Azureポータルには日々改良が加えられています。Azure仮想マシンの作成に関連する最近の変更と、仮想マシンのサイズ選択時のポイントについて紹介します。
Microsoft Azureの「Azureポータル」(https://portal.azure.com/)では、「Azure Marketplace」からイメージを選択し、「仮想マシンの作成」ブレードを使用することで、簡単にWindowsまたはLinux仮想マシンをデプロイすることができます。
最近になって、Azureポータルの「仮想マシンの作成」ブレードにある「2 サイズ(仮想マシンのサイズの選択)」ページが変更されました。この変更は、2018年9月になってからアナウンスされましたが、筆者が確認した限り、2018年8月の時点で既に変更されていました。
以前は、選択したディスクの種類(Premium SSDまたはStandard HDD)で利用可能な全てのシリーズ/サイズが一覧表示されていました。
しかし、少し前からコンピューティングの種類に「現在の世代」(英語の場合はCurrent generation)と「前の生成」(英語の場合はPrevious generationであり、現在の日本語表現は不適当)が追加され、「現在の世代」とディスクの種類の両方が初期値として選択された状態で、利用可能な仮想マシンのシリーズ/サイズが一覧表示されるようになっています(画面1)。引き続き、「汎用」「コンピューティング最適化」「メモリ最適化」など、ワークロードの種類によるフィルターも可能です。
旧世代のシリーズ/サイズを指定するには、「前の生成」に切り替える必要があります。旧世代には、Microsoft Azureの初期から存在する「A(Basic/Standard)」シリーズと、その次に登場した「D(v1)」シリーズ、「DS(v1)」シリーズが含まれます(画面2)。旧世代のシリーズ/サイズの完全な一覧については、以下のドキュメントで確認してください。
既定でフィルターされるようになったことから分かるように、旧世代のシリーズ/サイズの使用は、現在は推奨されていません。単純に低い単価で利用できると思ってこれらのシリーズの利用を考えているのなら、その前に、仮想マシンが提供するパフォーマンスを考慮し、きちんと単価を比較検討してから決めることをお勧めします。
Azure仮想マシンのシリーズ/サイズによるパフォーマンスの違いは、以下の「Azureコンピューティングユニット(ACU)」の値で比較できます。ACUの一覧では、Windows仮想マシンでHyper-Vやハイパーバイザーに依存する機能を評価できる「入れ子構造の仮想化(Nested Virtualization)」をサポートするシリーズを知ることもできます。
シリーズ/サイズの選択によっては、同じCPU数、メモリ割り当てであっても、最新の高性能なシリーズ/サイズの方が低い単価で利用できる場合があります。例えば、旧世代のDS2は、2つの仮想CPU、7GBのメモリ、最大IOPS((I/O Per Second)が6400、ACUが160で、推定月額料金は1万2833円です。これに対して、最新のD2s_v3は、2つの仮想CPU、8GBのメモリ、最大IOPSが3200、ACUが160〜190で、推定月額料金は9749円です(価格はいずれも2018年9月時点)。
仮想マシンのサイズ選択とは関係ありませんが、Azure Marketplaceには現在、「Windows Server 2019 Datacenter」というイメージが存在します。Windows Server 2019は2018年中にリリースが予定されている、長期サポートチャネル(Long-Time Servicing Channel:LTSC)であるWindows Server 2016の後継バージョンです。
Azure仮想マシン環境でWindows Server 2019を評価したいと考えている方も多いと思いますが、現在、Azure Marketplaceで提供されているWindows Server 2019のイメージは利用しない方がよいかもしれません。
当然のことながら現在、Azure Marketplaceで利用可能なイメージは、Windows Server Insiderのプレビュービルドです(2018年9月10日時点)。また、公開元が「Microsoft Hyper-V」となっており、ミスなのか意図的なのか分かりませんが、課金方式も異なります(無料のAzureクレジット枠がある場合でも、その枠では利用できない旨がデプロイ開始前に警告されます)。
本連載第54回で紹介した方法でイメージの作成日を調査してみたところ、2018年5月17日に作成されたイメージでした(画面3)。
時期的に考えると、Windows Server 2019プレビュービルド17666で作成されているものと思われます。その後、新しいプレビュービルドは次々にリリースされている(2018年8月末時点でビルド17744)。ビルドが古いという意味でも、このイメージは使用しない方がよいでしょう。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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