「インターネット」で勝てなかった日本が、「深層学習」で勝つには 東大・松尾豊氏「深層学習の現状は、1998年のインターネットに近い」(1/2 ページ)

NVIDIAが開催した「GTC Japan 2018」で、東京大学 特任准教授、日本ディープラーニング協会 理事長の松尾豊氏が登壇。深層学習の原理や、深層学習に関する研究の現状について説明し、今後、実社会で深層学習がどう扱われていくのか、持論を展開した。

» 2018年10月17日 05時00分 公開
[石川俊明@IT]

 NVIDIAは2018年9月13、14日に「GTC Japan 2018」を開催した。本稿では、東京大学の松尾豊氏の講演「人工知能をビジネスに実装するとき、今やるべきこと」の内容を要約してお伝えする。

あらためて学ぶ、深層学習の原理とは

東京大学 特任准教授、日本ディープラーニング協会 理事長の松尾豊氏 東京大学 特任准教授、日本ディープラーニング協会 理事長の松尾豊氏

 東京大学 特任准教授で、日本ディープラーニング協会理事長の松尾豊氏は、深層学習をビジネスで活用する際、「深層学習がどのような仕組みなのか理解しないと、深層学習を利用したビジネスを前に進めるのは難しい」と述べ、深層学習の原理を「深い関数を利用した最小二乗法だ」と説明する。

 最小二乗法は、統計学で用いられる「回帰分析」などにおいて、係数を推定する方法だ。「例えばMicrosoft Excelでは、xを気温、yを冷たい飲料の売り上げとしたときの散布図に近似直線(y=ax+b)を引ける。近似直線を引くための位置(係数a,b)を決定付けるアプローチが、最小二乗法だ」

 松尾氏は、「深層学習とは、最小二乗法の巨大なお化けのようなものだ」と紹介し、画像の各画素xから「猫(y=1)」か「猫でないか(y=0)」を出力する猫関数を例として取り上げた。「100x100の画像で猫関数を作成する場合は、1万個もの変数が必要になる。深層学習の場合は、中間的な関数を介して、これを3層、4層と深くする。こうすることで、少ないパラメーターで表現力を高め、効率的に学習できる」

猫関数について説明するスライド猫関数について説明するスライド 猫関数について説明するスライド(左、右)

 この深さが重要な理由については、料理に例えて説明する。「料理の素材が一層だとして、1回しか手を加えない場合は、単純な料理しかできない。しかし、複数の階層で手を加えることができれば、料理にバリエーションが生まれる。深層学習にも同じことがいえる」

深層学習の階層構造を料理に例えた 深層学習の階層構造を料理に例えた

 深層学習の原理を説明した松尾氏は、深層学習をビジネスに活用しようとする際には、「散布図のように、xとyを定義する必要がある」と考察する。

 「最近、『人工知能で政治を』という話を耳にしたが、『xとyが定義できますか』と問いたい。xとyが定義できなければ、データを集めてもプロジェクトはうまくいかない。画像をxとしてyを犬や猫にすれば画像認識、xを英語の文としてyを日本語の文とすれば翻訳、というように、xとyを何にするかを考えるべきだ」

xとyの例について説明したスライド xとyを簡単に定義できるものほど「深層学習で成果を上げやすい」という
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