複雑怪奇? Windows 10の大型更新とサポート期間を整理するWindows 10 The Latest

Windows 10では従来のWindows OSと異なり、年2回、大型アップデートの提供が行われるようになった。それに伴い、サポート期間もバージョンごとに設定されるなどの変更が行われており、かなり複雑なものとなっている。本稿では、アップデートの提供タイミングならびにそのサポート期間などを整理する。

» 2018年04月13日 05時00分 公開
[塩田紳二]

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Windows 10のアップデート提供のタイミングはどうなっているの?

 Windows 10では、従来のWindows OSのように年単位でのメジャーバージョンアップの開発をやめ、月単位でのアップデート(更新)を行うようになった。そのため、サポート期間などにも大きな変更が加わり、非常に分かりにくいものとなってしまった。そこで、本稿ではアップデートがどのようなタイミングで提供されるのか、そのバージョンのサポート期間がどのようになっているのかを整理する。

Windows 10のアップデートタイミング Windows 10のアップデートタイミング
Windows 10は、年2回のFeature Updateと毎月のQuality Updateで更新されていく。

 このアップデートには、大きく以下の3つある。

アップデート名 提供タイミング
Feature Update 新しい機能を追加。年2回、4月と10月に配布
Quality Update 新しい機能を含まない。毎月配布
Security Update セキュリティ関連。臨時に行われることがある
アップデート名と提供タイミング

 すでに「Feature Update」は、最初のRTMを含めると6回配布されている。Windows 10では、各Feature Updateにより機能が違うため、これをバージョン番号(Ver.)で区別する。

配布日 バージョン ビルド コード名 アップデート名称 概要
2015/07/29 (1507) 10240 Threshold(TH1) RTM 最初のWindows 10
2015/11/12 1511 10586 Threshold2(TH2) November Update 最初のアップデート
2016/08/02 1607 14393 Redstone1(RS1) Anniversary Update 新シリーズ。Pen、コルタナ強化。Windows Hello
2017/04/11 1703 15063 Redstone2(RS2) Creators Update 3D、MR対応。ここから年2回のアップデート
2017/10/17 1709 16299 Redstone3(RS3) Fall Creators Update Fluent Design。OneDrive OnDemand。マイ連絡先
2018/04/30 1803 17134 Redstone4(RS4) April 2018 Update Windows Timeline、近距離共有、診断データ
2018/10 1809 176xx Redstone5(RS5) Sets(仮)。Redstoneシリーズの最後
2019/04 1903 18xxx 新しいコード名 新シリーズ。LTSCエディションが出る
これまで提供されたFeature Update

 このバージョン番号には、Feature Updateの開発が完了した年、月を組み合せている。例えば、2017年10月に配布が始まった「Fall Creators Update」は、2017年9月に開発が完了したため「Ver.1709」となる。このときのFeature Updateで、Windows 10に「マイ連絡先」が追加された。この機能は、Ver.1709以前(例えばVer.1703)には存在しない。また、Ver.1803でマイ連絡先の機能が改良されている。

 このバージョンは、毎月配布されるQuality Updateにより変わっていくため、その状態を「OSビルド」として記述する。OSビルドは、元になるWindows 10のビルド番号とQuality Updateによる番号をピリオドでつないで表現されている。

 ビルド番号とは、Windows 10の開発時に毎日作られるイメージに連番で付けられる番号である。なおFeature Updateは、特定のビルド番号を持つ。

 Quality Updateは、マイクロソフト社内で細かいアップデートを繰り返してきたものを、1カ月分まとめて配布するものだ。このため、小数点以下の数字は飛び飛びになる。

 このようなOSビルドを持つWindows 10は、Windows Insider ProgramのInsider Preview版などとして配布されることがある。また、一般配布される場合には、Quality Updateが適用されたものになることがある。

 2018年4月のWindows10 Ver.1709のOSビルドは「16299.309」である。16299がVer.1709の完成時のビルド番号だ。このOSビルドは、WinVer.exeで表示することができる。

[Windowsのバージョン情報]画面 [Windowsのバージョン情報]画面
[Windows]+[R]キーで[ファイル名を指定して実行]ダイアログを開き、「winver」と入力して[Enter]キーを押すと、この画面が開く。この画面を見ると、Windows 10のバージョンとビルド番号が分かる。

Windows 10で変更になったサービスモデルって?

