Microsoft、Windowsドライバ開発者向けのオープンソースフレームワーク「Driver Module Framework(DMF)」を公開Windowsドライバの開発効率と保守性を高める

Microsoftは、Windowsデバイスドライバの開発者向けに、オープンソースフレームワーク「Driver Module Framework(DMF)」を公開した。DMFを使うことで、Windows Driver Framework(WDF)ドライバを簡単に開発できるだけでなく、ドライバ間でコードを共有できる。

» 2018年08月17日 12時30分 公開
[@IT]

 Microsoft Devicesチームは2018年8月15日(米国時間)、Windowsデバイスドライバの開発者向けに、オープンソースフレームワーク「Driver Module Framework(DMF)」を公開した。DMFを使うことで、シンプルで構造化された「Windows Driver Framework(WDF)」ドライバを簡単に開発できるだけでなく、ドライバ間でコードを共有できるようになる。

 DMFはWDFの拡張であり、「DMFモジュール」と呼ばれる新しいWDFオブジェクトのライブラリを提供する。DMFモジュールは他のDMFモジュールや、WDFモジュール、ハードウェアと、構造化された方法で情報をやりとりできる。

 現在、Microsoft Devicesチームは、全てのWDFドライバについてDMFを使って作成している。DMFモジュールは適切にテストでき、再利用することや、新しい要件に合わせて後から拡張することが可能だ。DMFの利用により、優れたアーキテクチャに基づいたドライバを開発でき、バグ修正の効率も高まるという。DMFモジュールのバグを修正すると、そのモジュールを使って作成した全てのドライバに、その修正が自動的に適用されるからだ。

DMFのアーキテクチャとは

 図1に典型的なWDFドライバの設計を示した。

図1 WDFドライバの典型的な設計(出典:Microsoft)

 図1の設計ではドライバはただ1つのデバイスコンテキストで状態を保持している。内部のユニット(BUTTONなど)間でアクセスの同期がとれないとデータの破損やデッドロックが起きる。別のドライバに一部のユニットを再利用したいとしても、ユニット間の複雑なやりとりを理解しなければならない。

 DMFを使ってWDFドライバを作成すると、このようなドライバのアーキテクチャを改良できる。

 その場合、DMFのクライアントモジュールと幾つかの構築済みの一般ユーティリティーモジュールを使ってドライバを作成する。以下では、DMFモジュールを使用するコードを「クライアントドライバ」とした。

 WDFと個々のDMFモジュールの間には薄い抽象化レイヤー(DMF)があり、これを介してモジュールがバインドされ、WDFイベントが各モジュールにディスパッチされる。図2の矢印が示すように、DMFモジュールは相互に明確に定義された方法で情報をやりとりする。クライアントドライバとも同様にやりとりする。

 全てのモジュールがデバイスコンテキストを共有するのではなく、各モジュールが固有のコンテキスト領域(図2中の緑色の部分)を使用し、自身の状態を維持する。

図2 DMFベースのWDFドライバの特徴(出典:Microsoft)

 Microsoftは、DMFベースのWDFドライバと、従来のWDFとの重要な違いを幾つか挙げている。

  • 図2のように、WDFはDMFとやりとりし、DMFはドライバとやりとりする
  • デバイスコンテキスト(図2中の緑の部分)は、モジュールとクライアントドライバ固有コードごとに独立して存在する。個々のデバイスコンテキストは、各モジュールに必要な要素のみを保持する。モジュールは、他のモジュールのデバイスコンテキストにアクセスできない
  • WDFコールバック(図2中の赤の部分)は、モジュールとクライアント固有コードごとに独立して存在する。WDFがクライアントドライバをコールすると、DMFがそのコールを横取りし、モジュールツリー内の各モジュールにディスパッチする。各モジュールは、それぞれに適合するコールバックを処理する。最後に、DMFがそれらの各モジュールからのコールバックをクライアントドライバのコールバックへとディスパッチする
  • 図2中の矢印は、モジュールとクライアント固有コード(Client Specific Code)の間のフローを示している。この例では、クライアント固有コードは3つのモジュール(ACPI、BUTTON、STREAM)のみとやりとりできる。GPIO、FIFO、LIST、THREADとはやりとりできない。さらに、ACPIはFIFOなどとやりとりできない。ソースコードを見なくても、このドライバにおけるデータフローを容易に理解できる

 Microsoftは以上のような特徴をまとめて以下のように述べている。

 「各モジュールは、自己完結的な1つのユニットだ。固有のコードと、コンテキスト、コールバックを持つ。そのおかげで、コードを簡単に再利用できる。このようにドライバを整理することで、多くの問題を解決できる」

DMFモジュールはWDFに取って代わるものではない

 DMFは、WDFの設計とやりとりのパターンに従っている。WDFに取って代わるのではなく、ドライバがOSのインタフェースに直接アクセスすることも禁じていない。

 開発者がDMFを使うメリットは、デバイスドライバが実行しなければならないタスクを、小さなユニットに簡単に分割できることだ。1つのタスクを実行するこうした自己完結的な小さいユニットを、モジュールとして作成できる。

 DMFの現行リリースには幾つかのDMFモジュールが含まれている。バッファー管理モジュールや、タスク管理モジュール、通知モジュール、各種入出力ターゲットへのアクセスモジュール、各種ユーティリティーモジュールなどだ。

 MicrosoftはDMFとDMFモジュール、テンプレート、サンプルコードを、GitHubで公開している。今後もコードの改良や新しいモジュールの追加を継続するという。

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