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タクシー配車アプリ「タクベル」を手掛けるDeNAがAWSを選択した理由2500台のタクシーで運用を開始

DeNAの執行役員でシステム本部長を務める小林篤氏が、タクシー配車アプリ「タクベル」のシステムで活用するAWSの構成概要を紹介した。小林氏は「AWSのソリューションを上手に組み合わせることが現時点で最適なソリューションだ」と分析する。

» 2018年06月11日 08時00分 公開
[石川俊明ITmedia]
DeNA 執行役員 システム本部 本部長 小林篤氏 DeNA 執行役員 システム本部 本部長 小林篤氏

 2018年5月30日〜6月1日、東京都港区にあるグランドプリンスホテル新高輪で「AWS Summit Tokyo 2018」が開催された。「AWS Summit Tokyo」は、Amazon Web Services(以下、AWS)に関する情報を共有したり、活用事例を紹介したりするカンファレンスイベントだ。

 本稿ではディー・エヌ・エー(以下、DeNA)の講演「DeNAオートモーティブにおけるAWS活用事例」から、講演内容の一部をお届けする。

DeNAが推進するオートモーティブ事業の1つ「タクベル」

 あらゆる人やモノが、安全・快適に移動できる世界を目指す「Anything,Anywhere.」を掲げるDeNAオートモーティブ事業本部が展開する事業の1つが「タクベル」だ。タクベルは特定のタクシー事業者に依存しないタクシーを配車できるスマートフォンアプリだ。

 現在は神奈川県横浜市、川崎市のエリアでサービスを展開している。タクベルの狙いについて小林氏は「タクシーの需要予測が行える『データ収集基盤』を構築し、タクシーの『潜在需要』を獲得する。日本に進出してきた白タクサービスを手掛ける海外企業より低価格で、質の良いタクシーサービスを提供したい」と述べた。

タクシー配車アプリタクベルが実現すること タクシー配車アプリタクベルが実現すること

「タクベル」のデータ収集基盤

 小林氏はタクベルのデータ収集基盤を構築するに当たって「事業が社会インフラとして浸透するには、5年、10年の歳月をかけてサービスを継続する必要がある。スピード感を持ち、陳腐化しない開発技術を選択する必要があった」と振り返る。

 そこで選択されたのがAWSだったという。AWSを選定した理由について小林氏は「当初はGCP(Google Cloud Platform)での構築を検討していたが、AWSの豊富な機能が魅力でGCPから切り替えるに至った」と述べた。

タクシー配車アプリ「タクベル」のネットワーク構成図 タクシー配車アプリ「タクベル」のネットワーク構成図

 需要予測を行うデータには、タクシーメーターの料金情報や車載端末の情報に加えて、乗務員用のスマートフォンと、DeNAが独自に開発した「BLE Logger」から取得するデータを併せて利用する。数万台の車両からリアルタイムにデータを収集するには、HTTPだと遅延が発生してしまう。そこでMQTT(Message Queuing Telemetry Transport)を採用し、少ない遅延でデータ収集ができるような技術構成にした。

タクシー内のハードウェア構成 タクシー内のハードウェア構成

 データの送信時には、データフォーマットにBSON(Binary JSON)形式を採用。データを送信したという情報をトリガーに「AWS IoT」で「AWS Lambda」を呼び出し、送られてきたBSONデータをJSONデータにコンバートする。

データ送信部分の構成図 データ送信部分の構成図

 JSONデータは「IoT RuleEngine」を利用して3つの用途に合わせて保存される。まず、データ分析ツールで利用するデータは、「Amazon Kinesis」でバッファリングしてLambdaを通じて外部のDWH(Data Warehouse)に送信される。また、タクベルのユーザー向けアプリで利用するデータはLambdaを通じて「Amazon Elastic Search Service」に保存される。そして、タクシーの位置をリアルタイムにモニタリングするためのデータは、「IoT Topic」を通じてモニターシステムに登録される。

受信後のデータの流れ 受信後のデータの流れ

 小林氏は「AWSの機能を上手に組み合わせることが、現時点で最適なソリューションである」と述べた上で注意点も挙げた。

 「AWSは高機能であるとはいえ、安易な設計にしてしまうとコストがかかってしまう。特にLambdaは立ち上げやすい分、実行したままにしているとコストが増えてしまうので、データを処理する場合にはまとめて実行する、『IoT Action』で実行可能なデバイスへのメッセージ送信などにはLambdaを利用しないなど、Lambdaをあまり使わない設計にすることが大切だ」

 最後に小林氏は、「AWSは社会課題を解決するための技術だと考えている。今後もパートナーと協力しながら社会課題を解決していきたい」と展望を述べて講演を締めくくった。

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