NVIDIAが開催した「GTC Japan 2018」で、東京大学 特任准教授、日本ディープラーニング協会 理事長の松尾豊氏が登壇。深層学習の原理や、深層学習に関する研究の現状について説明し、今後、実社会で深層学習がどう扱われていくのか、持論を展開した。
NVIDIAは2018年9月13、14日に「GTC Japan 2018」を開催した。本稿では、東京大学の松尾豊氏の講演「人工知能をビジネスに実装するとき、今やるべきこと」の内容を要約してお伝えする。
東京大学 特任准教授で、日本ディープラーニング協会理事長の松尾豊氏は、深層学習をビジネスで活用する際、「深層学習がどのような仕組みなのか理解しないと、深層学習を利用したビジネスを前に進めるのは難しい」と述べ、深層学習の原理を「深い関数を利用した最小二乗法だ」と説明する。
最小二乗法は、統計学で用いられる「回帰分析」などにおいて、係数を推定する方法だ。「例えばMicrosoft Excelでは、xを気温、yを冷たい飲料の売り上げとしたときの散布図に近似直線(y=ax+b)を引ける。近似直線を引くための位置(係数a,b)を決定付けるアプローチが、最小二乗法だ」
松尾氏は、「深層学習とは、最小二乗法の巨大なお化けのようなものだ」と紹介し、画像の各画素xから「猫(y=1)」か「猫でないか(y=0)」を出力する猫関数を例として取り上げた。「100x100の画像で猫関数を作成する場合は、1万個もの変数が必要になる。深層学習の場合は、中間的な関数を介して、これを3層、4層と深くする。こうすることで、少ないパラメーターで表現力を高め、効率的に学習できる」
この深さが重要な理由については、料理に例えて説明する。「料理の素材が一層だとして、1回しか手を加えない場合は、単純な料理しかできない。しかし、複数の階層で手を加えることができれば、料理にバリエーションが生まれる。深層学習にも同じことがいえる」
深層学習の原理を説明した松尾氏は、深層学習をビジネスに活用しようとする際には、「散布図のように、xとyを定義する必要がある」と考察する。
「最近、『人工知能で政治を』という話を耳にしたが、『xとyが定義できますか』と問いたい。xとyが定義できなければ、データを集めてもプロジェクトはうまくいかない。画像をxとしてyを犬や猫にすれば画像認識、xを英語の文としてyを日本語の文とすれば翻訳、というように、xとyを何にするかを考えるべきだ」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.