さて、話をサービスマネジメントに移そう。
この野球場の一連の体験がまさに”ボールパーク”というサービスであり、そのサービスは複数のさまざまなテクノロジーやサービス、外部協業企業との組み合わせから構成されている。そしてこのサービスはサービスマネジメントの概念に照らし合わせると以下の3種類のカテゴリに分類されるだろう。
新たなサービスや体験の創造はサービスマネジメントの専売特許というわけではない。しかし、ビジネスにおける新たなサービスや体験を創造するための基本的な考え方がサービスマネジメントに備わっているのも事実だ。昨今、新たなサービスや体験の創造には複数のテクノロジーや外部も含めたサービスの組み合わせが不可欠であり、サービスマネジメントにはそういった複雑な構成を管理するという発想が根源的に内包されている。
ここまで野球場、ボールパークの話を例にしてビジネスにおけるサービスシフトとサービスマネジメントを見てきた。では、ここであらためてIT部門が提供するサービスに目を向けてみよう。
前編(第10回)では会議室を例に取り上げたが、もっと規模や重要性の高い基幹システムを例にして、サービスが複数の社内外(外部ベンダーも含む)テクノロジー、サービス、プロセスなどからの組み合わせから構成されていることを確認したい。
基幹システム、例えばERPサービスを例にすると、そのコアに存在するのはERPソフトウェアだろう。しかし、ERPソフトウェアは単独では稼働しない、つまり単体では顧客やユーザーに価値を提供するサービスとして成立しない。複数のベンダーが提供するハードウェアとOS、ミドルウェア、あるいはクラウドサービスやモニタリングなどから構成されて初めてサービスとして稼働する。
実用面を考えると、ネットワークサービスも必要だし、PCやプリンターなどワークプレースサービスも必要となるだろう。運用面を考えれば、問い合わせやインシデントの管理、ビジネスの変化に対応した変更の管理、すなわちサービスデスク機能も必須だろう。もちろんリスクやセキュリティの管理プロセスも実行しなければならない。
ERPサービスは外部ベンダーも含めた複数のテクノロジーやサービスからの組み合わせから構成されていることは自明だ。そしてこちらも以下の3つのサービスに分類できるわけだ。
さらに昨今は、このサービスの提供先として、あるいはこのサービスを構成するに当たってテクノロジーやサービスの調達先として、その対象がグローバル化していることも見逃すことはできない。海外のデータセンターやサービスデスクの活用、海外の外部ベンダーと契約をした上で、世界中のオフィスにERPサービスを提供するといった具合にだ。
このような海外のサービスも含む複数のサービスの組み合わせからなるサービス戦略の策定や、設計、構築そして日々のオペレーション(さまざまなプロセスが含まれる)と継続的改善の考え方を下敷きとして、ビジネス自体をモノからコトへ、すなわちビジネスのサービスシフトに対応していく必要があるのだ。
本連載で何度も述べてきたことだが、「あなた」は規模や程度の差こそあれ、IT部門の一員として、実はこのような複雑な構成からなるサービスを、管理・提供してきた実績が既におありだということをもっと強く自負して良いと思う。
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