メイクマネーをリアライズできるアビリティをストックしているパートナーをウエルカムします――@ITで1番有名な社長が、2018年の抱負を多いに語ります。※皆さんご存じかとは思いますが、本作はフィクションです。
「IoT」に代表されるように、ITであらゆる物事が「つながる」ようになった現代。全ての物事がつながり、ITに対するスタンスやビジネスに対する考え方が大きく変わるこれからの時代に、IT企業は、エンジニアは、何を考え、どのような行動を取ればよいのか。人気連載漫画「食べ超」の社長にお話を伺った。
本記事は、新春インタビュー特集「Connect2018」のパロディです。社長は実在せず、インタビューは筆者の頭の中で行われました。社長の普段の活躍(?)は、連載「IT用語解説系マンガ:食べ超」をご覧ください
――2017年はどんな1年でしたでしょうか?
厳しい1年だったが、楽しい1年でもあった……そう思います。2017年は特に、社屋への物理的な損害が例年より少なかったんじゃないかなと思います。私自身は、拘束服を着せられる回数が例年よりも少なくて……えっ何? そんなことは言わなくていい? ……失礼しました。社員たちから余計な横槍(やり)が入りました。……みんな、見てなくていいから! 向こうに行っててよ!
ベンチャーとは、常に逆風を受けて前進するものです。そう、未知の大陸をめざす帆船のようにね。逆風が強ければ強いほど、私たちは遠くへ行けるのです。
逆風とは、世間からの逆風でもあり、信頼できる社員たちからの逆風でもあります。特に社員たちからの逆風はとても厳しい。シベリアの吹雪のように。しかし、いつも社員たちは最後には理解を示してくれます! (背後からのブーイングを無視して)私は間違っていない! 経営者は拘束服を着せられるくらいのアイデアを常に出し続けていないといけないんです。魚は泳ぐのを止めたら死ぬんですよ!(編集部注:そうでもないです)
2017年は楽しい1年だったが、厳しい1年でもあった……そう思います。昨年、当社は、えーと、100くらいの新しいサービスをリリースしました。リリースは楽しかった……。そのうち100くらいが、残念ながら時代を先取りし過ぎていました。しかし、2018年も当社はあらゆる意味で最前線を走りつづけることをお約束します!
――2018年はどのような1年になると考えていますか?
いっそう厳しく、いっそう楽しい1年になるでしょう。リリースを待つプロジェクトが私の頭のなかにぎっしり詰まっています。(社員からの問い掛けに答えて)あ、うん。まだ君たちには説明していなかったけど、時が来れば、話すことになるだろう……。
社員たちはいつでも私のむちゃ振りに応えてくれます。みんな素晴らしい愛社精神の持ち主です。(背後からブーイング)……えっ、何で褒めているのに怒られるの?
2018年は、業界にとっての大きなターニングポイントになるでしょう。当社がそのポイントを提供することは間違いありません。私はその準備に余念がありません。そのときのために、今のうちに次のインタビューのアポをとっておいた方がいいですよ。
――今、パートナーを組むとしたらどんな企業(個人)を考えていますか?
インベンティブで、イノベイティブで、イマジネイティブで、クリエイティブで、アサーティブで、ポジティブで、コンバスティブで、コラプティブで、ディストラクティブなコーポレーションやパースンやサイバネティックエンティティとスーパーデバステイティングハッピーなパートナーシップをビルドしてコラボレートしていきたいとイマジンしています。ファイナンシャルなリターンにコネクティブなリザルトをパーシュートしていけることがアイディールです。
まとめれば、メイクマネーですね。メイクマネーをしたいです。メイクマネーをリアライズできるアビリティをストックしているパートナーをウエルカムします。
――御社のキラーコンテンツは、ずばり何でしょうか。
私です。
経営者が最大のコンテンツでなければいけない、それが現代のアントレプレナーのルールワンです。
2018年、私は、コンテンツとしての私自身の存在にさらに磨きをかけていきます。そして、その成果として、私の人格をAIに転写したホームアシスタントをリリースする予定です。(後ろから社員の抗議の声)……えっ? 言っていなかったっけ? いや失礼。このホームアシスタントが、私のクリエイティブでインスピレーショナルなライフハックを全ての家庭にお届けすることになるでしょう。私はその日が待ちきれません。プレスリリースのチェックをぜひキープオンください。
――2018年、御社はITで何とつながりますか?
宇宙の意思とコネクトしていけたらいいなと思います。
成功する企業は、業界やユーザーに歓迎されているだけでなく、宇宙そのものから祝福されている。そう思うことはありませんか。急速に発展しつつある量子コンピュータ技術によって、きっと宇宙の秘密が解き明かされるはずです。当社はそこんとこをいい感じにキャッチして、いい感じにアレしていきたい。そう考えています。そうして、当社の成長にもついにムーアの法則が適用されるようになるでしょう。
当社がIT業界をけん引する、というよりも、当社があればITは要らない、最終的にはそう言ってもらえるような企業になることを目指しています。このように、ガントチャートにも既に達成スケジュールを書き込んであります。(社員のブーイング)いやいや、行けるとも! 大丈夫! 社員一丸となって頑張ろう! あっ、拘束服を着せないで……!!
――ますますのご発展をお祈りしています。これからもせいぜい頑張ってください。
倉田タカシ
イラストレーター、マンガ家、文筆業、Web制作業。
著書「母になる、石の礫【つぶて】で」(早川書房)
河出書房新社『NOVA2』『NOVA10』、東京創元社『量子回廊』に短編を収録。共作Web企画『旅書簡集 ゆきあってしあさって』に参加中。
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