CREATE OR REPLACE TRIGGER TRI_BUSHO_1 AFTER INSERT OR UPDATE OR DELETE ON ACCOUNT FOR EACH ROW DECLARE VAL NUMBER; BEGIN IF (INSERTING) THEN < INSERT起動時の処理 > END IF; IF (UPDATING) THEN < UPDATE起動時の処理 > END IF; IF (DELETING) THEN < DELETE起動時の処理 > END IF; END; /
Oracleは、トリガ起動条件を「INSERT OR UPDATE OR DELETE」(3行目)のように複数指定でき、「トリガ起動条件述語」(9行目の「INSERTING」、12行目の「UPDATING」、15行目の「DELETING」)によって起動条件に対応する処理を記述できます。
MySQLには、「トリガ起動条件の複数指定」ができず、「トリガ起動条件述語」がないため、トリガの移行を実施する場合には、起動条件ごとにトリガを分割する必要があります。
「トリガ起動条件の複数指定」「トリガ起動条件述語」が存在するトリガは、本システムでは約50オブジェクトあり、移行コストは、「中程度」と評価しました。
PL/SQL独自属性については、第6回の評価1:「PL/SQL独自属性」に関する評価結果を参照してください。
構文例(コメント) | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|
Oracle | wk_shain_id SHAIN.SHAIN_ID%TYPE; wk_koushin_date SHAIN.KOUSHIN_ID%TYPE; |
422 |
MySQL | DECLARE SHAIN_ID DECIMAL(11); DECLARE KOUSHIN_DATE DATETIME; 代替関数なし。このため、個々のテーブルカラムのデータ型を参照し、対応する変数分宣言する必要がある |
移行コストは 「中程度」 |
個々の変数の修正は容易ですが修正箇所が多いため、移行コストは「中程度」となります。
構文例(コメント) | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|
Oracle | v_shain SHAIN%ROWTYPE; | 使用されず |
MySQL | DECLARE SHAIN_ID DECIMAL(38); DECLARE SAKUSEI_DATE DATETIME; DECLARE KOUSHIN_DATE DATETIME; 代替関数なし。このため、個々のテーブルカラムのデータ型を参照し、テーブルに属するカラムを全て宣言する必要がある |
移行コストは 「0」 |
本システムでは、「%ROWTYPE」は使用されていないため、移行コストは、0と評価しました。
OracleのPL/SQLは、Oracleデータ型とは別に独自のデータ型を使用してコーディングを行います。
前述した手順2でトリガのソースコードでコーディングされているPL/SQLデータ型の使用状況を調べたところ、「CHAR型」「VARCHAR2型」「NUMBER型」「DATA型」が実装されていました。それぞれを個別に評価します。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | CHAR(n) | (バイト数|文字数) | 固定長文字列 最大32767バイト | 13 |
MySQL | CHAR(n) | (文字数) | 固定長文字列 最大255バイト | 移行コストは 「低」 |
移行時桁溢れに留意する必要がありますが、本システムで調査した結果、CHAR(256)以上の指定がなかったので、移行コストは「低い」と評価しました。
なおMySQLは、0バイト文字列を認識するのでカラムのNULL判断方法に留意する必要があります。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | VARCHAR2(n) | (バイト数|文字数) | 固定長文字列 最大32767バイト | 42 |
MySQL | VARCHAR(n) | (文字数) | 固定長文字列 最大65535バイト | 移行コストは 「低」 |
VARCHAR型については、PL/SQLよりもMySQLの方が表現できるバイト数が大きいため、特に工夫なく移行が行えます。移行コストは「低い」と評価しました。
なおCHAR型と同様MySQLは、0バイト文字列を認識するので、カラムのNULL判断方法に留意する必要があります。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | NUMBER(p) | (精度) | 数値 精度(p):38桁 ※PL/SQLではNUMBER(p、s)を宣言できないため、使いたい場合には%TYPEまたは%ROWTYPEを使用する |
180 |
MySQL | DECIMAL(p,s) | (精度,位取り) | 数値 精度(p):65桁 位取り(s):0〜30桁(“p”より大きくはできない) |
移行コストは 「低」 |
PL/SQLでのNUMBER型は、MySQLでのDECIMAL型で不足なく表現できるので、一般的に移行コストは「低い」と評価しました。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | DATE | 年月日・時分秒 | 西暦前4712年1月1日0時0分0秒〜西暦9999年12月31日23時59分59秒 | 46 |
MySQL | DATETIME | 年月日・時分秒+小数秒(最大6桁) | 西暦1000年1月1日0時0分0秒.000000〜西暦9999年12月31日23時59分59秒.999999 | 移行コストは 「低」 |
DATE型では、西暦1000年1月1日0時0分0秒より「前」の日付データが、トリガの処理中に格納される場合にはDATETIME型は利用できません。本システムでは、そのような日付データは利用していなかったので、移行コストは「低」と評価しました。
ちなみに、PL/SQLのデータ型における「TIMESTAMP型」の場合も、小数点以下6桁秒までのデータならばMySQLのDATETIME型への移行が可能です。
一般的にOracleのトリガでは、「PL/SQLパッケージ」といわれるPL/SQL独自の関数はあまり使われません。
本システムでは、トリガのソースコードにPL/SQLパッケージは、使用していないため、PL/SQLパッケージの移行コストは、0と評価しました。
以上、本稿ではDMBS移行プロジェクトの移行評価作業のうち、トリガの評価方法を紹介しました。
「株式会社豊洲部品」(仮名)はあくまで架空の会社ですが、SCSKが携わったシステムでも、同じようなトリガを利用しているシステムは、非常に多くあります。
また、手順3において参考に提示した「自動採番専用トリガ」「トリガ起動条件の複数指定」「トリガ起動条件述語」は使用頻度が高いDMLトリガのコーディング例です。
類似のコーディングを使用されている場合は、ぜひ本章を参考に移行の難易度を評価してください。
次回は、個々の移行事例から離れて、移行設計を実施するに当たり、把握しておいていただきたい、Oracle DBとMySQLの機能の差異について説明します。
SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。東京都出身 東京都在住。MySQLやMySQL Clusterのコンサルティング、設計構築、プリセールスなどを行っていたが、最近は営業やマーケティング活動もカバーするようになり、技術が分かる営業として日本国内を縦断中。
SCSK株式会社所属。神奈川県横浜市在住。1983年よりIT業界へ。その間Oracleを中心とした、DB関連作業を多数経験。DBの移行を得意とする。趣味は自己チューニング(水泳、マラソン、筋トレ)及び愛犬アポロ(チワワ)と遊ぶこと。
SCSK株式会社 ITマネジメント事業部門 基盤インテグレーション事業本部 通信基盤インテグレーション部所属。神奈川県川崎市在住。入社当初よりデータベースの設計構築や技術サポート業務に従事。MySQLを中心にしつつもOracle Database、Oracle RACなどの構築にも携わる。趣味はスノーボード、スキューバダイビング、海外旅行など。
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