ブランチ更新レベルは、「サービスオプション(Servicing Option)」や「更新ブランチ(Update Branch)」と呼ばれることもあります。Semi-Annual Channelの新しい名前に合わせるなら、今後は「更新チャネル(Update Channel)」ということになります。
さて、Windows 10のサービスオプションのSemi-Annual Channelへの名称変更は、更新サイクルを3月と9月の年に2回に固定化することと、「Office 365 ProPlus」の更新サイクルおよびサービスオプションの名称とそろえることを目的に行われます。もちろん、“ユーザーからのフィードバックに基づいて”、企業におけるWindowsとOfficeの更新管理や計画をシンプルで分かりやすくするためです。Windows ServerやSystem Center製品についても、同様の概念が導入されていくようです。
Office 365 ProPlusは、このような名称変更を既に経験済みです。Office 365 ProPlusの状況を見れば、Windows 10に今後起こる混乱がある程度予想できるかもしれません。
Office 365 ProPlusサービスオプションは、Windows 10と一貫性のある「Current Branch」「Current Branch for Business」と、Windows 10には存在しない「First Release for Current Branch for Business」の3つの主要な選択肢があります。現在は、それぞれ「Current Channel」「Deferred Channel」「First Release for Deferred Channel」に変更され、Office 365 ProPlusの展開ツールやグループポリシー設定にも反映されています。
これが、今後「Semi-Annual Channel(Targeted)/半期チャネル(ターゲット)」と「Semi-Annual Channel/半期チャネル」、そしてWindows 10のサービスオプションには存在しない「Monthly Channel/月次チャネル」に変更されます。具体的には、Semi-Annual Channel(Targeted)は2017年9月リリースから、Semi-Annual Channelは2017年1月リリースからになります。詳しくは、以下のドキュメントで説明されています。
注意点は、Windows 10のCurrent Branch/Current Branch for BusinessがSemi-Annual Channel(Targeted/指定なし)に移行するのに対して、Office 365 ProPlusはFirst Release for Deferred Channel/Deferred ChannelがSemi-Annual Channel(Targeted/指定なし)に移行する点です。
Office 365 ProPlusの既定はDeferred Channelであり、その他のOffice 365製品(個人向け契約など)の既定がCurrent Channelであり、Current ChannelはMonthly Channelに移行します。Office 365 ProPlusのCurrent Channel、First Release for Deferred Channel、Deferred Channelのバージョンは、2017年8月末時点でそれぞれ1707、1705、1701、2017年9月中旬時点で1707、1708、1705でした(画面3)。
現在の名称 | 新しい名称 |
---|---|
Current Branch | Semi-Annual Channel(Targeted) |
Current Branch for Business | Semi-Annual Channel |
現在の名称 | 新しい名称 |
---|---|
Current Channel | Monthly Channel |
First Release for Deferred Channel | Semi-Annual Channel(Targeted) |
Deferred Channel | Semi-Annual Channel |
Office 365 ProPlusのCurrent Channel、First Release for Deferred Channel、Deferred Channelの選択状況とバージョン情報は、Office 2016アプリケーションの「ファイル」→「アカウント」(Outlookの場合は「Officeアカウント」)で確認できます。日本版の環境では、Current Channel、First Release for Deferred Channel、Deferred Channelが、それぞれ「最新機能提供チャネル」「段階的提供チャネルの初回リリース」「段階的提供チャネル」のように、オリジナル名称を想像できない日本語に訳されています。
2017年9月13日の更新時点では、Semi-Annual Channel(Targeted)のバージョン1708にのみ、新しいチャネル名称が適用されており、日本語版では「半期チャネル(対象限定)」と表示されます(「Office 365 ProPlus 更新プログラムの管理に関する今後の変更の概要」では「半期チャネル(対象指定)」なのにもかかわらずです)。
更新ブランチから更新チャネルへの移行に、この日本語訳を加えると、もう訳が分からない感じです。以下、筆者が定期的に確認した範囲において、Office 2016ベースのOffice 365 ProPlusにおける、バージョン情報の表記の変遷を追跡したものです(漏れている可能性はあります)。Office 365 ProPlusの各チャネルへの段階的なリリースと同じように、サービスオプションや名称の変更も段階に反映されているのが分かるでしょう。
リリース月 | Current Channel(旧称Current Branch:CB) | First Release for Deferred Channel(旧称、First Release for Current Branch for Business:FR CBB) | Deferred Channel(旧称Current Branch for Business:CBB) | 備考 |
---|---|---|---|---|
