Windows as a Serviceを制御する――機能更新と品質更新のリリースサイクル(その2)企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(5)(2/2 ページ)

» 2017年08月30日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
前のページへ 1|2       

企業ではWSUSによる更新の制御を推奨

 複数バージョンの多数のクライアントPCを管理する企業では、WSUSやその他の更新管理システムを導入するべきです。Windowsの既定では、個々のコンピュータのWindows UpdateがMicrosoftの更新サービス(Microsoft Update)に接続し、更新プログラムをダウンロードします。企業内のクライアントPCが一斉にWindows Updateを実行した場合、ネットワーク帯域を占有して、通常のインターネット利用が阻害されることになるでしょう。Windows 10では、Windows Updateを通じて数GBにもなる機能更新プログラムも配布されるため、以前のWindowsよりもネットワーク帯域に与える影響は大きくなります。

 WSUSを導入すると、Microsoft UpdateとWSUSサーバ間で更新カタログと更新プログラムを同期し、インターネットと企業内ネットワーク間のWindows Update関連のトラフィックを1台のサーバに集約することができます。複数の拠点がある企業では、拠点ごとにWSUSサーバを設置することで、拠点間のWindows Update関連トラフィックを最小化することができます(図2)。

図2 図2 企業では、Windows Update関連のネットワーク帯域の使用を効率化するため、WSUS(またはその他の更新管理システム)を導入するべきだ。「クイック実行(Click-To-Run:C2R)」形式のOfficeの更新には、System Center Configuration Manager(SCCM)も必要

 なお、Windows 10のWindows Updateには「配信の最適化」という機能があり、ピアツーピア(P2P)の技術を用いて、インターネット上やローカルネットワーク(企業の場合はこちら)の他のWindows 10コンピュータから更新プログラムの一部をダウンロードさせることができます(画面3)。しかし、この機能がネットワーク帯域の削減にどれほどの効果があるのか、筆者は分かりませんし、公開されている情報もありません。

画面3 画面3 Windows 10のWindows Updateが備える「配置の最適化」機能の効果は、よく分からない。WSUSによるトラフィックの一本化の方が確実

 Microsoft Office 2013以降を導入している場合は、Officeアプリケーションの更新についても考慮するべきです。Office 2013以降は「クイック実行(Click To Run:C2R)」という配布形式が標準となり、Windows Update経由では更新されなくなりました(ボリュームライセンスのMSI版はWindows Update経由で更新されます)。

 C2R形式のOfficeは、Officeアプリケーション自身が備える更新機能が、直接Microsoftから更新を取得します。WSUSはC2R形式のOfficeアプリケーションの更新の同期に対応していますが、WSUS単体ではC2R形式の更新を配布することはできません。「System Center Configuration Manager(SCCM)」を導入することで、WSUSに同期したC2R形式のOfficeアプリケーションの更新を配布することが可能になります。

 その他の方法として、「Office展開ツール」を利用することで、企業内の配布ポイントにC2R形式のOfficeアプリケーションのインストールおよび更新ソースを配置することができます。

WSUSとWindows Update for Businessの共存は可能だが要注意

 Windows 10 バージョン1607からは、WSUSとWindows Update for Businessの併用がサポートされました。しかし、この場合は、以下の公式ブログで説明されているような意図しない動作をすることがあります。

 Windows Updateの動作は、Windows 10でもWindows Updateのグループポリシー設定を使用して制御することができます。しかし、Windows 10のWindows Updateの仕様変更が影響して、以前のWindowsと同じように制御できないものもあります。更新後の再起動のポリシー設定については、問題があることが公表されています。

 Windows 10をこれから本格的に導入しようという場合は、更新管理の運用に関しても事前に評価して、問題点がないかどうかを調査することをお勧めします。

最新情報

 2017年8月23日にリリースされたWindows 10 Insider Previewのビルド「16273.1000」のポリシー設定において、従来のCB/CBB表記から「半期チャネル(ターゲット)」「半期チャネル」(英語版では「Semi-Annual Channel(Targeted)」「Semi-Annual Channel」)の表記に変更されていることを確認しました。ただし、これはWindows 10 Fall Creators Updateに向けた開発中のプレビュービルドであり、さらに変更される可能性もあります。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。