Microsoftが、AIの開発と活用で重視すべき「6つの倫理的要件」を発表。急速に開発が進むAIは、一方で信頼と倫理に関する複雑な問題を提起すると指摘。その疑念を払拭し、人間がAIの恩恵を最大限に享受するには「6つの倫理的要件」が重要だとしている。
日本マイクロソフトは2018年04月23日、AI(人工知能)の開発と活用に当たって重視すべき「6つの倫理的要件」を発表した。
発表は、Microsoft Asia プレジデントのラルフ・ハウプター(Ralph Haupter)氏によるもの。
同氏は、AIの技術開発は加速しており、ヘルスケア、教育、気候変動への対策、穀物生産など、人間のあらゆる営みにおいて大きな進化を遂げており、AIを人間の創造性と組み合わせることで、個人の可能性は最大化され、すばらしい成果の達成が期待できるとしている。
例えば、世界各地のMicrosoftの研究所では、人類にとって最も深刻な疾病の1つであるがんの治療法を、試験管や医療機器ではなく、AIと機械学習で発見しようとしているという。
同社は、機械学習と自然言語処理を活用することで、がん専門医に膨大な研究資料を調査するための直感的な方法を提供し、患者に最も効果的で個別化されたがん治療法を発見できるよう支援。また、機械学習とコンピュータビジョンの組み合わせにより、放射線科医が患者の腫瘍の進行状況を詳細に把握し、治療法を発見できるように支援している。
一方で同氏は、AIが信頼と倫理に関する複雑な問題を提起するとも指摘する。
例えば、AIが社会課題を解決する可能性を持つことは明らかだが、その可能性を最大化するために不可欠とされる大量データの収集、集約、共有は、ユニバーサルアクセス、プライバシー、透明性などに関する倫理上の議論を引き起こすという。
ある意味で、AIは、人間のテクノロジーとの関わり方を大きく変化させ、テクノロジーの信頼とは何かを再考することが必要になっていると説明。
また、意思決定プロセスへのAIの活用が進む中、どうすればAIがあらゆる人間を公平に扱うようにできるのか。普及が進むだけでなく、知的レベルも強化されていくAIシステムの責任を人や組織が負うようにするにはどうすればよいか。これらは、AIの普及が加速する中、個人、企業、政府が熟慮、分析し、解明しなければならない重要な疑問点だと述べている。
Microsoftでは、AIがその可能性をフルに発揮し、人間がAIの恩恵を最大限に享受するには、「信頼」という堅固な基盤が必要であると考え、信頼できるシステムを構築しなければならないとしている。
そこで、最終的にAIが信頼できる存在であるために、AIソリューションの開発と展開の中核にあるべき基準として、「プライバシーとセキュリティ」「透明性」「公平性」「信頼性」「多様性」「説明責任」の6つを設定したという。
Microsoftでは、以上の6つの基準をAI製品とサービス設計の規範とし、同社製品がこれらの基準に準拠するかどうかを制度的に確認するための社内委員会も設置する。同社は、AIの将来とAIが作り出す未来について楽観的だが、その未来を実現するには、政府、企業、学術界、市民団体が協力して、信頼できるAIシステムを構築していくことが不可欠だとしている。
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