検出され、インストールすることができました(画面2)。
これらの更新プログラムは、CBやCBBのWindows 10初期リリース向けのものではなく、同じビルド10240ベースのWindows 10 Enterprise 2015 LTSB向けのものと思われます。ボリュームライセンスで提供される長期サポート版のWindows 10 Enterprise 2015 LTSBは、2025年10月14日(日本では15日)までサポートされ、品質更新プログラムが提供されます。
CBやCBBのWindows 10初期リリースでも、2017年6月までは最新状態に更新できたのです。その結果、2017年6月13日時点で最新のビルド「10240.17443」に更新することができました。6月の累積的な更新プログラムには、多数の脆弱(ぜいじゃく)性を修正するセキュリティ更新が含まれていたため、例外的にWindows 10初期リリース向けにも提供するという判断があったのかもしれません。あるいは、更新サポートが終了するのが初めてのことだったので、配布対象から除外し忘れただけかもしれません(あくまでも筆者の想像です)。
なお、Windows 10初期リリースの「Windowsのバージョン情報」(winver.exe)および「設定」アプリの「システム」→「バージョン情報」は、その後のWindows 10バージョンとは異なり、リビジョン番号を含むバージョン情報(ビルド番号.リビジョン番号)を表示しません。Windows PowerShellで次のコマンドラインを実行することで、リビジョン番号を含むバージョン情報を確認することができます。
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