「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ2453の詳細と使い方」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。
今回は「トレースフラグ2453」の詳細と使い方を解説します。
トレースフラグ2453は、テーブル変数と他テーブルを結合した際に再コンパイルする設定です。SQL Server 2012 SP2以降に対応します。
テーブル変数はロックやログ記録のリソースが少なくてすむため、一時テーブルの代わりなどに使用することがあります。しかしテーブル変数は統計情報を持たず、自動で再コンパイルされることはありません。このためテーブル変数に多量のデータが含まれていて、他のテーブルと結合する場合に非効率な実行プランが選択される場合があります。
この現象を回避するためには、テーブル変数を使用する際に「OPTION (RECOMPILE)」を付与して再コンパイルする必要があります。
トレースフラグ2453が有効になっている場合は、OPTION (RECOMPILE)が付与されていなくても、テーブル変数が他のテーブルと結合するクエリで再コンパイルを実行し、効率的な実行プランを選択できるようになります。
設定方法 | 可/不可 | 要/不要 |
---|---|---|
スタートアップ | ○ | − |
グローバルスコープ | ○ | − |
セッションスコープ | ○ | − |
クエリスコープ | × | − |
トレースフラグ 3604/3605 | − | 不要 |
1000行のデータが格納された通常のテーブルと、1000行のデータを格納したテーブル変数を結合してみましょう。通常のクエリではテーブル変数の予測行数が1行となるため、結合ではNested Loopsが選択されました(図1)。
OPTION (RECOMPILE)を付与したクエリを実行するとテーブル変数の予測行数が1000行に変わり、結合ではMerge Joinが選択されました(図2)。
トレースフラグ2453を有効にするとOPTION (RECOMPILE)を付与しなくてもテーブル変数の予測行数が1000行になり、Merge Joinが選択されました(図3)。
トレースフラグ2453をクエリレベルでQUERYTRACEONオプションを用いて付与する場合は、RECOMPILEオプションを付与する場合と手間が変わらず、有効にはなりません。セッション以上のレベルで有効にする必要があります。
セッション以上のレベルで有効にすると、目的のテーブル変数以外でも再コンパイルされてしまう可能性があります。トレースフラグ2453を実装する際には、検証環境で十分なテストが必要です。
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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