 Windowsでは、従来、サポートする期間を定めていたが、Windows 10ではリリースの方法が変わったため、サポート期間についても変更があった。これをMicrosoftは「サービスモデル」という。サービスモデルでは、Feature Updateへの移行やサービス期間を定めている。

 まず、Feature Updateには、18カ月というサポートサイクルがある。サポートサイクル中は、Quality Update、Security Updateが提供される。また、企業向けのEnterpriseエディション、教育機関向けのEducationエディション(Enterpriseエディションがベース)では、さらに6カ月の「延長サポートサイクル」があり、これを選択するとその期間は、Quality UpdateやSecurity Updateの提供を受けることができる。

Feature Updateのサポートサイクル Feature Updateのサポートサイクル
Feature Updateには18カ月のサポートサイクルがあり、企業向け、教育機関向けのエディションはさらに6カ月の延長が可能だ。長期サービスエディションは、5年のサポートサイクルがあり、さらに5年の延長が行える。

 これ以外に、POSやATMといった機器に搭載されて利用されるWindows 10には、専用のエディションが用意され、5年のメインストリームサポートサイクルが適用される。さらに5年の延長サポートサイクルを追加することもでき、最長10年間、同一のWindows 10を利用できる。ただし、この長期サービス専用のエディションには、Feature Updateはなく、Quality、Security Updateのみとなる他、Microsoft EdgeなどのFeature Updateに含まれて更新される標準アプリケーションが付属しない。

 これらのサポートサイクルに対して、Windows 10のアップデートを行う方法として以下の3つのパターンがある。

  • 半期チャンネル(対象)/Semi-Annual Channel(Targeted)
  • 半期チャンネル/Semi-Annual Channel
  • 長期サービスチャンネル/Long-Term Servicing Channel
サポートサイクルに対するWindows 10のアップデート サポートサイクルに対するWindows 10のアップデート
Windows 10のアップデートには、3つのパターン(チャンネル)がある。

 「半期チャンネル(対象)」は、常に最新のFeature Updateを適用するもの。これにより、Windows 10は常に最新の状態に保たれる。Homeエディションは、このチャンネルの利用が強制される。ProやEnterpriseエディションでも選択は可能だ。

 「半期チャンネル」は、「半期チャンネル(対象)」に対して、約4カ月の時差を持ってアップデートを行うものである。4カ月とは、リリースされたアップデートに問題がないかどうかを確認しつつ、サードパーティーやハードウェアメーカーなどの確認を行う期間となる。安定したアップデートが行えるため、アップデート版などによる事故が起きにくいとされている。

 「長期サービスチャンネル」は、前述の「長期サービス」エディションのチャンネルで、Feature Updateがなく、Quality、Security Updateのみとなる。

 2018年4月現在の各バージョンとサービスモデルの状態は、下表のようなものになっている。

バージョン 一般配布日 サポート終了 延長サポート LTSB WIP CB CBB 終了に関する情報
(1507) 2015/07/29 終了   2020/07       Windows 10 Version 1507のCB/CBBのサービス終了
1511 2015/11/10 終了 終了 ×       OfficeとWindowsのサービスとサポートの変更
1607 2016/08/02 終了 2018/10/09 2021/08    
1703 2017/04/05 2018/10/09 2019/04/09 ×    
2017年7月27日 ルール変更 LTSC WIP SACT SAC
1709 2017/10/17 2019/04/09 2019/10/08 ×    
1803 2018/04/30 2019/10 2020/04 ×      
1809 2018/10 2020/04 2020/10 ×     ※ルールから予想
1903 2019/04 2020/10 2021/04 2024/04       ※ルールから予想
各バージョンとサービスモデルの状態
  • LTSC:Long-Term Servicing Channel。ルール変更前はLTSB(Long-Term Servicing Branch)。メインストリームサポート5年、5年延長可能
  • WIP:Windows Insider Preview。
  • SACT:Semi-Annual Channel(Targeted)。ルール変更前はCB(Current Branch)
  • SAC:Semi-Annual Channel。ルール変更前はCBB(Current Branch for Business)
  • SACT/SAC/WIPは2018年4月17日時点でのもの
  • Enterprise/Educationエディションは、6カ月の延長サポートがある
  • 日付が確定しているものは発表ベース。年月のみはルールから計算したもの
  • 新しいルールは2017年7月27日より施行。バージョン1703までは旧ルール
  • Windows 10 RTM(Build 10240)の時点ではルールが確定していなかった。また、年月によるバージョン表記もなかった

