ここまで読んで、「何だ、自己啓発書disか」と思った人がいるかもしれません。
いえ、そういうことを言いたいわけではありません。
自己啓発書を読んで前向きになった瞬間は確かにあったし、好きな著者の言葉に触れているだけで、それだけで良い気分になれました。「人生の暗黒期」を乗り越えるきっかけになったことは間違いありません。「全てが無駄だ」とは、思いません。
でも、本に書かれていることは、あくまでも「他人の人生」であって、「自分の人生」ではありません。著者の経験では、確かにそうだったのかもしれない。けれども、それが自分に当てはまるかは分からない……。
私は、「自分の人生」を生きたくなりました。
「自分の人生」を生きるために、最近、意識的にやっているのが「アウトプット」です。
本を読むのが「外部の情報」に触れる作業なら、アウトプットは、自分の中にある「内部の情報」に触れる作業です。つまり「自己対話」ですね。
例えば、私が今意識的に取り組んでいるのは、頭の中で思ったり感じたりしたことを「文字に起こす」ことです。ブログは以前から書いていますが、改めて意識的に書くようにしています。
「書く」と決めて生活すると、「あれ? これって何かおかしいな」「そうそう、大切なのはこういうことだよな」のように、今までなら見過ごしていたようなことから、思考が始まります。
思考初期は、まだ頭の中でモヤモヤしています。それを言語化するためには、「つまり、何が言いたいのか」を整理したり、「どのように伝えればいいか」を考えたりします。
このプロセスを踏むと、モヤモヤした考えがはっきりとしてきて、気持ちが整理できたり、大切な価値観に気付いたりするのです。
また、文字に起こす際、頭の中にある情報だけでは論理的な説明が難しい場合は、Webなどを調べる=「インプット」することがよくあります。
このように、アウトプットを意識すると、結果的に、自分にとって必要な情報がインプットされます。
自己啓発書を読んでいたときは、確かに良い気分になりました。でも、「他人の人生」を生きていたような気がします。
それはまるで、きれいな(または、格好良い)モデルが着こなしている洋服を雑誌で見て、「いいなぁ」「自分もああなりたいなぁ」と、憧れているようなものです。でも、実際は顔は違うし、体形も違う。モデルが着ている服を着たからといって、モデルになれるわけではありません。
一方、自己対話をし、アウトプットを意識している今は、「私の人生」を生きている感じがします。
自分に似合う洋服を探すためには、雑誌を参考にするのもいいかもしれません。でも、最終的には、自分に似合う服は、自分の中に聞いて、自分で選ぶしかないのでしょうね。
エンジニアとして、自分らしく働き、自分らしく生きるためには、自己啓発書に書かれていることは頭の片隅に置いておくぐらいにして、目の前の課題に取り組んだ方が、お先真っ暗だったところに光が差し込んできて、未来は切り開かれていくのではないかなぁ。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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