「Azure Backup」のオンプレミス向けバックアップサーバの最新版「Microsoft Azure Backup Server v2」がリリースされました。Azure Backup Server v2により、オンプレミスの物理サーバ、オンプレミスやクラウドの仮想マシン、最新のサーバアプリケーションの保護が可能になります。
「Azure復旧サービス(Azure Recovery Service)」の「バックアップ(Azure Backup)」は、オンプレミス/クラウドのデータや仮想マシン、アプリケーションのバックアップ保護をクラウドのストレージを利用して提供するサービスです。
具体的には、オンプレミスのWindows ServerやWindowsクライアント上のファイル/フォルダのバックアップ保護、Microsoft AzureのIaaS上の仮想マシンのバックアップ保護、System Center Data Protection Manager(DPM)2012 R2/2016、または「Microsoft Azure Backup Server」と連携したD2D2C(Disk to Disk to Cloud)のバックアップ保護に対応しています。
Microsoft Azure Backup Serverは、DPMを利用していない場合に、追加コストなしで提供されるDPMベースのバックアップ管理サーバソフトウェアです。これまでのバージョン(v1)はDPM 2012 R2をベースにしたものでしたが、2017年5月末よりDPM 2016をベースにした「Microsoft Azure Backup Server v2」の提供が始まりました(画面1)。
DPM 2012 R2ベースのMicrosoft Azure Backup Server(v1)は、DPM 2012 R2以前の前提コンポーネントである「SISフィルタードライバー(SIS-Limited機能)」がWindows Server 2016から削除されたため、Windows Server 2016にインストールすることができませんでした。
DPM 2016ベースになったMicrosoft Azure Backup Server v2は、Windows Server 2012 R2およびWindows Server 2016へのインストールをサポートしています(画面2)。なお、Microsoft Azure Backup Server v2のインストールにはSQL Server 2014 Service Pack1(SP1)以降(SQL Server 2016 SP1を推奨)のローカルインスタンスが必要ですが、Microsoft Azure Backup Server v2に同梱されているSQL Server 2016 SP1をセットアップ中にインストールして使用することもできます。
Microsoft Azure Backup Server v2は、Windows Server 2016上で新たなバックアップ記憶域「Modern Backup Storage(MBS)」をサポートし、バックアップ用記憶域の節約(30〜40%節約)と高速化(70%高速)を実現します。
従来のバージョン(v1)がサポートする保護対象に加え、Windows Server 2016の「システム状態」の保護やHyper-V仮想マシンのバックアップをサポートし、「VMware vCenter」で管理される「VMware ESXi 5.5/6.0/6.5」ホスト上のVMware仮想マシンのバックアップ保護も可能にします。さらに、以下の最新のサーバアプリケーションのバックアップ保護をサポートします(画面3)。
なお、VMware仮想マシンのバックアップ保護のサポートは、DPM 2012 R2のアップデートロールアップ(UR)11で追加されています。DPM 2016では、UR2でSQL Server 2016およびSharePoint Server 2016のサポートが追加されました。
現在、2017年3月に提供されたDPM 2016 UR2が最新であり、DPM 2016におけるVMware仮想マシンおよびExchange Server 2016のバックアップ保護は将来のURで追加される予定です(DPM 2016向けのUR3は2017年6月1日現在、提供されていません)。
また、Microsoft Azure Backup Server v2をWindows Server 2016にインストールした場合、VMware仮想マシンのバックアップ保護のサポートは「テスト目的のプレビュー提供」という扱いであることに注意してください。
現在、DPMやMicrosoft Azure Backup Serverが不要な「Azure Backupエージェント(Azure Recovery Services Agent)」によるWindows Serverのバックアップ機能は、ファイル/フォルダのバックアップと復元に限定されています。
システム状態を含むベアメタル回復用のバックアップやActive Directoryデータベースのバックアップには、DPMやMicrosoft Azure Backup Serverが必要になり、DPMやMicrosoft Azure Backup ServerでバックアップされたデータをAzure Backupに転送することで実現されています。
Azure Backupエージェントの最新バージョンでは、Windows Serverの「システム状態(System State)」をAzure Backupに直接バックアップする機能がプレビューとして追加されました(画面4)。
システム状態のバックアップが可能になったことで、ベアメタル回復用のバックアップ、Active Directoryデータベースのバックアップ、ファイルサーバとIIS Webサーバのバックアップも可能になります。
なお、このプレビュー機能を利用するには、Azure Backupエージェントの最新バージョン(2.0.9077.0以降)のインストール(または更新)だけでなく、レジストリの編集よるプレビュー機能の有効化が必要になります。具体的な手順は、上記のブログ記事内の動画で説明されています。
Azure復旧サービスのもう1つの機能「Azure Site Recovery」では、Azure仮想マシンをリージョン間でレプリケーションし、フェイルオーバーを可能にする機能のプレビュー提供が開始されました(画面5)。
こちらもまだ正式版ではありませんが、注目の新機能です。Azure Site Recoveryはこれまでオンプレミスのサイト間、またはオンプレミスとAzure間の仮想マシンのレプリケーションを提供してきましたが、これで異なるAzureのリージョン間で災害復旧対策が簡単に実装できるようになります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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