以下、他のチームの作品を紹介する。
チーム「ももいろ銭〜」は、「信頼循環型決済プラットフォーム」を開発。これは、飲食店の間で問題となっている予約客の「ドタキャン」(土壇場のキャンセル)を防止しつつ、顧客とのエンゲージメントを強める仕組みだ。客が予約時にMUFGコインを払うことでドタキャンの防止効果を狙う。またMUFGコインのカラードコイン機能を使い、店から客に「優待コイン」を渡すなど、利用者や利用局面を限定したクーポンを実現する。
チーム「クーガー」は、「分散型決済データマーケットプレース」である「ココナッツ」を開発した。店舗での購買履歴をはじめとする「個人情報データ」を提供することでポイントを受け取るサービスが既に存在しているが、このプラットフォームは、その基本的な枠組みを再設計する。ユーザーは、ブロックチェーンによりプラットフォーム上の個人情報データの信頼性を高め、データ閲覧権限を制御できる。これにより個人情報データを渡す側が、情報の公開範囲をコントロールし、個人情報データの対価としてさまざまサービスやMUFGコインを受け取れる。
チーム「Smart Omusubi」は「分散型“寄付予約”プラットフォーム」である「Kifusuru」を開発した。自然災害などの場合に、スマートコントラクトを使い、早い段階で寄付行為を自動執行する。特定の運営主体が災害の認定をコントロールするのではなく、大勢の寄付者から集めた情報により災害発生を認定するため、中立的、自律的、迅速に寄付行為を実現できる。
チーム「BLACK BOX」は世界をエコにするワンアクション「おぷてぃみ」を開発した。これは、各家庭のコンセントに、インターネット経由で電源のオン/オフを制御できるスマートプラグ「Plug」を取り付け、外出先から電力消費をコントロールできるサービスだ。MUFGコインによりリアルタイムで決済を走らせ、電気料金のリアルタイム支払いや、節電の推進ができるようになる。
チーム「ブーメランパンツ」は「友達とはじめる株式投資」と銘打ったサービス「デジファン」を開発した。想定は、若い女性のグループがLINEを使って友達と一緒に株式投資を行う使い方だ。MUFGコインは、個人間送金に使う他、スマートコントラクトにより取引ルールを定義する使い方を考えているという。
以上、9チームの作品を紹介した。イベント最後の講評で、三菱UFJ銀行 常務執行役員 林尚見氏は、「われわれは一歩前に踏み出さないといけない。お金は所与のものだと思って暮らしてきた。銀行員として入行してから、ずっとそうだと思っていた。その前提条件が大きく変わろうとしており、どのようにして社会に貢献できるかを考える必要がある。これからが本番。MUFGコインを実装して、世の中に役割を発信できるようにしたい」と語った。
テクノロジーにより銀行を取り巻く環境が大きく変わり、ブロックチェーン技術や仮想通貨の登場で、今まで慣れ親しんできた「お金」の概念や役割が大きく変わりつつある。そのことをメガバンクの経営者たちが感じ取っていることがうかがえた。
ブロックチェーンという技術、仮想通貨という法的枠組みを使えば、銀行が独自のデジタル通貨を設計し、発行して流通させることが可能だ。そこでどのようなサービスが可能になるのか。また、どのようなサービスが世の中で求められているのか。それを探るための努力の1つが、今回のハッカソンだったのだろう。
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