【トレースフラグ 1462】──可用性グループでのデータ転送時に圧縮を無効にするSQL Serverトレースフラグレファレンス(28)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ1462の詳細と使い方」を解説します。

» 2018年06月26日 05時00分 公開
[内ヶ島暢之@IT]

SQL Serverトレースフラグレファレンス一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。

 今回は「トレースフラグ1462」の詳細と使い方を解説します。

 トレースフラグ1462は、非同期レプリカへのデータ転送で、データ圧縮を無効にする設定です。SQL Serverの全バージョンに対応します。

 SQL Serverが備える可用性グループの機能には、2種類の構成があります。同期レプリカと非同期レプリカです。同期レプリカは一般にプライマリと同じデータセンターに配置されることが多く、非同期レプリカは要件次第ではディザスタリカバリに用いるため遠隔地に配置されることがあります。

 遠隔地へのデータ転送では転送遅延を想定し、既定動作としてログストリーム(ログデータを送るチャネル)ではデータを圧縮した上で転送します。

 データ圧縮を施すと、一般にデータ転送量を削減できますが、CPU利用率は上がります。圧縮効果とCPU利用率はトレードオフの関係にあり、CPU利用率を下げたい場合には、このトレースフラグを用います。

設定可能なスコープ

トレースフラグ1462
設定方法 可/不可 要/不要
スタートアップ
グローバルスコープ
セッションスコープ
クエリスコープ
トレースフラグ 3604/3605 不要

動作例

 1万件のデータ登録をした際のCPU利用率とネットワーク転送量を図1と図2に示しました。図1がトレースフラグ1448を使わなかった場合、図2が使った場合です。

 データ計算をしながら転送しているため、CPU利用率を単純には比較できません。ネットワークの総転送量はトレースフラグを設定した図2の方が、5%程度下がりました。ただし、実行時間は12%程度図2の方が伸びています。

 単一のバッチ処理では効果が見づらい部分もありますが、トレースフラグで圧縮を解除すると、ネットワークの総転送量が上がり、実行時間が延びる傾向にあることが分かりました。処理が複数重複する状態を作ると、この傾向が顕著になると思われます。

図1 図1 可用性グループの環境でデータ更新を行ったときの様子(トレースフラグ1462を設定しなかった場合) 赤がCPU利用率(10倍に拡大)、緑がネットワーク転送量を示す
図2 図2 トレースフラグ1462を設定したときの様子(構成は図1と同じ)
 ※本Tipsは、Windows Server 2012 R2上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境で解説しています。

筆者紹介

内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)

ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。

椎名 武史(しいな たけし)

ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。


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