Gartnerは、2018年の世界IT支出が3.7兆ドルとなり、2019年にはさらに3.2%増えて3.8兆ドルに達するとの見通しを示した。IT市場では、「所有からサービスの利用へ」の流れが広がっていると分析した。
Gartnerは2018年10月17日(米国時間)、2018年の世界IT支出が3.7兆ドルとなり、2019年にはさらに3.2%増えて3.8兆ドルに達するとの見通しを発表した。
Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるジョンデビッド・ラブロック氏は、次のように解説している。「このIT支出予測には、為替レートの変動や、貿易戦争の可能性も織り込んでいる。中でも『所有からサービスの利用へ』の移行が、全てのセグメントで大きな流れとなっている」
「例えば、企業におけるクラウドサービスの利用拡大がその表れだ。物理的なサーバを購入する代わりに、クラウドを利用する企業が増えている。企業がデジタルトランスフォーメーションの取り組みを進める中、『購入代金を支払う』から『利用料金を支払う』への移行が進んでいくだろう。企業はそうすることで、デジタルビジネスの特徴である、持続的かつ急速な変化に機動的に対処できる」(ラブロック氏)
GartnerはIT支出を5つのセグメントに分けて予測している。なかでも、エンタープライズソフトウェアは2017年に続いて2018年と2019年にも、5セグメントの中で支出の伸び率が最も高くなる見通しだ。
SaaS(Software as a Service)がほぼ全てのソフトウェア分野で、支出増加のけん引役となる。特にCRM(Customer Relationship Management)で顕著だ。2019年には、クラウドソフトウェア支出の予想伸び率が22%であるのに対し、他のソフトウェアは6%にとどまる。
ERP(Enterprise Resources Planning)やCRM、サプライチェーンといった基幹アプリケーションが、今後もソフトウェア支出の中で大きな割合を占めるが、現在のところ、セキュリティやプライバシーへの関心も高い。例えばGartnerが世界の3000人以上のCIO(最高情報責任者)を対象に調査し、2018年10月に公表した内容によれば、88%のCIOが今後12カ月以内にサイバーセキュリティソフトウェアやその他のテクノロジーを導入するか、導入する計画を立てている。
2018年のデータセンターシステム支出は6.0%増となる見通しだ。この背景には2017年が10%以上、2018年が5.7%の伸びとなるサーバ市場の好調がある。だが、サーバ市場は2019年には縮小し、その後5年間の年平均成長率は1〜3%程度で推移すると予想した。これに伴い、2019年のデータセンターシステム支出の伸び率は、1.6%に低下する見通しだ。
ITサービスは2019年には4.7%増となり、IT支出全体の伸びに大きく貢献し、絶対額でも1兆ドルを超える見込みだ。だが、世界的に景気が鈍化するという予想があり、それに伴って企業でコスト削減機運が高まり、コンサルティングのような外部のビジネスサービスへの支出が、対象となりそうだ。
デバイス(PC、タブレット、携帯電話)支出は、2019年には2.4%増の7060億ドルとなる見通しだ。企業のPC需要は好調であり、その背景には、2020年まで続くWindows 10 PCへの買い替えの動きがある。
ただし、Intel CPUの不足が足を引っ張る形だ。不足が2019年まで続くと予想し、PC市場はその影響を受けるが、影響は長続きしないだろうという。Gartnerによると、IntelはハイエンドCPUと、ビジネスPC向けCPUに重点を置いていく。
「デスクトップPCやノートPC、タブレットは、新たな平衡状態に達している。これらの市場は、消費者と企業からの安定した需要がある。ベンダー間の技術的な違いはわずかだ。顧客を囲い込み、複数年にわたって継続的に収入を得たり、新しいバンドルサービスを販売したりするために、PCaaS(PC as a Service)を提供する動きもある」(ラブロック氏)
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