 なお、サービスモデルについては、2017年7月に改訂があり、名称などが変更された。例えば、「半期チャンネル」は、これ以前は「Current Branch for Business」と呼ばれ「CBB」などと略記されることがあった。現時点でも古い名称を使う文書が残っているため注意が必要だ。

従来の名称 略称 新名称(英語) 新名称(日本語)
Current Branch CB Semi-Annual Channel(Tergeted) 半期チャンネル(対象)
Current Branch for Business CBB Semi-Annual Channel 半期チャンネル
Long-Term Servicing Branch LTSB Long-Term Servicing Channel 長期サービスチャンネル
サービスモデルの名称変更前と後

「Windows Insider Program」って何?

 Windows 10のアップデートには、Windows Insider Programが関係する。Windows 10は、毎日Buildが作られている。これを「Daily Build」という。このうち、開発チームの評価で、一定水準を満たしたビルドは、Microsoft社内および社外の関係者にのみ配布されて評価が行われる。これを「Canary Build」と呼ぶ。

 なお、Quality Updateに含まれる修正は、開発チームとは別に作業が行われている。というのも、Windows 10はどの時点でも複数のバージョンが市場で稼働しており、報告された不具合が、その全てに影響する場合があるからだ。

 Canary Buildである程度の水準を満たしている場合(あるいは大きな問題がない場合)、適応可能なアップデート(Quality Updateの一部)を含めて、Preview Buildが作られ、Fast Ringを選択しているPCへWindows Update経由で配布が行われる。このPreview版をダウロードする方法は、Tech TIPS「Windows 10のプレビュー版をダウンロードする方法」を参照にしてほしい。

 この状態では、Canary Buildよりも多くのInsider登録者によりアップデートが行われる。この時点で、ハードウェアとの関係で問題などが出てくることがある。

 Windows Insider Programのビルドにおいて、リリース頻度を表すオプションを「リング」と呼んでいる。大きく「Fast Ring(ファーストリング)」「Slow Ring(スローリング)」「Release Preview Ring(リリースプレビューリング)」の3種類のリングがある。それぞれ安定性のレベルが異なり、ビルド リリースの頻度も異なっている。

 Fast Ringは、新しい機能や改善された機能がいち早く試せるものだが、ビルドの検証は少数のデバイスに対してのみ行われるため、安定性が低い場合がある。

 Slow Ringは、Fast Ringよりも検証が進み、安定したビルドとして提供される。一般に公開されるよりも早く、更新プログラムや新しい機能を試すことができる。

 Release Preview Ringは、一般公開直前に提供されるもので、更新プログラムや新しいアプリケーション、デバイスドライバなどを早期に利用したい場合に最適なビルドとなっている。

 Fast Ringで評価が進み、アップグレード処理などでの問題がなければ、Slow Ringに登録され、さらに多くのPCやユーザーによる評価が始まる。

 Microsoft社内のDaily BuildからFast Ringへの登録までは、1週間程度の時差がある。このパターンは、Feature Updateの最終版(毎年3月と9月の下旬)が完成するまで続く。

 Feature Updateは、最終版のPreview版が出てから3週間程度で一般向けへの配布が行われる。この間にQuality Updateが入り、最初の配布時には、OSビルドが更新されていることがある。


 このようにWindows 10では、メジャーバージョンを変えた新しいWindows OSを提供するのではなく、年に2回の大型のアップデート(Feature Update)によって機能を拡張している。そのため、OSのエディションと更新プログラム、サポート期間の関係が非常に複雑になっている。今後もWindows 10のアップデートは継続される予定となっている。アップデートの名称なども紛らわしくなっているので、本稿を参考にここで一度整理しておくとよいだろう。

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