「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ1224の詳細と使い方」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。
今回は「トレースフラグ1224」の詳細と使い方を解説します。
トレースフラグ1224は、ロック数によるロックエスカレーションの発生を無効化する設定です。SQL Serverの全バージョンに対応します。
SQL Serverは整合性や一貫性を保つために、ロックを使用してデータを保護しています。通常は粒度の細かい1行単位でロックし、同時実行性を高めています。しかし、更新対象などが膨大でロックの数が多くなると、オーバーヘッドやメモリ逼迫(ひっぱく)が発生する可能性があります。
そのためロック数やメモリ使用量に応じて、取得済みのロックの粒度を粗くするロックエスカレーションを起こすことがあります。ロックエスカレーションが発生すると粒度の粗いロックが取得されるため、オーバーヘッドやメモリ逼迫が緩和されますが、広範囲にロックするために同時実行性が低下してしまいます。
ロックエスカレーションの発生はSQL Server Profilerなどを使用して確認でき、EventSubClass列では発生理由も確認できます。「0 - LOCK_THRESHOLD」はロック数によってロックエスカレーションが発生し、「1 - MEMORY_THRESHOLD」はメモリサイズによってロックエスカレーションが発生したことを示しています(図1)。
トレースフラグ1224を有効にするとロック数によるロックエスカレーションの発生を無効化できます。トレースフラグ1211(関連記事)でもロックエスカレーションを無効化できますが、1224では、設定後もメモリサイズによるロックエスカレーションは発生します。そのため、ロックメモリ増大によるメモリ不足が発生しにくくなります。
設定方法 | 可/不可 | 要/不要 |
---|---|---|
スタートアップ | ○ | − |
グローバルスコープ | ○ | − |
セッションスコープ | ○ | − |
クエリスコープ | × | − |
トレースフラグ 3604/3605 | − | 不要 |
Update文などでロックを多数取得する処理を実行すると、オーバーヘッドを避けるためにロックエスカレーションが発生します。ロックエスカレーションが発生すると、排他(X)ロックの粒度がKEYからOBJECTへと粗くなり、ロックの総数が少なくなっていきます(図2)。
トレースフラグ1224を設定した状態で同じクエリを実行すると、ロックエスカレーションは発生しません(図3)。しかしロック数がさらに増加し、ロックメモリのサイズが増えると、ロックエスカレーションが発生します(図4)。
ロックエスカレーションが発生するロックメモリのサイズは、sp_configureのlocksによって変更できます。さらに、テーブル単位であれば、ALTER TABLEのLOCK_ESCALATIONオプションを変更することで、ロックエスカレーションの発生有無を設定できます。
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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