サーバ主記憶の拡張技術で処理性能が3.6倍に――富士通が実証実験サーバ1台で10台分のインメモリ性能

富士通研究所と富士通は、フラッシュメモリを利用してサーバの主記憶容量(DRAM)を仮想的に拡張する技術「MMGIC」の実証実験をインドSify Technologiesの協力を得て実施した。その結果、同技術を適用すると、サーバ1台で10台分と同等の処理性能を発揮することを確認した。

» 2018年09月20日 11時30分 公開
[@IT]

 富士通研究所と富士通は2018年9月19日、共同で開発したメモリ拡張技術「MMGIC」をサーバに適用して実証実験を行い、サーバ1台当たり10台分と同等の性能を引き出すことに成功したと発表した。システム全体で比較すると、性能が最大約3.6倍に向上したという。

 サーバに実装可能な主記憶容量は限られているため、対象データを全て主記憶に載せて処理するインメモリ処理システムでは、大容量データを処理する際に主記憶容量が足りずに処理性能が大きく低下してしまう課題がある。

 これまでもフラッシュメモリを用いた大容量SSDとDRAMを組み合わせて単一のメモリのように扱い、インメモリデータベース向けに利用する技術が一般に利用されている。しかし、SSD部分の比率が高まる(容量が大きい)ほど、SSDへのアクセスが増加し、処理性能の足を引っ張ってしまっていた。

 MMGICは、2社が2015年11月に開発した技術。フラッシュメモリをキャッシュメモリとして活用し、サーバの主記憶(DRAM)容量を仮想的に大きくする。サーバ上のソフトウェアが個々のフラッシュメモリを直接読み書き可能なSSDのハードウェアと、インメモリデータベースからの読み込みを多数のフラッシュメモリに振り分けて並列動作させるソフトウェアから成る。

 実証実験ではこのSSDを用いて、高速アクセスが可能なDRAMと、比較的低速だが安価で大容量化が容易なフラッシュメモリの2種類のメモリ空間を構築し、頻繁にアクセスされるデータをDRAM、アクセス頻度の低いデータをフラッシュメモリに配置するようソフトウェア制御した。

インメモリ処理に使うデータをアクセス頻度に応じて2種類に切り分け、頻度が低い部分をフラッシュメモリ(MMGIC)側に置くことで性能劣化を抑え、頻度が高い部分をDRAMに置くことで性能を向上させた(出典:富士通

Webシステムで実証実験

 今回の実証実験は、富士通と2015年から戦略的パートナーシップを結んでいるインドのSify Technologiesのデータセンターで、2017年8月から2018年6月にかけて実施した。

 Sify Technologiesが運営する一般ユーザー向けのポータルサイト「sify.com」を構成するWebシステムで実証実験を進めた。特にレスポンスが重視され、インメモリ処理の需要が高いキャッシュサーバ10台のうち1台にMMGICを適用した。

キャッシュサーバのインメモリ処理が追い付かなくなるとストレージへの直接アクセスが発生し、システムの応答が悪くなる(出典:富士通

 同Webシステムではキャッシュサーバとして主記憶容量が256GBの富士通製PCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY」を利用している。ここで、sify.comが実際に使っている3TBのデータとアクセスパターンを用いて実験した。

 実証実験では2種類の構成を比較した。2.5TBのフラッシュメモリを使ったMMGIC技術を適用した場合と、主記憶のみの場合だ。その結果、キャッシュサーバ単体とWebシステム総合の性能がそれぞれ改善したことが分かった。

 MMGICを適用した場合、性能が劣化することなくサーバ10台分の性能を1台で達成した。これによりWebシステム全体の処理性能が向上し、性能は約3.6倍に高まったとしている。

MMGICを適用するとシステムのスループットが約3.6倍に向上した。サーバ単体では適用前の約10倍の処理性能を発揮した(出典:富士通

 具体的な性能の違いはサーバのスループットのピーク処理性能に現れた。主記憶のみの構成の場合は1台当たり毎秒232MB、10台で毎秒834MBだったが、MMGICを適用すると1台で毎秒826MBに向上した。

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