IDC Japanによると、国内企業の9割以上がデジタルトランスフォーメーション(DX)と企業戦略を連携して実施しており、その目的の中心は「データの資本化/収益化」といったデータ活用だった。一方、グローバル調査と比べると、国内企業はDXの課題認識が低いといった課題も明らかになった。
IDC Japanは2018年8月28日、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みに関する調査結果を発表した。それによると、DXに取り組む国内企業は、企業戦略との連携を進め、データの収益化を目指す姿勢が強いことが分かった。
同調査は、DXの進捗(しんちょく)、組織体制、課題などを把握するため、世界27カ国のビジネスリーダーを対象としたグローバルな調査の一環として行われたもの。サンプルサイズは国内が150、国内を含めた世界が1987となった。
「DXと企業戦略の連携」についての質問では、国内企業の98.7%が「何らかの形で両者の連携を保っている」ことが明らかになった。
「連携の仕方」については、「部分的/短期的な連携にとどまっている」とする回答比率が、「全体的/長期的な連携を保っている」とした回答を上回ったが、「他社に比べてDXの取り組みが進んでいる」と考えている企業は、「DXと企業戦略がより全体的/長期的な形で結び付いている」傾向が見られた。IDCは、DXの先進企業では、DXとビジネスが一体化していることが分かる結果となったとコメントしている。
また、「DXを進める際に優先事項としていること」を聞いた質問では、国内企業の52.7%が「データの資本化/収益化」と回答。IDCでは、ビッグデータやAI(人工知能)といったデータ活用のための技術が大きな進歩を見せ、それに伴い、企業間でデータを中心とした提携の動きが広がっていることなどを背景に、「DXとはデータを活用したビジネスを行うこと」という認識が広まりつつあると分析する。
一方、国内企業についての結果は、世界の調査結果とは若干異なる傾向が見られることも分かった。
例えば、上記の「DXを進める際の優先事項」についての回答比率では、世界の企業は「業務の卓越性」や「顧客体験」への回答も、「データの資本化/収益化」と同等かそれを上回る結果となり、DX実施の目的の多様化が伺えた。
また、「DXのKPI(主要業務評価指標)の利用方法」を聞いた質問では、国内企業が「主に従業員の動機付けや社内外への公開」といったハイレベルなものにとどまっている一方、世界の企業では「四半期ごとや月ごとの業績レビューに使う」といった回答が多く、DXを日々の業務と連動させる傾向が強いことが分かった。
今回の調査結果について、IDCでは、国内企業のDXへの取り組みは進んでいるものの、世界の企業の動向と比べると取り組みの優先事項が特定の領域に偏っており、DXと企業戦略は連携しているものの、実オペレーションとの関連性は弱い(DXと日常業務とが連携していない)傾向が見られると総評。
これらは、DXが一時的な流行で終わってしまい、真に国内企業の変革に結び付かない結果を招く可能性をはらむ、と警鐘を鳴らす。
「課題先進国」といわれる日本企業はDXを真剣に捉えて、その成否が今後の企業の成長や“生き残り”を左右することを認識し、企業戦略、事業戦略/戦術、日々の業務など、企業のあらゆる活動の中にDXが埋め込まれているような体制を構築していく必要があると指摘している。
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