ここまで、Nano Serverの現行バージョンと次期バージョンについて説明してきましたが、ここで疑問が生じませんか。現行バージョンのNano Serverは、いつまでサポートされるのかという疑問です。Windows 10やOffice 365 ProPlusの場合は、何度かのポリシー変更を経て、現在は、各バージョンのリリースから18カ月間はサポート(品質更新サポート)が提供されます。もともとのCB/CBBの概念では、新バージョンがリリースされるたびに、数世代前の過去バージョンのサポートが順次終了していくことになっていました。1年前にNano Serverが登場したときにも、これと同じもともとのCBBのサポートオプションが適用されるものと想像していました。
Nano Serverは提供開始から1年が過ぎて、ようやく次のバージョンがリリースされることになるわけですが、次のバージョンにはSemi-Annual Channel(半期チャネル)のポリシーが適用されることになります。Windows 10やOffice 365 ProPlusと同様、リリースサイクルは1年に2回(こちらは“3月と9月ごろ”ではなく、“春と秋”という表現になっています)、各バージョンはリリース後18カ月サポートされることになっています。
Microsoftのドキュメントでは、既にCBBでNano Serverを使用している顧客向けに、以下のように説明されています。
Windows Serverの新しい半期チャネルは、モデル名が新しくなりましたが、内容は同じです。このモデルでは、Nano Serverの機能更新リリースが年に2回〜3回公開される予定です。ただし、Windows Server、バージョン1709の新しい機能リリース以降、Nano Serverはコンテナ基本OSイメージとしてのみ提供されます。
バージョン1709より以前に、新バージョンがリリースされることはないでしょうから、コンテナのベースOSイメージ以外の環境でNano Serverを利用している場合は、やはり現行バージョンが最後になります。そして、現行バージョンのNano Serverにも、リリース後18カ月のサポートポリシーが適用されると考えるのが妥当です。だとしたら、ライフサイクル開始日が「2016年10月15日」ですから、2018年4月にはサポートが終了する可能性があります。
そこで、最新の製品サポートライフサイクルで確認してみました(サポートライフサイクルの情報は変更されることがあります)。検索結果では、Nano Serverのインストールオプションの備考欄には「この製品はMicrosoftのモダンライフサイクルポリシーにより規定されています」とあります(画面4)。
「モダンライフサイクルポリシー」は継続的にサービスとサポートが提供される製品およびサービスを対象としたもので、主にMicrosoft AzureやOffice 365などのクラウドサービスが対象になります。このポリシーでは「後継の製品またはサービスを提供せずにサポートを終了する場合、少なくとも12カ月前に通知します」とありますが、Nano Serverは“コンテナのベースOSイメージとしてのみ”という条件は付きますが、この対象にはならないので、12カ月前に通知されることはないでしょう。
Nano Serverを物理サーバや仮想マシンとして運用環境に既に導入してしまったという企業にとっては、“何なのよ”と叫びたくなるかもしれません。Nano Serverだけに……。
というのは冗談で、ポリシーが途中で変更されたのですから猶予期間が設けられるという可能性はあります。しかし、既に物理サーバや仮想化環境に導入してしまったという企業は、そんな可能性には期待せず、2018年春にはサポートされなくなるという前提で、急いでNano Serverからの移行と撤退を始めた方がよいでしょう。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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