これまでプレビュー提供だった「Azure Backupエージェント」による個別サーバの「システム状態」のクラウドへのバックアップが、正式にサポートされました。これにより、オンプレミスのActive Directoryドメインコントローラー、ファイルサーバ、IISサーバのデータとシステム構成を、追加のバックアップサーバやバックアップ装置なしで、クラウドだけで保護できるようになります。
「Azure復旧サービス(Azure Recovery Service)」の「バックアップ(Azure Backup)」は、Azureのストレージ(Recovery Servicesコンテナー)をバックアップ先として利用する、さまざまなバックアップおよび復元シナリオに対応したサービスです。
具体的には、オンプレミスのファイルとフォルダ、アプリケーション(Exchange、SharePoint、SQL Server)、仮想マシン(Hyper-V、VMware)のバックアップと復元、およびRecovery ServicesコンテナーによるAzure仮想マシンのバックアップと復元が可能です。
オンプレミスのサーバの保護は、「Azure Backupエージェント(Azure Recovery Services Agent)」による単体サーバ(Windowsクライアントにも対応)のバックアップと、System Center Data Protection Manager(SCDPM)またはSCDPMベースの「Azure Backup Server」(無償提供)のバックアップサーバを使用する方法があります。
Azure Backupエージェントはファイルとフォルダのバックアップに対応し、Azure Backup Serverはアプリケーションや「システム状態」のバックアップ、およびベアメタル回復用のバックアップ(フルバックアップ)に対応します。いずれも、詳細なスケジュールを構成して、自動バックアップすることが可能です。
Azure Backupエージェントによる単体サーバのバックアップは、ファイルとフォルダの保護が対象であり、2017年中ごろから「システム状態」のバックアップがプレビュー機能として提供されました。今回、この「システム状態」のバックアップが正式なサービス(General Availability:GA)としてサポートされるようになりました(画面1、画面2)。
新しいバックアップシナリオは、Azure Backupエージェントを最新バージョンにアップグレードすることで利用可能になります(本稿執筆時点ではAzure Recovery Services Agentバージョン2.0.9088.0が最新)。
Azure Backupエージェントによる単体サーバのバックアップでは、Windows Server標準の「Windows Serverバックアップ」スナップインと一貫性のある管理コンソールを使用して、バックアップ対象を選択します。詳細なスケジュール設定も可能です。また、同じコンソールを使用して、クラウド上に保管されているバックアップから、個別のファイルやフォルダ、システム状態を復元することができます。
今回からバックアップ対象として正式にサポートされるようになった「システム状態」は、Active Directoryのディレクトリデータベース、クラスタ化されたファイルサーバの重要なクラスタ構成、インターネットインフォメーションサービス(IIS)のメタベースなどを含むもので、Active Directoryドメインコントローラー、ファイルサーバ、およびIISサーバの保護を想定したものです。
バックアップ対象として「システム状態」に加えて、全てのボリュームを対象とすることもできますが、そのようにして作成したバックアップは、ベアメタル回復のためのフルバックアップとしては利用できない(つまり、ベアメタル回復の方法が存在しない)ことに注意してください。ベアメタル回復は、引き続きSCDPMまたはAzure Backup Serverのバックアップサーバを展開した環境でサポートされます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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