Azure Backupサービスとともに機能し、オンプレミスサーバのベアメタル回復用バックアップやアプリケーションのD2D2C(Disk to Disk to Cloud)のバックアップ保護と復元を可能にするMicrosoft Azure Backup Serverの最新バージョン「v3」が利用可能になりました。
「Azure Backup」は、「Azure Recovery Services(Azure復旧サービス)」の一部として、オンプレミスのサーバやクライアント(64bit Windows 7 SP1以降)、アプリケーション、Azure IaaS上の仮想マシンのバックアップ保護と回復を、低コストで拡張可能なクラウドの記憶域を利用して実現するサービスです。
Azure Backupのエージェントを展開したスタンドアロンサーバおよびクライアント環境では、ファイルとフォルダ、システム状態(2017年10月から)のクラウドへのスケジュールバックアップと回復操作を、「Windows Serverバックアップ」とよく似た管理コンソールから実行できます。Azure IaaS上の仮想マシンは、簡単な操作でAzure Backupを使用してオンラインバックアップすることができ、バックアップからAzure IaaS上の仮想マシンとして回復できます。
この他、オンプレミスに「System Center Data Protection Server(DPM)」(LTSCまたはSAC)を展開済みの場合は、DPMエージェントを使用した複数のサーバやクライアント上のベアメタル回復用、あるいはアプリケーションのD2D(Disk to Disk)によるバックアップ保護のバックアップデータを、Azure Backupに転送してD2D2C(Disk to Disk to Cloud)を実現できます。
「Microsoft Azure Backup Server」(以下、Azure Backup Server)は、DPMのライセンスを持っていない場合に、無料で入手してバックアップサーバとしてインストールし、Azure Backupサービスとともに使用できる、DPM互換のバックアップサーバ用ソフトウェア(SQL Serverのソフトウェアを含む)です(画面1、画面2)。
DPMと連携したアプリケーションのバックアップは、2015年10月に一般提供が開始され、同時にDPM 2012 R2ベースのAzure Backup Server v1が提供されました。その後、2017年5月にDPM 2016ベースのAzure Backup Server v2が提供され、Windows Server 2016のサポートやVMware仮想マシンの保護機能(プレビュー)が追加されました。
最新のAzure Backup Server v3(バージョン13.0.415.0、2018年11月13日リリース)は、後述する新機能に加え、LTSC(Long Term Servicing Channel)リリースであるDPM 2016の更新ロールアップ5(UR5)および更新ロールアップ6(UR6)、SAC(Semi-Annual Channel)リリースであるDPM 1801とDPM 1807向けのバグ修正を含みます。バグ修正の内容は、以下のDPM各バージョンのリリースノートとサポート情報で説明されています。
Azure Backup Server v3は最新のDPM 1807をベースに作られており、共通の機能を備えています。最新のDPM 1807は、DPM 1801に対するアップデートとしてのみ提供されますが、Azure Backup Server v3は単体のソフトウェアとして新規導入(またはAzure Backup Server v2からのアップグレード)できるのが特徴です。
Azure Backup Server v3の新機能や改善点については、以下のドキュメントで説明されています。
新機能の中から、特に注目の3点を紹介します。
Azure Backup Server v3では、VMwareプラットフォーム上のVMware仮想マシン(VMware vCenter/vSphereと、VMware ESX/ESXi 5.5/6.0/6.5)のバックアップ保護が運用環境で正式にサポートされます(画面3)。
製品版のDPMでは、DPM 2012 R2 UR11、DPM 2016、DPM 1801以降でVMwareプラットフォーム上のVMware仮想マシンのバックアップ保護が既にサポートされています。Azure Backup Server v2では、Windows Server 2016のバックアップサーバにおいて、VMware仮想マシンのバックアップをプレビュー機能として利用できました。
Azure Backup Server v3用のデータベースでは、SQL Server 2017インスタンスの使用がサポートされます。Azure Backup Server v3には、バックアップサーバ用のデータベースとして使用可能なSQL Server 2017が同梱されています。また、SQL Server 2017は、保護対象のアプリケーションとしてもサポートされます。
Azure Backup Server v3は、バックアップサーバとして最新のWindows Server 2019へのインストール(画面4)、Windows Server 2016上のAzure Backup Server v2/v3のWindows Server 2019へのアップグレードをサポートしています。
バックアップ保護の対象(ベアメタル回復やアプリケーションサーバのサーバOSとしてのWindows Server 2019)としてサポートされるかどうかについては、現状、以下の公開情報には含まれていません(2018年11月13日時点)。そのため、Windows Server 2019のOSとサーバ上のアプリケーション保護に影響する可能性があります。
製品版のDPMでは、2019年第1四半期に予定されているSystem Center 2019のDPM 2019でWindows Server 2019が正式にサポートされる予定です。
Azure Backup Server v3の提供開始により、既に利用中のAzure Backup Server v2のサポートは「2019年5月」に終了する予定です。Azure Backup Server v3は、Azure Backup Server v2からのアップグレードをサポートしているので(Azure Backup Server v1やDPM製品からのアップグレードは非サポート)、それまでにAzure Backup Server v2からアップグレードしてください。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.