2015年9月 | 表示なし | 表示なし | ×(未リリース) | CBおよびFR CBB向けの初リリース |
2016年2月 | 現在の分岐 | 表示なし | ×(未リリース) | ― |
2016年3月 | 現在の分岐 | ビジネスの現在の分岐の最初のリリース | 表示なし | CB向けの初リリース |
2016年4月 | Current Channel | ビジネスの分岐の最初のリリース | 表示なし | CBの名称変更反映 |
2016年6月 | Current Channel | Deferred Channelの初回リリース | ビジネスの現在の分岐 | FR CBBの名称変更反映。CBBは旧称のまま |
2016年12月 | Current Channel(1611) | Deferred Channelの初回リリース(1609) | ビジネスの現在の分岐 | このころから年号2桁+月2桁のバージョン表記開始(Deferred Channelを除く) |
2017年3月 | 最新機能提供チャネル(1702) | 段階的提供チャネルの最初のリリース(1701) | Deferred Channel(1609) | CBからDeferred Channelへの名称変更およびバージョン表記変更、First Release for Deferred Channelの日本語表記変更 |
2017年4月 | 最新機能提供チャネル(1703) | 段階的提供チャネルの最初のリリース(1701) | Deferred Channel(1609) | Current Channelのバージョン情報表示場所がOfficeロゴの下に変更 |
2017年6月 | 最新機能提供チャネル(1706) | 段階的提供チャネルの最初のリリース(1705) | 段階的提供チャネル(1701) | Deferred Channelの日本語表記、First Release for Deferred Channelのバージョン表示場所がOfficeロゴの下に変更 |
2017年9月 | 最新機能提供チャネル(1707) | 半期チャネル(対象限定)(1708) | 段階的提供チャネル(1705) | Semi-Annual Channel(Targeted)への名称変更 |
(※)2017年9月後半にMonthly Channelにもバージョン1708が提供され、日本語版でのバージョン表記が「月次チャネル」に変わりました |
更新ブランチから更新チャネルへの変更は、2017年3月(日本語表記への対応を含めると2017年6月)に完了したばかりです。そして、新しい更新チャネルへの名称変更が、間もなくSemi-Annual Channel(Targeted)からスタートします。現状のリリース状況をバージョン(年号2桁+月2桁)で追いかけると、Current Channelは毎月、First Release for Deferred Channelは3カ月ごと、Deferred ChannelはFirst Release for Deferred Channelの4カ月後というようなリリースサイクルになっていることが分かります。Semi-Annual Channelでは、これがWindows 10と同じく「年に2回」のリリースサイクルに変わります。Monthly Channelはその名前が示す通りです。
サービスオプションの名称変更が、単に表示だけの違いであれば影響は少ないのですが、Office 365 ProPlusの展開や管理に関連するツールの指定には大きく影響します。
Office 365 ProPlusの展開の効率化やカスタマイズを行う「Office 2016 Deployment Tools」では、「XML構成ファイル(Configuration.xml)」内に更新チャネルを指定します。初期のころは、「Branch="Current"」「Branch="Business"」「Branch="Validation"」のように指定しましたが、その後「Channel="Current"」「Channel="Deferred"」「Channel="FirstReleaseDeferred"」に変更されました。最新バージョンでは、さらに「Channel="Monthly"」「Channel="Broad"」「Channel="Targeted"」のような指定に変更されています。
また、グループポリシー用のOffice 2016管理用テンプレートでも、初期のころは「分岐の更新」というポリシー設定に「Current」「Business」「Validation」と入力する必要がありましたが、その後、「チャネルの更新」というポリシー設定に変更され、「Current」「Deferred」「FirstReleaseDeferred」と指定するようになりました。この切り替え時には、新旧両方の指定がサポートされていましたが、最新の管理用テンプレートではドロップダウンリストから選択する方法に変わっています(画面4〜6)。
なお、Office 2016 Deployment ToolとOffice 2016管理用テンプレートは、以下のURLから最新版を入手できます。
ここまでの話でもだいぶ混乱しているとは思いますが、これに「Office 365管理ポータル(管理センター)」のオプションを加えると、さらに分かりにくくなります。当初は旧ポータル(既に利用できなくなりました)で「標準リリース」と「先行リリース」のいずれかを選択することで、組織全体のサービスオプションを指定することができました。ご想像のように、既定のDeferred ChannelとFirst Release for Deferred Channelの選択です。新ポータルでは「毎月(期限内チャネル)」と「4か月ごと(延期チャネル)」の選択になっています。こちらは、どのサービスオプションに対応しているのか分かりにくいですが、サイトを英語表示にすると「Every month(Current channel)」と「Every 4 months (Deferred channel)」となって容易に識別できます(画面7)。
サービスオプションは、新旧ポータルで一貫性がなく、サービスオプションの名称は日本語化が対応付けを困難にしています。そして新ポータルのこの表記は、つい最近になって「毎月(月次チャネル)」「6か月ごと(半期チャネル)」に変更されました。
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